156 瓜きのこの栽培実験と失敗と記録つけ
瓜きのこの栽培実験が始まってから数週間が過ぎた。毎日欠かさず水やりをし、土壌の湿度を保つための工夫を重ねたものの、思うように成長は見られなかった。シャズナも不思議そうに苗床を見つめ、時折そっと鼻を寄せては、何か変化がないか確かめるようだった。
実験開始から一ヶ月が経ったある朝、目をこらしても芽がほとんど出ていないことを確認し、心が重くなった。「やはり森の自然の環境を再現するのは難しいのか…」と考えつつ、僕は農作物の記録帳を開いた。
「実験記録:瓜きのこの栽培について
開始日:○月○日
使用した種菌:行商人提供の菌床
条件:湿度60~70%、日陰を維持
経過観察:変化なし、小さな芽のみ
結果:現状、栽培失敗」
一つ一つの項目を記入していく中で、失敗の原因を振り返った。行商人の言葉通り、瓜きのこは森の特有な環境が必要なのかもしれない。温度や土壌の成分まで完全に再現するには、さらに工夫が必要だろう。
「でも、これで終わりにするわけにはいかない」と僕は独り言をつぶやいた。失敗もまた経験であり、次へのヒントとなる。試行錯誤の先に、新たな方法を見つけることを自分に誓った。
シャズナはその様子を見守りながら、小さく「にゃあ」と鳴いてくれた。それがまるで「次も頑張ろう」と言っているようで、少しだけ心が軽くなった。




