182 栗拾いとシャズナ
秋の日差しが木々の間から柔らかく差し込み、森の中は色づき始めた葉の香りと共に、穏やかな秋の空気に包まれていた。今日はシャズナと一緒に栗拾いに出かけることにした。農場の近くにある栗の木の並ぶ小道は、秋になると毎年たくさんの栗を実らせることで有名だった。
シャズナは初めて見る栗の木に興味津々で、しっぽをふりふりしながら木の周りをくんくんと匂いをかぎ回っていた。小さな耳を立てて辺りを見渡すその姿は、まるで何か新しい発見を期待しているかのようだった。
「ほら、シャズナ。これが栗の実だよ」と、落ち葉の間から見つけたイガイガの栗を見せると、シャズナの瞳がキラキラと輝いた。しかし、栗の実は刺に覆われた丸い外皮に守られていて、簡単には手に入れられない。
「中に栗の実があるんだ。でも、この刺があるから気をつけて」と説明すると、シャズナは少し首をかしげてから、興味深そうにその刺に覆われた実を肉球手でつんつんと軽く触ってみた。刺がチクチクとした感触に驚いたように、小さな「にゃっ」と声をあげて手を引っ込めた。
その仕草が可愛くて、思わず「ふふっ」と笑ってしまう。シャズナはその笑い声に反応し、一瞬こちらを見上げると耳を少し折り曲げて照れくさそうにした。何とも言えないその表情に、胸の中がほっこりと温かくなった。
「大丈夫だよ、シャズナ。無理しなくても栗はたくさん拾えるから」と言いながら、優しく栗の実を取り出して見せると、彼は再びしっぽを揺らしながら興味深そうに見つめた。どんなに刺があっても、それでも新しいことに挑むシャズナの姿は微笑ましく、愛らしかった。
その後も、シャズナは気をつけながらイガイガに触れたり、栗の実をつんつんしてみたりと、小さな冒険を楽しんでいた。栗の木陰で秋の光を浴びながら過ごすこの時間は、何気ない日常を特別なものに変えてくれる瞬間だった。
栗拾いを終え、シャズナと共に戻る道すがら、風が木々を揺らし、落ち葉がカサカサと音を立てる。シャズナはその音にも耳を立てて反応し、何か新しい驚きが待っているのではないかと期待しているかのようだった。その姿に微笑み、季節の移ろいを感じながら帰路につく自分の心もまた、穏やかな喜びに満たされていた。
