136 焼き立てパンの匂いとミルクの香り
朝日がゆっくりと村に差し込み始めるころ、僕はいつものようにキッチンで忙しく手を動かしていた。今日は特別なパンを焼こうと思い、昨晩から仕込んでおいた生地をオーブンに入れた。ほんのりと甘いミルクとバターが香る生地が、焼き上がりとともに部屋いっぱいに心地よい香りを広げていく。
シャズナは、いつもより早起きしたらしく、僕の足元でくるくると回りながら待ちきれない様子だ。耳をピンと立てて、オーブンから立ち上る焼きたてパンの香りをくんくんと嗅いでいる。
「おはよう、シャズナ。今日のパンは特別だよ。」僕がそう話しかけると、彼はまるでその言葉を理解したかのように小さく「にゃあ」と返事をした。ミルクを注いだグラスをテーブルに並べると、そのクリーミーな香りがさらに食欲をそそる。
オーブンのタイマーが鳴り、パンが焼き上がった合図を知らせる。黄金色に焼き上がったパンを取り出し、ほんの少し冷ます間に、シャズナがそわそわと前足で床をたたく。香ばしい香りに包まれたこの瞬間が、一日の始まりを優しく彩ってくれる。
「さあ、熱々のうちに食べようか。」パンをちぎり、シャズナの前にも一かけらを置いてあげた。彼は鼻先でくんと匂いを嗅ぎ、一瞬目を輝かせてからパクッと頬張った。
僕は焼き立てパンを口に運び、次いで一口ミルクを飲む。その優しい甘さが口の中で広がり、心も体も温かく満たされる。シャズナも満足そうに食べている姿を見て、自然と微笑みがこぼれた。
焼き立てパンの香りとミルクの香りが交差する朝、平穏な一日の始まりに感謝を感じながら、僕はシャズナと共に新しい一歩を踏み出していった。




