190 冬の魔法と心温まるひととき
本格的な冬の到来を感じる朝、僕はシャズナと共に農場へ向かっていた。空気は冷たく頬を刺し、吐く息が白く舞い上がる。木々は葉を落とし、冬の景色が広がっていたが、地面の畑にはまだ晩秋の名残が残っていた。僕たちは丁寧に農作物を収穫し、それらを大切に籠に積んで市場へと運び出した。
市場は冬の準備に活気づいていた。寒風が吹きつける中でも、行商人たちは元気に声を張り上げ、色とりどりの野菜や果物、手作りの冬用の品々を並べていた。僕は収穫した野菜を納品し終えると、行商人の一人が笑顔で声をかけてきた。
「おお、今日は良い収穫だったね。ところで、冬用の苗と種も仕入れておくといい。冬の終わりには植え始めると来年の春が楽しみだよ。」
彼の勧めで僕は冬野菜の苗と種を買い付けた。苗の袋から漂う土と新鮮な香りが心地よく、冬の厳しい寒さを超えて芽吹く新たな命の力強さを感じた。その後、魚貝類のコーナーで新鮮な鱈や牡蠣を見つけ、ついでに牛肉と豚肉も購入することにした。行商人たちが忙しげに作業している中、シャズナは興味津々に辺りを見渡し、時折「にゃー」と短く鳴いては尻尾を軽く揺らしていた。
買い物を終えた僕たちは、夕方には自宅に戻った。日が沈むと気温がさらに下がり、窓の外は凍てつく冬の風が音を立てていた。しかし家の中は薪ストーブのおかげでほのかに暖かく、ほっとした気持ちで体を緩めた。
「さあ、今日は鍋にしようか」と僕は声をかけた。新鮮な野菜を丁寧に切り、鱈や牡蠣を加えて、温かな鍋料理を準備する。鍋からはだんだんと湯気が立ち上がり、香ばしい出汁の香りが部屋中に広がった。シャズナは匂いに誘われてキッチンのそばで座り、耳をぴんと立てて尻尾を振っている。瞳が輝き、期待に満ちたその姿に、僕の顔は自然と笑みがこぼれた。
「もう少しでできるよ、待っててね」と声をかけると、シャズナは「にゃー」と応える。僕はその声に心が温かくなるのを感じながら、鍋の準備を続けた。
鍋料理が完成すると、テーブルに並べてシャズナと一緒にいただくことにした。白い湯気の中、シャズナが初めて牡蠣を口に運び、小さな舌で味わう姿は愛らしく、僕も思わずほっこりとした気持ちになった。牛肉や野菜も彼の好みに合っていたようで、食べるたびに「にゃー」と鳴いて感謝を示してくる。その声が何とも言えず心地よく、冬の寒さを忘れさせてくれた。
部屋の中で鍋料理を囲む僕たちは、冬の冷たさをよそに温かいひとときを過ごしていた。外の寒風はまるで別世界のようで、シャズナと共にいるこの時間が特別な冬の魔法のように感じられた。




