第3章『防御プロトコル』(続き5)
「セイラ様、この印文の意味を!」
セイラは水晶に手を当てたまま、古の言葉を詠唱し始める。
その声は、まるで時を超えて響いてくるかのようだった。
一つ一つの音が、空間そのものを振動させている。
その声に合わせて、古代文字が輝きを増していく。
「エリカ、君は二つの力を...!」
「はい!」
エリカは両手を広げ、現代のコードと古代の印文の間に立つ。
彼女の周りで、青と銀の光が渦を巻く。
その光は、彼女の存在を通じて、二つの異なる力を結びつけようとしているかのようだった。
```
interface AncientModernBridge {
translate(ancientSigil: Rune): ModernCode;
harmonize(pattern: DefensePattern): UnifiedBarrier;
validateTranslation(result: ModernCode): boolean;
measureHarmony(barrier: UnifiedBarrier): number;
adjustResonance(frequency: number): void;
}
class BridgeImplementation implements AncientModernBridge {
private readonly resonanceChamber: Chamber;
private readonly translationMatrix: Matrix;
constructor() {
this.resonanceChamber = new Chamber();
this.translationMatrix = Matrix.createIdentity();
}
// 実装の詳細
}
```
突然、エリカの体が宙に浮かび上がる。
彼女は光に包まれながら、ゆっくりと目を開いた。
その瞳には、世界の理が直接映し出されているかのようだった。
無数のコードラインと古代文字が、万華鏡のように彼女の目の中で交錯している。
「見えます...世界を守るための...真実が」
その声には、人知を超えた何かへの理解が込められていた。
エリカの意識は、二つの世界の狭間で、新たな理解を紡ぎ出そうとしていた。
その時、水晶の割れ目から染み出した黒い霧が、一気に形を成して立ち上がった。
それは人の形を模しているようでいて、どこか決定的に異なる何かだった。
その姿は、光を吸収するかのように闇を纏っている。
「《完全性》に縛られし愚かな者どもよ」
その声は、まるでシステムエラーのノイズのように耳障りだった。
それは物理的な音というよりも、精神に直接響く振動のようだった。
「なぜ虚無を拒むのだ?規則に従う必要などない。
存在の重みから解放されよ。全ては無に帰すべきなのだ」
その言葉には、世界の理そのものを否定する力が込められていた。
慶一は思わず後退りそうになる足を踏みとどめた。
この存在は、プログラムのバグやエラーとは次元の異なる脅威だった。
それは、存在そのものを否定する虚無そのものだった。
「でも、それは違います」
エリカの声が、透明な鐘のように響く。
その声には、揺るぎない確信が込められていた。
「規則があるから、私たちは在り得るんです。秩序があるから、世界は美しいんです。そして...」
彼女は一瞬慶一とセイラを見やり、優しく微笑んだ。
「私たちが共に在るから、この世界には意味があるんです」
彼女の言葉に呼応するように、水晶が虹色の光を放ち始めた。
その光は、まるで世界そのものの意志を表現するかのように、力強く脈打っている。
「慶一様、今です!」