表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
のほほん異世界暮らし  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/409

116 鍋でほっと一息

寒さが肌を刺す冬の夜、僕は日中に集めた薪で家の暖炉を温めていた。焚き火の炎がぱちぱちと音を立て、部屋の中を暖かく照らしている。薪が心地よい香りを放ち、部屋全体に木の温もりが広がっていた。


そんな夜にふさわしい料理は、やはり鍋料理だ。冬の冷たい空気を追い払い、心と体を温めるにはもってこいの食事だと思う。僕は台所で食材を並べながら、今日はどんな鍋にしようかと考えた。白菜やネギ、きのこ、豆腐、そして昨年行商人から買い付けた乾燥した山のキノコが並んでいる。これらをたっぷりと使って、栄養たっぷりの鍋を作ることにした。


まずは土鍋に出汁を取るための昆布を入れ、じっくりと火を通して香りを引き出す。出汁がしっかりと出たところで、鶏肉を加えて旨味を引き立てた。やがて土鍋の中でぐつぐつと煮立ち始め、ほのかな出汁の香りが部屋中に漂ってきた。


野菜を順番に鍋に投入し、きのこの香ばしい香りがさらに加わった。豆腐が出汁を吸い込み、柔らかな風味をたたえた状態で揺れる様子を見ていると、心まで温かくなるようだった。鍋の中では色とりどりの食材が煮え、湯気が立ち上がり、冬の冷たさを忘れさせるように空気を満たしていった。


「これで、そろそろ食べごろかな」と僕はつぶやき、テーブルに鍋を運んだ。温かい鍋を囲んで食べる時間は、何よりも贅沢なひとときだ。箸を手に取り、まずは出汁がたっぷり染み込んだ白菜を口に運ぶ。柔らかな歯ごたえとともに、出汁の旨味が口の中いっぱいに広がった。


「ふう、これは格別だな」と思わず声が漏れる。寒い中で作業した疲れが、一口ごとに体から溶けていくようだった。豆腐はふんわりとしており、ネギはほんのりと甘さを増していた。行商人からの珍しいキノコは土の香りを含み、鍋全体に深い味わいをもたらしている。


窓の外では、夜の静寂が村を包んでいた。遠くからかすかに聞こえる風の音は、冬の夜らしさを感じさせる。僕はふとその音に耳を澄ませ、焚き火の温かさと鍋の香りに包まれて、今の瞬間を心から楽しんでいる自分に気づいた。


「こうして冬を過ごせるのも、村での生活があってこそだな」と、心の中で静かに思う。充実した日々に感謝しつつ、鍋の温かさが体の芯まで染み込むのを感じていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ