165 少しづつ暑さがやってくる
初夏の終わりが近づき、空気の中に少しずつ暑さが忍び寄ってきた。朝のうちはまだ涼しく、ひんやりとした風が畑を吹き抜けていたが、日中になると次第に気温が上昇し、夏の訪れを感じさせるようになった。
「少しずつ暑くなってきたな」と、僕は一人つぶやきながら畑の作業を終え、シャズナに声をかけた。シャズナはその声に反応して、陽の光を浴びた草むらからひょっこり顔を出す。彼は大きく伸びをしてから、ゆっくりと歩み寄ってきた。
今日は、市場に農作物を納品する日だ。新鮮な野菜や果物を市場へ届けることが、僕の日常の一部となっている。シャズナも最近はよく一緒に市場に出かけることが多く、いつもと変わらぬ様子で僕の側を歩いてくる。
「今日は少し暑くなるけど、大丈夫だよな?」とシャズナに言うと、彼は「にゃー」と答え、まるで自分も納品に行く準備が整ったかのように、元気に足音を鳴らしながら歩き出す。
農作物を積んだ荷車を引きながら、市場へ向かう道を歩く。初夏の終わりが近づき、畑ではすでに夏の顔を見せる野菜たちが目立ち始めた。トマトやナス、ピーマンなど、これからの暑さに強い作物が収穫を迎えている。
「今年の収穫も順調だな」と僕は考えつつ、シャズナをちらりと見る。シャズナは市場に行く道すがら、まるで歩くのが楽しいかのように、軽やかな足取りで歩きながら周りの景色に目を向けている。
市場が見えてきた。広場に集まる人々の賑やかな声が聞こえ、色とりどりの野菜や果物が並べられている。納品の準備をしながら、今日はどんな反応があるか楽しみだなと思う。
「さぁ、シャズナ、今日も頑張ろうな」と声をかけると、シャズナは少し興奮した様子で「にゃー!」と鳴き、僕の横で待機する。彼と一緒に過ごす時間が、こうして市場の忙しさを少しでも和らげてくれる。
納品を終えた後は、また畑に戻り、作業を再開する予定だ。暑さは少しずつ本格的になってきたけれど、僕もシャズナも元気に過ごせるように、これからの季節を乗り越えていかなければならない。
「これからの季節も、一緒に頑張っていこうな」と心の中で誓いながら、シャズナと共に市場の賑わいの中へと足を踏み入れる。




