167 ナスとピーマンの交配実験の成果
日が少し落ち始め、涼しさが畑に戻りつつある頃、ナスとピーマンの交配実験の成果を確認する日が訪れた。数週間前に交配を行い、その後しっかりと水を与え、日陰を作って守ってきた新しい芽が、ついに形になった。
「どうなっているかな…?」と心の中でワクワクしながら、畑に足を運ぶと、そこには予想を超える新しい野菜が姿を現していた。ピーマンのような鮮やかな緑色をしているが、形はナスとは全く違う。長さは少し長めで太め、まるできゅうりのような質感だ。周りには小さなつぶつぶが見え、触れると少しざらついた感触が伝わってくる。
「これが…」と呟き、慎重にその実を手に取る。確かにナスでもピーマンでもない、全く新しい形だ。交配実験としては大成功と言っても良いだろう。
その後、近くにいる行商人にこの新しい野菜を見せることにした。最近よく顔を合わせる行商人は、様々な土地を巡り、珍しい物や食材に詳しい。彼ならば、この新しい野菜がどんなものなのか、何かヒントをもらえるかもしれない。
「行商人さん、これを見てください」と、畑から持ってきた実を手渡す。行商人は目を細めてその実をじっくり観察した後、軽く頷きながら言った。
「うん、これは面白いね。色はピーマンに似ているけれど、形が全く違う。これは…南東のトゥアという国で見たことがある野菜に似ているな。」
「トゥアの国、ですか?」
「うん、ゴウンユアっていう名前の野菜だ。見た目も、この実にそっくりだよ。」行商人はその実を手に取ると、軽く皮をなぞりながら続けた。「ゴウンユアは強めの苦味と少しのえぐ味が特徴的で、料理には少し手を加える必要があるけれど、食べ方次第で美味しくなるんだ。」
「ゴウンユア?」と僕は驚きながらも、興味深く聞き入る。
「そうだ。ちょっと癖が強いから、食べる人を選ぶけれど、炒め物やスープに入れると、その苦味とえぐ味がアクセントになる。特に肉料理と相性がいいんだ。」
「なるほど、苦味とえぐ味ですか。」僕はその情報をしっかりと受け止める。この新しい野菜が、どのように使えるのかが少し見えてきた気がする。
行商人はその後もじっくりと新しい野菜を観察し、「もし食べてみるなら、皮をむいてから使った方がいいかもしれない。皮はちょっと硬いからね」とアドバイスをくれる。ゴウンユアのような強い特徴を持つ野菜は、調理法が重要だ。
「ありがとうございます、行商人さん。」僕はそのアドバイスを心に留め、今後の使い方に役立てることに決めた。
その後、行商人はまた旅立って行ったが、僕はこの新しい野菜をどう料理し、どんな風味が引き出せるのか、さらに研究してみたくなった。少しの苦味とえぐ味が、この野菜をどんな料理に生かせるのか、試すのが楽しみで仕方がない。
「さぁ、次はどうやって調理しようか。」僕は新しい実を手に、未来の料理を思い描きながら畑を後にした。




