175 シャズナとお風呂
ある日の夕暮れ、お風呂を準備していると、いつもと違う様子でシャズナが近づいてきた。興味津々のまなざしを湛え、浴室のドアをくんくんと匂いを嗅ぎ、じっと見つめている。
「シャズナ、お風呂に入りたいのか?」と声をかけると、シャズナは一度小さくにゃーと鳴き、しっぽをゆるやかにふりふりと揺らしてみせた。
「じゃあ、一緒に入ってみるか?」と提案すると、シャズナの瞳が輝きを増し、にゃーっともう一度鳴いて賛成の意を示した。
実は、この日のために行商人から猫用のシャンプーを買い付けておいた。シャズナが興味を示してもいいように準備は万全だ。お風呂場へシャズナを抱えて入ると、温かなお湯がほのかに湯気を立てていた。
シャズナはお湯の中へ肉球をちょこんと入れ、すぐに引っ込めてまた入れるという動作を繰り返して遊び始めた。その様子に思わずほっこりと笑みがこぼれる。まるで新しい発見を楽しんでいるかのような姿に心が温まる。
「どうだ、気持ちいいだろう?」と話しかけると、シャズナはちらりとこちらを見上げてまたにゃーと返事をし、しっぽをさらにふりふりと揺らす。
優しくシャズナの体を洗いながら、猫用シャンプーの泡立ちがやわらかく毛並みに馴染んでいくのを見て、猫とのお風呂がこんなにも癒されるものだとは思わなかった。
シャズナと過ごすこの一瞬が、小さな幸せで満たされるひとときだった。




