138 自宅へ帰りシャズナ用のおやつを作る
農場での作業を終え、シャズナと一緒に自宅へ戻った。シャズナは満足そうに僕の足元を歩きながらも、ちらりと上目遣いで僕を見上げてくる。その仕草に思わず微笑み、「今日は特別なおやつを作ってあげるよ」と声をかけた。
家に入ると、シャズナはキッチンの隅に座り、興味津々な目で僕の動きを追いかける。棚から小麦粉と砂糖、ミルクを取り出し、特製のシャズナ用クッキーを作る準備を始めた。塩分を控えたレシピを考慮し、シャズナの体に優しい材料を選んで作るのが僕のこだわりだ。
ボウルに小麦粉を入れ、少量のミルクを混ぜ合わせて生地を作る。シャズナはその様子をじっと見つめ、尻尾を小さく揺らして期待に満ちた仕草を見せた。「もう少し待っててね」と声をかけると、彼は一度「にゃあ」と短く返事をし、また座り込んだ。
生地を小さな丸型に整え、オーブンで焼き上げる。その間、キッチンに広がる甘い香りにシャズナの目は輝きを増し、ついに待ちきれなくなったのか、キッチンカウンターの端までやって来て前足をちょこんと乗せた。
やがて、クッキーが焼きあがり、熱が少し冷めるのを待ってからシャズナに一つ差し出した。「はい、お待たせ。できたてだよ」と言うと、シャズナは匂いを嗅いで、慎重にひと口かじった。その表情が「おいしい!」と言わんばかりに変わり、僕の心が一層温かくなる。
「気に入ったみたいだね」とシャズナの食べる姿を見て、僕も一緒に一息つく。外は静かな夕方の風が吹き、窓越しに見える景色がオレンジ色に染まっていた。そんな中、シャズナと過ごすささやかなひとときが、僕にとって何よりも大切な時間であることを改めて感じた。




