188 冬とコート
冬が一層深まるにつれて、寒さが日々増してきた。朝の冷気はひんやりと肌を刺し、夜には空気が冷たく引き締まって、ひとたび外に出ればその冷たさを肌で感じることができた。シャズナもその冷え込みを感じ取ってか、最近は暖かい場所を求めてお昼寝の時間が増えたように思う。
そんなある日、町の市場で行商人を見かけた。彼はどこかいつもよりも冬らしい装いをしていて、温かな衣類をたくさん取り揃えていた。冬用の厚手のコートや、暖かそうなブランケット、そして温かい靴下など、まさにこれからの寒さにぴったりな品々が並んでいた。
「寒くなってきたから、これらを買うといいよ」と行商人が声をかけてきた。
自分用に、しっかりとした厚手のコートを一着購入することに決めた。暗い赤色のコートは、冬の空気にぴったりな温かみを持っていて、着てみるとぴったりと体に馴染み、寒さから守ってくれる心地よい感覚が広がった。
その後、シャズナに目を向けると、しっぽをふりふりしながらコートをじっと見つめていた。その目は少しばかり切なそうで、まるで「僕にもあの温かいコートをくれ」と言っているように見える。
「シャズナも寒いだろうから、君にもコートを買ってあげるよ」と優しく言うと、シャズナはぱっと耳を立てて、しっぽをぴんと立てた。その顔には期待の色が浮かび、何か嬉しそうな気配が漂っていた。
行商人は少し考えた後、「猫用のコートもあるよ」と言って、棚の中から小さなコートを取り出してくれた。それは柔らかい毛並みのような生地で、シャズナにぴったりのサイズだろう。色は深いグリーンで、真冬の雪の中でも映えるような美しい色合いだった。
「これが君にぴったりだと思うよ」と言って、シャズナにそのコートを見せると、シャズナの目がキラキラと輝き、しっぽをふりふりしながら嬉しそうに近づいてきた。
「にゃー」と小さな声で感謝の意を示し、シャズナは素直に喜びを表現していた。耳がぴんと立ち、体が小さく震えるような、純粋な嬉しさがその姿に現れていた。それがとても愛おしくて、思わず微笑んでしまう。
「君にぴったりだね、シャズナ」と言いながら、コートをシャズナに着せてあげる。彼はすんなりとコートを受け入れて、すぐにその温かさに満足した様子だった。コートを着たシャズナは、どこか誇らしげな表情を浮かべ、もうすっかりその新しい装いを気に入った様子だ。
「ありがとう、にゃー」ともう一度、感謝の気持ちを込めて鳴いたシャズナ。彼はそのまま自分の新しいコートに包まれ、温かな気持ちを感じながら、ぴょんぴょんと跳ねるように歩き回った。その様子を見ていると、まるで冬の寒ささえも気にしないほど嬉しそうだった。
行商人もその光景を見て、「君たち、いいコンビだね」と微笑んだ。その言葉を聞いて、私は改めてシャズナとの絆を感じ、心が温かくなった。冬の冷たい空気の中で、シャズナと過ごす時間はいつも心を温めてくれる。
その日、シャズナは新しいコートを大切そうに着て、すっかりその温かさに包まれながら歩いていた。しっぽをふりふりし、耳をぴんと立てるその姿は、まるで冬の冷気さえも乗り越える勇気を与えてくれるように見えた。




