154/409

154 行商人から瓜きのこという茸を買い付けた

初夏の爽やかな朝、村の市場は行商人たちで賑わっていた。色とりどりの野菜や珍しい品々が並ぶ中、僕はふと見慣れない茸に目を奪われた。艶やかな緑色を帯びたその茸は、一般的なきのこ類とは少し異なり、形もどこか瓜のような丸みを帯びていた。

「これは何というきのこですか？」と行商人に尋ねると、彼は笑みを浮かべながら答えた。「これは『瓜きのこ』という珍しい茸で、遠方の森でしか採れないんだ。ほのかな甘みと独特な香りがあって、スープや炒め物にすると美味しいよ」と教えてくれた。

興味をそそられた僕は、すぐにその瓜きのこを買い付けることにした。家へ帰る道すがら、シャズナが袋の中を覗き込むように歩いていた。彼もこの新しい食材に興味津々のようだ。

早速、夕食に瓜きのこを使って料理を作ることに決めた。初めての食材をどう調理するか悩んだ末、軽く炒めてみることにした。薄切りにした瓜きのこは炒めると鮮やかな緑色が深まり、ほのかに甘い香りが漂ってくる。香りをかぐシャズナが、待ちきれない様子で尻尾を揺らしていた。

出来上がった炒め物を一口食べてみると、瓜きのこ特有の甘みとコクが口の中に広がった。食感はしっかりしていながらも柔らかく、他の野菜やスパイスとも相性が良さそうだ。シャズナにも少しだけ与えると、彼は好奇心いっぱいに食べ、満足そうに鳴いた。

新しい食材、瓜きのこを手に入れたことで、これからの料理の幅が広がる予感がした。この夏の食卓に、新しい風を吹き込んでくれそうだ。