191 新年を迎える夜のぬくもり
冷たい冬の風が窓をかすかに叩く夜、もうすぐ新年が訪れるという期待と寂しさが混じり合った空気が漂っていた。家の中は、薪ストーブの音とシャズナの小さな鳴き声だけが響いている。日が暮れるとさらに冷え込み、心も身体も温かさを求めていた。
「シャズナ、もうすぐ年忘れだよ。」僕は窓際に佇む彼に声をかけた。シャズナは僕の方を振り向き、その大きな瞳を輝かせて「にゃー」と答えた。彼の尻尾がゆっくりと揺れているのを見ると、心がほんのりと温かくなる。彼もまた、年の終わりを肌で感じているのかもしれない。
僕は布団を広げ、ふとある考えが浮かんだ。「今日は一緒に寝ようか、シャズナ。」そう言って布団を軽く叩くと、彼は一瞬驚いたように耳をぴんと立て、それから嬉しそうに近寄ってきた。その姿に自然と笑みがこぼれる。彼は布団の端に鼻をくんくんと寄せ、警戒心を解くと「にゃー」ともう一度鳴いて布団の中へ滑り込んだ。
シャズナの柔らかな毛並みが僕の腕に触れる。冬の寒さが嘘のように消え、部屋にはほのかな温もりが満ちていく。僕はその瞬間、日常の喧騒も、年が過ぎる寂しさも、全て忘れたくなる心地よさに包まれた。シャズナも寄り添うように身体を丸め、眠る準備を整えている。彼が呼吸するたびに、ふんわりと温かい空気が布団の中に広がり、優しい時間が流れていく。
「おやすみ、シャズナ。」小さく囁くと、彼は瞳を閉じて耳を少しだけ動かした。彼の静かな「にゃー」が返事のように響く。布団の中で感じるその温もりは、まるでこの一年を締めくくるかのような特別なものだった。
僕たちはこうして、新しい年を迎える前夜を共に過ごしていた。




