第3章『防御プロトコル』(続き3)
天井を突き抜けるような轟音と共に、水晶の間全体が真っ暗に包まれた。
唯一の光源である中央の水晶さえ、その輝きを失っていく。
闇の中で、温度が急激に低下していくのを感じる。
暗闇の中で、慶一は確かに聞いた。
誰かの、あるいは何かの、笑い声を。
それは虚無の深みから響いてくる、この世界ならざるものの声だった。
その音は、物理的な振動というよりも、魂を直接震わせるような性質を持っていた。
防御プロトコルの実装は、想像以上に困難な戦いになりそうだった。
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「全員、水晶に触れてください!」
暗闇の中でセイラの声が響く。
その声には、長年の経験に裏打ちされた確かな命令の力が宿っていた。
慶一とエリカは、消えかけている水晶に手を伸ばした。
触れた瞬間、微かな光が三人の手のひらから広がり始める。
その光は、まるで生命の鼓動のように、ゆっくりと、しかし力強く脈打っていた。
「これは...」
慶一の目の前で、光の糸が新たな密度で織り成されていく。
それは三人の意識が水晶を介して共鳴している証だった。
彼らの思考、感情、そして目的が、一つの流れとなって融合していく。
「神託の力を、共有できているんです」
エリカの声が興奮に震えている。
確かに彼女の言う通りだった。
今や光の糸は、三人それぞれ異なる色で輝きながら、しかし完全に調和して動いている。
セイラの銀色は古の知識の重みを、エリカの緑色は生命力の躍動を、
そして慶一の青色は論理の明晰さを表現するかのようだった。
三色の光が、闇を押し返すように明滅していた。
「では、防御プロトコルを—」
慶一は意識を集中する。
彼の脳裏に、システムの構造が組み上がっていく。
それは単なるコンピュータプログラムではない。
この世界の理そのものを操作するインターフェースだった。
```
class CrystalCore {
constructor(primaryUser, supporters) {
this.mainChannel = primaryUser;
this.supportChannels = new Set(supporters);
this.synchronizationRate = 0;
this.harmonics = new Map();
this.emergencyBuffer = [];
}
async synchronize() {
for (const supporter of this.supportChannels) {
await this.establishLink(supporter);
this.synchronizationRate += 33.3;
await this.calibrateHarmonics(supporter);
}
return this.synchronizationRate >= 99;
}
protected async establishLink(supporter) {
const channel = await this.createEtherealChannel(supporter);
const stability = await channel.measureStability();
if (stability < 0.8) {
await this.reinforceChannel(channel);
}
return channel.initiate();
}
private async calibrateHarmonics(supporter) {
const frequency = await this.measureResonance(supporter);
this.harmonics.set(supporter, frequency);
await this.adjustPhase(frequency);
}
}
```
コードが光となって空中に描かれる。
それは単なる文字の羅列ではなく、この世界の理そのものを表現していた。
プログラミング言語の文法が、世界の法則と完全に一致するように見える。
水晶の輝きが徐々に強まっていく。




