166 暑中の頃と野菜の交配実験
暑中の頃がやってきた。日差しが一段と強くなり、畑の土も焼けるような暑さを感じるようになった。風もぬるく、どこか熱帯のような空気が漂っている。朝早くから作業を始め、日が高くなる前に少しでも進めておきたい。
「暑くなってきたな…」と、僕は畑の隅で立ち止まる。シャズナも日差しを避けるように、木陰に身をひそめている。彼の涼しげな顔が、僕の疲れた体にほんの少しの癒しをくれる。
今日は特別な実験を行う予定だ。ナスとピーマンを交配させることで、新しい野菜が生まれる可能性がある。これまでも少しずつ野菜の交配に挑戦してきたが、ナスとピーマンの交配は初めての試みだ。
「うまくいくかな?」と心配しながらも、ワクワクした気持ちもある。野菜を育てるだけでなく、新しい品種を生み出すことができれば、畑に新しい風が吹くことだろう。
まずはナスの花を選び、丁寧にピーマンの花の受粉を行う。ピーマンの花の雄しべと、ナスの花の雌しべをうまく合わせ、慎重に交配を試みる。予想外の結果が生まれるかもしれないという期待と、不安が入り混じった気持ちで作業を続ける。
シャズナは僕の周りをウロウロと歩き回りながら、時折「にゃー」と鳴いて応援してくれる。その姿に、少しでも和ませられる自分がいる。
交配を終えた後、植え付けた場所に水をやり、日陰を作っておく。これからしばらくは観察が続く。もしうまく実がなったら、それはきっと新しい野菜として、僕の畑の顔になるだろう。どんな形になるのか、色はどう変化するのか、その未来を想像しながら作業を終える。
「さぁ、これで少しでも新しい発見があるといいな」と心の中で呟くと、シャズナが何かを察したのか、再び「にゃー!」と元気よく鳴いた。その声が、僕にとっては何よりの励みになる。
昼間は暑さが増してきたけれど、シャズナと一緒に畑を見守りながら、過ごす時間はやはり心地よい。季節の移り変わりとともに、また一つ新しい挑戦が始まったのだ。




