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第五話【初めて見知ったお隣さん】

数時間経った。

「今何時だ‥‥? うわ、四時半過ぎてる‥‥」

(寝すぎた‥‥)

 けどまあ、身体もだいぶ‥‥良くなってない。

全然変わってなかった。というか足の痛みが鋭くなっている気がする‥‥。

「はぁ‥‥」

 思わずついた溜息の音が消えた時。

ピンポーン。

「あ?」

(今の音、玄関のインターホンだよな‥‥? マンションの知り合いなんていたっけ?)

 右足を引きずりながら玄関を開く。

「はーい、どちら様――――――――」

「こんにちは、音花さん」

「…………え?」

 目の前にいたのは、白雪六花だった。

「えっ、なんで、どうして‥‥?」

「やっぱり気付いていなかったのですね。私は隣に住んでいるのですよ?」

「…………はぁ⁉」

(うっそだろ⁉)

 顔を出して隣の表札を確認すると

「…………」

 白雪って書いてある‥‥。

「そんなことあるのかよ‥‥」

「ええ、驚きですね。‥‥それで、お怪我の方は?」

「えっ」

「まだ治っていないのでしょう。重心が偏っていますよ」

(バレたか‥‥)

「今日も休んでいましたよね?」

「…………よく知ってるな」

「教室に行きましたので」

「…………そうか‥‥」

「礼はちゃんとします」

「え?」

 動揺してしまって手が滑る。体重が乗って右足が痛み、前に倒れた。

「お‥‥」

「やはり、無理して立っていたのですね‥‥失礼しますよ?」

「は‥‥ちょ、おい‥‥」

 白雪は俺の肩を支えながら部屋に入る。

「なんでこんなこと‥‥?」

「言ったでしょう、礼と。私のせいでこうなってしまったのですから、責任を取るのは当然のことです」

 俺はベッドに座らされる。

「思ったより部屋は綺麗なのですね」

「そりゃあな、一人暮らしをしていれば自然にこうなる‥‥なんだよ」

「いえ、もう少しダメな人だと思っていたもので」

「おいっ、どういうことだよそれ」

「…………」

(無視かよっ)

「…………包帯を巻きますね」

「あ、ありがとう‥‥」

「…………これで完成です」

(おお‥‥流石別名【天使】)

彼女にはいくつも異名がある。主に【白雪姫】【天使】等。

「あとは‥‥キッチンを借りても?」

「あ、ああ‥‥構わない」

白雪は部屋を出て料理を始めた。

「…………どうしてこうなった‥‥」

理由はもちろん昨日の事故なのだが、礼とはいえここまでするかぁ‥‥?

「…………悪い気はしないけど」

少し経つと、白雪が鍋を持ってきた。中身は一人分の雑炊。

「体が痛くても食べられるはずです」

「ああ、助かる‥‥頂きます」

(‥‥美味い)

「…………お口に合いますか?」

「ああ、美味しいよ。ありがとう」

「…………よかったです」

「…………こんな飯、毎日食えたらいいんだけどな」

 冗談交じりに言ったその言葉に、俺は自分が何を言ったのか遅れて理解する。

「あ、いやっ、これはその、言葉のあやといいますか‥‥!」

「構いませんよ」

「…………へっ?」

「お隣ですし、材料さえ用意していただければ」

「え、えーっと‥‥白雪? どうしてそこまで‥‥」

「礼です」

「?」

「礼です」

「はいっ」

 そしてこの日から、ちょっと変な付き合いが始まった。



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