186 農作業と秋風が冷たくなった
秋も深まり、朝晩の冷え込みが日に日に厳しくなってきた。今日はシャズナと一緒に農場へ向かい、秋の実りを収穫する日だ。玄関を開けた瞬間、冷たい風が顔を撫で、思わず肩をすくめた。風には晩秋特有の乾いた匂いが混じり、遠くの山々がくっきりと見える。シャズナもその冷たい空気を感じ取ったのか、耳をぴんと立てて、しっぽを軽くふりふりと動かしながらこちらを見上げていた。
「行こうか、シャズナ」と声をかけると、彼は「にゃー」と返事をし、足元をすり抜けるようにして農場へと先に駆け出した。その軽やかな姿に微笑みを浮かべつつ、後を追った。
農場に着くと、色づいた作物たちが風に揺れていた。早速作業を始めると、冷たい風の感触はすぐに薄れ、体が温まってくる。手を動かし、収穫する野菜を一つ一つ籠に入れていく。耳を澄ませば、風が木々を揺らし、乾いた葉が擦れる音が心地よく響く中で、シャズナは何かに夢中になっていた。
シャズナは、農場の一角で揺れる草や落ち葉の動きに反応し、興味津々の様子で耳を立てたり寝かせたりしていた。しっぽをふりふりと左右に揺らしながら、小さな体で身を乗り出し、動くものを観察している姿はたまらなく愛らしい。時折、風がひゅうっと音を立てると、シャズナはその音にも反応し、耳をピクピクと動かしては「にゃー」と一声鳴いて、まるでこちらに「これ、面白いよ」と伝えているかのようだった。
そんな姿を見ていると、思わず心が温かくなる。農作業の手を少し止めて、シャズナの愛らしい様子を見守る時間が、なんとも幸せだった。風が冷たくても、シャズナの存在がその冷たさを和らげてくれるような気がして、再び手を動かし始める。
「収穫が終わったら、あったかいスープを作ろうな」と心の中でシャズナに語りかけた。彼はまるでその言葉を察したかのように、こちらに振り返り、しっぽをゆっくりと揺らしながら微笑んだように見えた。その姿は、秋の冷たい風の中で、変わらぬ絆と温もりを感じさせてくれるものだった。




