155 行商人に瓜きのこの栽培は出来ないかを確認した
瓜きのこの魅力にすっかり虜になった僕は、この特別な茸を自分の農場で育てられないかと考えた。収穫ができれば、村の人たちにも新しい味を届けられるし、自分の料理の幅もさらに広がるだろう。そこで、再び市場に立ち寄り、行商人を探した。
「この前買った瓜きのこ、素晴らしい風味だったんです。ところで、自分で栽培することは可能ですか?」と行商人に尋ねると、彼はしばらく考え込むような表情を浮かべた。
「瓜きのこは確かに美味しいだろう?でも、あれは育つ環境が限られていてね。森の湿った土壌と特有の陰影が必要なんだ。人工的にその環境を再現するのは簡単じゃない」と彼は丁寧に説明してくれた。
「でも、方法が全くないわけじゃない。特殊な菌床を使えば、条件を整えることができるかもしれない」と続けた。彼は微笑みを浮かべながら、小さな袋に入った菌床を手渡してきた。「これが種菌だ。成功するかは試してみるしかないけど、君なら挑戦する価値はあるだろう」と励ましてくれた。
その夜、僕はさっそく農場の一角に瓜きのこ専用のスペースを設け、慎重に菌床を土に埋めた。シャズナも興味深げにその様子を見守っている。湿り気を保つために水を注ぎ、木陰にするための囲いを整えた。
「これでうまく育ってくれるといいな」と僕はシャズナに話しかけると、彼は小さく「にゃあ」と返事をして、満足そうにその場に丸くなった。




