184 秋の静けさ
秋の終わりが近づくにつれ、空気は日に日に冷たくなり、その変化を肌で感じる季節になっていた。シャズナもまた、その変化を敏感に察しているようだった。朝の柔らかい光が家の中を照らすと、シャズナは窓辺に座り込み、秋の静けさに包まれた景色をじっと見つめていた。しっぽをゆっくりと振り、耳を器用に動かしながら、まるで自然と会話しているかのような姿がとても印象的だった。
窓の外には、赤や黄に染まった木々が静かに風に揺れている。葉がはらはらと舞い落ちるたびに、シャズナの瞳が輝きを増し、その視線を追いかけていた。その瞬間、こちらの胸に不思議な感覚が広がった。シャズナとの日々は、ただの家族の関係を超えて、深い友情で結ばれているように思えるのだ。
「今日はもう、冬の足音が聞こえるね」と、つい呟いてしまう。シャズナはその声に反応し、こちらを見上げて「にゃー」と短く返事をした。彼のしっぽがふわりと揺れ、耳がピンと立っている。まるで「本当だね、冬が近づいているよ」と言っているようだった。その仕草ひとつひとつが、シャズナの心の豊かさを映し出しているようで、こちらの心も温かくなる。
外からは時折、風の音に混じって鳥の鳴き声が響き渡る。その音に耳を動かし、少し緊張したような表情を見せるシャズナの姿に、微笑みがこぼれた。彼がこうして自然の中で感じるものを分かち合い、こちらもその静けさに包まれていく。その時間は特別で、日々の忙しさや季節の移ろいに追われる日常からの小さな逃避だった。
「こうして静かな秋を一緒に感じられるなんて、幸せだね」と言うと、シャズナはまた「にゃー」と優しく鳴き、そのままそっと頭をこちらに擦り寄せてきた。耳は少しだけ寝かせ、穏やかさを表している。触れ合ったその瞬間、体の中にぬくもりが広がり、言葉にしなくても伝わる何かがあることを実感した。
その小さな瞬間こそが、日々の中で最も大切なものだと気づかされる。シャズナと過ごす秋の終わり、その静けさに包まれた日々は、これから迎える冬の冷たさを和らげてくれるに違いない。




