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のほほん異世界暮らし  作者: みなと劉


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187/409

187 冬の始まりを告げる者

風がますます冷たくなり、日が短くなるにつれ、冬の訪れを感じる季節がやってきた。空気が乾燥し、朝の霜が大地を覆い、葉が散る音が静けさを際立たせている。シャズナもその変化に敏感で、ここ最近、いつもよりしっぽをふりふりしながら、時折耳をぴんと立てることが増えていた。まるで冬が近づいていることを肌で感じているかのようだった。


ある日、市場で行商人と会った際、彼から冬の始まりを告げる者について聞いた。行商人は「冬の到来は、精霊たちの移り変わりと深い関わりがあるんだ」と言った。


「冬が訪れるとき、ある精霊がその場所を離れ、別の精霊がその地に舞い降りる。冬の精霊は静けさと冷たさをもたらし、自然に深い眠りを与えるんだよ」と行商人は続けた。


その話を聞いて、シャズナは少し考え込んだように見えた。精霊の移り変わりに興味を持ったのか、耳を立て、しっぽをピンと伸ばして、じっと行商人の話を聞いていた。その話がなんだか不思議で、でもどこか心に残るような感覚だった。


その日の帰り道、シャズナと一緒に温泉へ行くことに決めた。冬の冷え込みが本格化する前に、温泉で温まるのは体にも心にも良いだろうと思ったのだ。


温泉に到着すると、シャズナは初めての温泉に少し戸惑った様子だった。湯気が立ち上り、温かい水が肌を包み込む感触に、少しだけ興味津々の目を向ける。お湯に手を伸ばすと、少しだけ熱いけれど心地よいぬくもりが広がり、シャズナはその温かさにうっとりとした表情を浮かべた。


「シャズナ、これが温泉だよ。温まってね」と言うと、シャズナは「にゃー」と返事をし、少し照れくさそうにお湯に足をつけた。ゆっくりとそのぬくもりに慣れていく様子を見ていると、こちらも穏やかな気持ちになる。


シャズナはすぐに、温泉の温かさに安心したのか、お湯の中で身を休めるようにして、のんびりとくつろぎ始めた。その姿がまるで、冬の訪れとともに体を温めるために自然に準備を整えているようにも見え、またその姿が可愛らしくて心が温かくなった。


「これからもっと寒くなるけど、こうやって温まる場所があるから大丈夫だね」と心の中でつぶやいた。温泉の湯気の中、シャズナが穏やかに目を閉じているのを見ていると、冬の寒さが少しだけ優しく感じられるような気がした。


その夜、星がきれいに輝き、冬の静けさが一層深まる中で、シャズナと一緒に過ごした温泉のひとときが、まるで精霊の移り変わりとともに訪れた心温まる瞬間のように感じられた。



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