194 新年の祝宴とシャズナの喜び
神殿から帰宅し、冷たい風にさらされた身体を温めるため、焚き火を起こして家を暖めた。日が暮れる頃、外は静寂に包まれ、冬の澄んだ空気が辺りに広がる。その中で、僕は新年の祝いの準備を始めた。シャズナにとって初めての新年の祝いだ。彼がこの特別な日をどんな風に感じるのかと思うと、自然と胸が高鳴る。
今年の新年の祝いは魚料理を中心に行うことに決めていた。なぜなら、シャズナは魚が大好きだからだ。彼の喜ぶ顔を見るために、鱈と鰤を用意し、鰊の卵も忘れずに並べることにした。魚は市場で新鮮なものを仕入れてきていたので、鮮度は申し分ない。鱈は白身の上品な味わいがあり、冬の寒さを和らげる温かな料理にぴったりだった。鰤は脂がのっていて、贅沢な風味を楽しむことができる。そして鰊の卵は、プチプチとした食感が食卓に彩りを添える。
調理を始めると、キッチンから香ばしい香りが立ち込めてきた。シャズナはその匂いに誘われて、そっと僕の横にやってきた。瞳をキラキラさせ、耳をぴんと立てている。僕は「もう少し待っててね」と優しく声をかけたが、その姿はまるで子供のようで愛らしかった。
鱈はあっさりとした塩味で焼き上げ、鰤は甘辛いタレを絡めて煮付けにする。そして鰊の卵はそのまま添え物として出すことにした。料理が完成し、食卓に並べると、シャズナは興奮を抑えきれず、しっぽをふりふりしながら待ち構えていた。彼にとって、この祝いの席がどれほど特別なものかを考えると、僕も自然と微笑みがこぼれる。
「さあ、シャズナ、今年の新年の祝いだよ。」僕が声をかけると、シャズナは「にゃー」と返事をし、前足をちょんと伸ばしてお皿を覗き込んだ。彼の瞳には期待と喜びが混ざり合い、その光景がまるで家族の一員として共に祝っているようだった。
料理を食べ進めるうちに、シャズナは一口ごとに「にゃー」と満足そうな声を上げ、僕の心はじんわりと温かくなる。特に鰤の煮付けは気に入ったようで、何度もお皿を舐めるようにして味わっていた。僕はその姿に、「今年も君と一緒に過ごせることが、本当に幸せだ」と思わず心の中でつぶやいた。
夕食を終えた後、静かな夜が訪れ、窓の外には凍てつく冬の星空が広がっていた。シャズナは満足したように膝の上に丸くなり、軽く目を閉じた。僕はその温もりを感じながら、新しい年もこの穏やかな日々が続くことを願った。
新年の祝いはこうして終わったが、心には温かな余韻が残り、また新しい一年を迎える勇気が湧いてくる。僕とシャズナ、ふたりの絆は、この特別な日にさらに深まったように感じられた。




