200 シャズナと舌鼓
家に戻り、外の冷たい空気とは打って変わって、暖かな家の中に足を踏み入れたとき、僕は自然とほっとした表情を浮かべた。シャズナもそんな僕の足元をすり抜けるようにして室内に入り、しっぽをふりふりと揺らしている。その姿を見ているだけで、心が安らぐ。
「さて、夕食の支度を始めようか」と独り言のようにつぶやき、エプロンをつけてキッチンへと向かう。シャズナは僕の動きを見て、その意味を理解したのか、すっと近くの椅子に飛び乗り、静かに座り始めた。その表情は、夕食の支度が進む様子を一心に見守っているようで、耳をピクピクとさせながら、興味深げに僕の動きを追っていた。
キッチンに広がる野菜や肉の香りが漂い始めると、シャズナは鼻をクンクンと動かし、時折「にゃー」と小さく鳴いて、まるで「早く食べたい」と催促しているかのようだった。その愛らしい姿を見て、僕は思わず微笑んでしまう。鍋やフライパンが奏でるリズムに合わせて、シャズナのしっぽはゆるやかに揺れていた。
ふと目にしたジュースピュアの果実は、新鮮な香りを放ち、色鮮やかで眩しいほどだ。夕食の準備に合わせて、この果実を使ったドリンクも作ることに決めた。果肉を丁寧に絞り、果汁が滴り落ちるたび、シャズナは興味津々にその音を聞き取っている。やがて、その特有の甘酸っぱい香りが漂うと、シャズナは耳をピクッと立て、目を輝かせて「にゃー」と鳴いた。まるで、これから訪れる美味しい瞬間を楽しみにしているかのようだ。
「待っててね、シャズナ。もうすぐできるから」と声をかけると、シャズナは応えるようにまた「にゃー」と鳴き、小さく舌鼓を打ってみせた。あまりにも自然なその動作に、僕は思わず声を立てて笑ってしまう。こうして僕とシャズナの間に交わされる無言のやりとりは、いつも心を温かくしてくれる。
夕食がようやく出来上がり、テーブルに料理を並べると、シャズナは耳をさらにピクピクとさせ、しっぽをゆったりと揺らしながら僕を見つめた。ジュースピュアのドリンクをグラスに注いでテーブルに置くと、シャズナは興奮したように一歩前へ進み、じっとそれを見つめた。
「はい、お待たせ。乾杯だね」と言って、シャズナの前にも小さな一杯を置いてあげると、彼は舌鼓を打ちながら、「にゃー」と言って感謝の気持ちを示してくれた。僕もグラスを持ち上げ、静かな夜に心からの感謝と喜びを込めて乾杯の仕草をする。こうしてシャズナとの食事の時間は、日々の中でかけがえのないひとときとして刻まれていくのだった。




