201 雪解け水と川のせせらぎ
朝日が窓辺を暖かく照らし出す中、僕はゆっくりと目を覚ました。室内はまだ冬の冷たさを少し引きずっているが、そこには確かに春の兆しが見え隠れしていた。布団から出てストーブを少し強め、朝の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。シャズナはすでに僕の足元に来ていて、しっぽを軽やかに揺らして「おはよう」とでも言うかのように見上げてくる。
朝食の準備をしながら、シャズナが僕の動きをじっと見つめていた。彼の耳が時折ピクピクと動き、台所で立てる音を楽しんでいるようだった。目を細めて少し満足げな顔をしている姿に、僕も自然と笑みがこぼれた。朝食を一緒に終え、満足したシャズナが食後の身づくろいを始めるのを見届けた後、僕は農作物の手入れと収穫の準備をするためにキッチンから離れた。
農場へ向かう準備が整うと、シャズナもすぐにその気配を察して立ち上がり、僕の後をついてきた。冬の厳しい寒さも少しずつ和らぎ、空気にはわずかながら春の匂いが混じり始めていた。シャズナは何かを感じ取っているようで、窓から差し込む光に照らされながら、毛をふわりと揺らしていた。
外に出ると、冷たく澄んだ空気が肺にしみわたるようだった。雪の残る道を歩きながら、シャズナが足元をトコトコとついてくる。途中、僕たちは川沿いの道を歩くことにした。冬の間は凍てついたまま静まりかえっていた川が、少しずつ動き始めている。せせらぎの音が辺りに広がり、その水音が雪解け水によって流れ始めた証拠であることを僕は感じた。
「春が近づいてきたんだな」と、声に出して思わずつぶやくと、シャズナが耳をピクピクと動かしてその音を楽しむかのように反応した。川岸で立ち止まり、そのせせらぎをじっと見つめるシャズナの姿がとても愛らしかった。彼のしっぽは緩やかに揺れ、瞳は水面に輝く光を映してキラキラと輝いている。
シャズナはまるで自然の変化を全身で受け取っているようだった。冬の終わりを感じさせる雪解け水の音、それを聞き取っている彼の姿を見ていると、この一瞬一瞬が愛おしく思えた。僕はその場に立ち尽くし、しばらく川のせせらぎとシャズナの姿を楽しんだ。
農場まではまだ少し道のりがあるが、こうして自然の音と共に歩くこの時間は何ものにも代えがたい。シャズナと共に歩くその道は、季節の移り変わりを静かに告げていた。僕は彼に声をかけるでもなく、その耳をピクピク動かしながら川の音を楽しむシャズナの姿を心に刻み込みながら、再び歩き出した。
