130 シャズナと一緒にお出かけ
朝日が高く昇り、村の広場からは賑やかな声が響いていた。今日は村で小さな市が開かれる日で、行商人たちが各地から集まり、珍しい品や新鮮な食材を売りに来る。僕はこの機会を利用してシャズナを連れてお出かけすることにした。
「シャズナ、今日は特別な日だよ。行こうか。」
シャズナはその言葉に反応して、尾をふわりと揺らしながら玄関先で待機していた。まだ少し寒さの残る空気の中で、彼女の毛皮は太陽の光を反射して輝いて見えた。
村の広場に着くと、すでに多くの村人たちが賑やかに行商人たちの屋台を囲んでいた。色とりどりの布や陶器、珍しい果物や香辛料が並び、香ばしいパンの匂いが漂っている。シャズナは初めて見る景色に興味津々で、屋台と屋台の間を小走りで進んでいく。
「ほら、シャズナ、こっちだよ。」
僕は人混みの中で迷子になりかけたシャズナを見つけ、手招きをして呼び寄せた。彼女は目を輝かせながら戻ってきて、次の屋台へと足を進めた。行商人の一人がにこやかに話しかけてきた。
「おや、その猫はお友達かい?賢そうな顔してるね。」
「はい、シャズナっていうんです。今日は一緒に買い物に来たんですよ。」
行商人は笑いながら、小さなサツマイモの焼き菓子を手渡してくれた。シャズナは鼻をひくひくとさせ、少しだけ前足を上げて匂いを確認している。僕も思わず微笑みながら、お礼を言ってその場を後にした。
広場の隅には花やハーブの苗を売っている屋台があり、そこに目を留めた。春の庭に植える新しい植物を探していたところだったので、ちょうどいい機会だ。シャズナはその屋台の前で座り込み、匂いを楽しむように鼻を突き出している。
「これなんてどうだい?育てやすいハーブだよ。」
行商人が手に取ったのは、香り高いレモンバームの苗だった。僕はその提案に頷き、苗を購入することにした。シャズナも満足そうにその苗を見上げ、僕の選択に賛同しているようだった。
広場を一巡りし、シャズナと一緒に手に入れた苗や焼き菓子を持って帰路につく。風がそよそよと吹き、穏やかな気持ちに包まれた。
「シャズナ、今日は楽しかったね。次はどんな冒険に行こうか?」
シャズナは振り返り、まるで答えるように小さく「にゃあ」と鳴いた。




