127 朝自宅の玄関前に猫がいた
冷え込む冬の朝、僕はいつものように早起きをし、朝食の準備を済ませてから玄関の扉を開けた。すると、玄関前の小さな階段の上に、一匹の猫が丸くなっていた。毛はふわふわとした灰色で、まるで薄い霧に包まれた冬の空を映しているかのようだった。
猫は僕が出てきたことに気付くと、ぱちりと大きな目を開けた。氷のように冷たい朝の空気の中、その瞳は澄んだ琥珀色で、こちらをじっと見つめている。僕は一瞬、その静かな視線に動けなくなったが、やがてゆっくりとしゃがみ込んだ。
「おはよう、寒くなかったかい?」
猫は答えるわけもなく、そっと小さく鳴いた。かすかな声が冬の静寂に響く。どこか寂しげでもあり、心をくすぐるような鳴き声だ。手を伸ばしてみると、猫は逃げることもなく少し首をすくめただけで、その場にとどまった。
「さて、君も何か温かいものが欲しいかな?」
家の中に入り、少し温かい牛乳を小さな皿に注いで持ってくると、猫は興味深そうに鼻を近づけ、少しずつ舐め始めた。その様子があまりにも可愛らしく、思わず微笑んでしまう。
この猫がどこから来たのかはわからないが、朝の訪問者が僕の日常にささやかな彩りを加えてくれた。食事を終えた猫は満足そうに毛繕いを始め、再び丸くなって僕の足元でうとうとし始めた。冬の朝の寒さも、猫の小さな温もりがそっと和らげてくれるようだった。
「少しここで休んでいけばいいよ。僕ももう少しだけ、この温かな時間を楽しもう。」
猫と一緒に玄関先で過ごす朝は、忙しい日々の中で忘れかけていた穏やかなひとときを思い出させてくれるものとなった。




