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第3章『防御プロトコル』(続き1)

 慶一は思わず息を呑んだ。


 世界規模のシステムの再構築。


 それは彼が前世で経験したどんなプロジェクトよりも途方もない規模に思えた。

 企業のシステム更改ですら数年がかりの大事業なのに、世界そのものを守るシステムとなれば...。


「私に、できるでしょうか」


 不安が声に滲む。


 しかし、それは臆病さからではない。


 責任の重さを真摯に受け止めようとする者の、自然な反応だった。


「あなたなら可能です。なぜなら—」


 セイラの言葉は、突然の地響きによって中断された。

 観測所の床が大きく揺れる。

 天井から石の粉が降り注ぎ、棚に並べられた観測機器が不気味な音を立てて揺れた。

 慶一は急いで手すりを掴んで体勢を保った。


「セイラ様!」


 階段を駆け上がってきたのは、エリカだった。

 普段は整然としている黒髪が乱れ、息を切らしている。

 その表情には、明らかな動揺が浮かんでいた。


「水晶の間で、異変が...!」


 三人は急いで水晶の間へと向かった。

 螺旋階段を駆け下りながら、エリカが状況を説明する。


「突然、水晶が不規則な光を放ち始めたんです。

 そして、周囲の空気が...歪んでいるように見えます」


 古の神殿を守る大扉の前で、彼らは足を止めた。

 扉の隙間から、普段には見られない異様な光が漏れている。

 セイラが詠唱を唱え、扉が重々しい音を立てて開く。


 その光景に、慶一は言葉を失った。


 部屋の中央にある巨大な水晶が、まるで心臓が鼓動するように不規則な光を放っていた。

 その周りを、無数の光の糸が乱れて踊っている。

 通常なら整然と配置されているはずの光の糸が、まるで暴風に揺れる草のように激しく揺れていた。


 慶一は、その光景に見覚えがあった。


「これは...システムクラッシュの前兆」

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