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のほほん異世界暮らし  作者: みなと劉


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103/409

103 穏やかな風が吹く

夏の終わりが近づいているのか、日差しはまだ強いものの、空気にほんの少し涼しさが感じられるようになった。そんな穏やかな風が花咲村に吹き抜け、緑の葉を揺らしている。畑や田んぼの作物も、すっかり夏を越す準備が整ったようだ。


今朝、村の畑で見かけたのは、黄金トマトの実が赤く色づき始め、紅葉キャベツも丸く膨らんで、収穫の時期を迎えていることを告げていた。春の始まりに植えた苗たちが、こうしてしっかりと成長し、実をつけていることに嬉しさを感じる。


「風が気持ちいいな…」と、村の広場で作業をしているとき、ふと口に出した言葉が、まるで風に乗るように村の隅々に響いた。


周りを見渡すと、田畑を耕す村人たちや、子供たちが遊びながら走り回る姿が見える。村全体が穏やかで、どこか平和な雰囲気をまとっている。この村で過ごす日々が、ますます愛おしく感じられる。


僕は、広場にある木陰で少し休憩を取ることにした。木の下で座り込んでいると、心地よい風が肌を撫で、耳には葉っぱが揺れる音が心地よく響く。村で過ごす時間が、こんなにも穏やかで自然に溶け込んでいることが、今の僕にはとても幸せなことに感じられる。


「最近は忙しくて、あまりこうしてゆっくりする時間がなかったけど、こういう瞬間が大切だな。」と心の中で思いながら、目を閉じて風の音に耳を傾けた。


そのとき、ふと視線を感じて目を開けると、村の老婦人が僕に微笑んでいるのが見えた。「あんたも風を感じているんだね。こうやって風を感じると、心が落ち着くもんだよ。」と、老婦人は優しい声で話しかけてきた。


「はい、風がとても気持ちいいですね。最近、こうしてゆっくり過ごすことが少なくなっていて、改めてこの風の心地よさを感じることができて嬉しいです。」


老婦人は頷きながら、「毎日忙しい日々を送っていると、こういう小さな幸せを見落としてしまうこともあるけど、たまにはこうして自然を感じることが大切よ。」と言った。


その言葉が、僕の心に深く響いた。自然の中で過ごす時間、風を感じ、空を見上げ、無心に歩くこと。その大切さを再確認できたような気がした。


「そうですね、これからはもっとこうした瞬間を大切にしようと思います。」と僕は答え、老婦人と共にしばし、風の中で静かな時間を楽しんだ。


その後、また少し作業を再開したが、心はすっかり落ち着いていて、風の吹く音に耳を傾けながら、ゆっくりと季節の移ろいを感じていた。



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