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のほほん異世界暮らし  作者: みなと劉


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180/409

180 秋の初めと市場にお出かけ

秋の始まりを感じる涼やかな風が吹き抜ける朝、シャズナと一緒に市場へ向かった。空は高く澄み渡り、夏の熱気から解放された穏やかな空気が周囲を包み込んでいる。シャズナはしっぽをゆるやかに振り、歩くたびに楽しげに「にゃー」と鳴き声をあげる。今日も元気いっぱいの彼の姿に、自然と笑みがこぼれた。


市場はすでに賑わっており、行商人たちの活気のある声が響いていた。収穫した農作物を丁寧に納品し、行商人たちと挨拶を交わした後、新しい季節に備えて何か良い種はないかと市場を見て回った。秋の農作業に最適な作物の種をいくつか購入し、これからの季節に向けて準備を整える。


「今日は特別に新鮮な鰹が手に入ってますよ」と行商人が勧めてくれた。大ぶりで美しい鰹はまさに今が旬の味わいで、その鮮やかな赤身が食欲をそそる。「鰹ならタタキがいいですよ。香ばしい焼き目をつけたら香味野菜と一緒にいただくと最高です」と行商人が調理法を教えてくれた。細かい手順まで親切に教わり、鰹を購入して市場を後にした。


自宅に帰ると、早速教わった通りに鰹のタタキを作り始めた。鰹の表面に焼き目をつけるため、網で炙り始めると、芳ばしい香りが部屋中に広がった。その瞬間、シャズナがトコトコと近づき、興味津々な様子で目をキラキラさせた。しっぽをピンと立てたまま、じっとこちらの手元を見つめるその瞳はまるで「何が始まるの?」と問いかけているかのようだった。


「いい香りだろ?」と話しかけると、シャズナは小さく「にゃー」と返事をし、期待を込めて足元に座り込んだ。焼き終わった鰹を氷水にさっとくぐらせ、キッチンで準備しておいた薬味のネギや生姜を用意する。タタキに仕上げた鰹を厚めに切り分けて皿に盛りつけると、その艶やかな見た目にシャズナはさらに目を輝かせた。


一口分の小さな切れ端をシャズナ用に取り分け、彼が食べやすいようにしてあげた。シャズナはそっと鼻を近づけて香りを確かめた後、一口ぱくりと食べた。そして満足そうに「にゃー」と鳴くと、しっぽを軽く揺らしながらその場に座り込み、さらに期待するような視線を向けてくる。


「まだ欲しいのか?」と笑いながらもう一切れ渡すと、シャズナは嬉しそうに再び口にした。秋の始まりを感じる穏やかな日、シャズナとのひとときが何とも言えない幸福な時間に思えた。



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