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曇った世界と君  作者: ねぎ
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ゴミ捨て場の彼女

 まったく、配信者とは何でこんなに疲れるんだ。カメラに向かって猫なで声でお別れの言葉を放ち、パソコンを閉じる。そりゃあ、もちろん好きで始めたけど、カメラの奥の顔も名前も知らないおっさんの言葉に一喜一憂してくるくる回っている私はいささか滑稽だろう。うん、こんな日は酒に限る。ドンキで買った安いジンをジンジャーエールで割って一気に煽る。アルコールはたいして好きじゃない。鮮明でクリアで透き通っているこの世界を曇らせる手段がアルコールしかないから、それに頼っているだけだ。二杯、三杯とストレスを肴に飲み続ける。今日は酒が進むなと思っていると、ジンの瓶が空になってしまった。そろそろ寝ようかと思ったが、明日は燃えるごみの回収日だったことを汚い部屋を見て思い出す。フラフラの足でゴミをまとめ、ゴミ捨て場に向かう。やはり飲みすぎたようで、視界が回り、世界が曇る。やっとのことでゴミ捨て場にたどり着いたが、そこで意識が途切れてしまった。


不快なアラームの音が耳元で鳴りやまない。アラームかけてまで起きる用事なんてなかったはずなんだけどな、と不快になりながら目を覚ます。目を開けると曇った目の若者と目があった。困惑が止まらない。記憶を辿ろうと回らない脳みそををフル回転させてみるが、頭痛に遮られ、思考が止まってしまった。

これは…二日酔いか…。二日酔いの頭痛だと分かってから記憶がスルスルと戻ってきた。途端に恥ずかしさがこみあげてきた。おそらく昨日ゴミを捨てた後にゴミ山にそのまま倒れこんでしまったのだろう。どうりで体から異臭がするわけだ。とりあえずお礼を言わなきゃと声をかけようとしたが、介抱してくれた男性は私が起きたのを確認するとそそくさと立ち上がりその場を立ち去ろうとしていた。あわてて

「ちょっと!」

と呼び止め、精一杯の感謝を込めて

「ありがとう!!」

と感謝の言葉を伝えた。恥ずかしさと申し訳なさを隠して笑ってみたのだが、うまく隠せていだろうか。

 すると男性は振り返り、やや驚いたような顔をして

「とりあえず風呂でも入ったほうがいいっすよ」

と、なんとも乙女にはダメージの来る一言を放った。隠していた恥ずかしさが体の奥からじわじわと顔を出してきた。そのまま男性はすたすたとその場を立ち去ってしまった。


 今朝はなんとも恥ずかしい体験をしたなと、男性に言われた通りお風呂につかりながら物思いにふける。今度の配信のネタに使えそうだなと真っ先に思ってしまったのは職業柄仕方のないことだ。

 しかし、今朝の男性は不思議な目をしていたな。なんというか、人に興味がないというか。私は助けられたが、私を助けるというより問題を解決するために結果として私が助けられたというか…。まあ、私が魅力的な人物ではなかったのだろう。ゴミ臭かったし。

 ゴミ捨て場が一緒ということは今後も顔を合わせる可能性があることに気づき、少しだけ憂鬱な気分になりながら体の泡を落とし切った。


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