猫鳥の仲
ペンギンの登場に、猫が毛を逆立てて『シャーッ!!』と威嚇音を発する。
「グワワッ!!」
ペンギンも負けじと猫を威嚇する。
これは……犬猿の仲ならぬ、猫ペンの仲!?
猫とペンギンって相性悪いんだ。
ペンギンは鳥類だからかな?
「落ち着きなさい」
魔塔主が猫をなだめる。
すると廊下から走る足音が聞こえてきた。
「ペンギン、早いから!」
「先輩!?」
壊れた扉の前に立つペンギンの後ろに現れたのは、先輩だった。
「随分と不思議な力を使って現れたようですね」
魔塔主が先輩に言うも、先輩は返事の代わりに魔塔主を睨む。
不思議な力って、ペンギンのゲートを開く力のこと?
「うちの魔塔士を勝手に連れ出されては困ります」
「うちの? 俺のではないのですか?」
面白そうに魔塔主が笑う。
『それよりもこのペンギンなんなのよ! こいつから異様な力を感じるわよ! 本当にこいつ、使い魔なの!?』
使い魔の契約はした。
先輩も一緒にその場にいたから知っている。
猫の発言に驚きながら先輩を見た。
「先輩の使い魔は契約しても問題ないと仰っていましたよね?」
「あ……ああ……」
『そんなわけない! こんな……こんな力……』
「つまりこの使い魔は、鳥類の中でも長的な存在なのかもしれませんね」
なだめるように魔塔主が猫を撫でる。
「アシルの使い魔も鳥類の中では上位に位置しています。その使い魔が問題ないと判断したのでしたら、問題はないのでしょう」
先輩の使い魔は警戒していなかった。
そこから考えても、魔塔主の言う通りな気がする。
……長、というのは疑わしいけど。
扉の前で両手を広げて佇む、目つきの悪いペンギンを見た。
心の内を読まれたのか、ペンギンが私に顔を向ける。
もしかして怒った?
しかしペンギンはペタペタといつもの速度でこちらに向かって歩いてきたと思ったら、私の隣の席にドカリと座った。
居座る気だ!?
そしてソファーにゴロリと寝転がる。
くつろぐ気だ!?
『なんて図々しい使い魔なの!? 教育がなってないわよ!!』
ぐうの音も出ない。
「さっきまであんたがいないのを心配して、動き回っていたから疲れたんだと思うよ」
先輩がペンギンに優しい。
「心配かけてごめんね」
「クワッ」
撫でるとペンギンが一鳴きする。
「しかしよくここにいることが分かりましたね」
「……なんとなくです」
魔塔主が問うも、先輩が言葉を濁す。
ペンギンと先輩の間でなにかあったのだろうか?
さっきの魔塔主と猫の警戒から見ても、ゲートを使ってきたように思えたけど……。
『こんなずんぐりむっくりな奴が、鳥類の長……?』
まだ警戒している猫が呟くと、仰向けに寝転がっていたペンギンが猫の方に体を向けた。
『な……なによ! 本当のことを言っただけじゃない!』
しかしペンギンはむくりと起き上がると、私の方に顔を向けながらテーブルに置かれていたクッキーを指差す。
「これが欲しいの?」
「クワッ」
『んなっ! 私は無視!?』
まるでコハナみたいな反応の猫だ。
苦笑いながらペンギンにクッキーをあげる。
『私は認めないわよ! こんな主と喋ることも出来ない奴が鳥類の長だなんて!!』
「クワッ?」
「なに? って言ってます」
『今、絶対にニュアンスだけで答えたわよね!?』
「クワッ」
「そんなことないって言ってます」
『そうだ、ともとれる言い方だったわよ! 自分の都合のいい方に解釈しないで!』
なかなか鋭いツッコミができる猫のようだ。
ペンギンが再び私を見ながらクッキーを差す。
「クッキーが欲しいと言ってます」
『それは見ればわかるわよ!!』
このやり取りに魔塔主が声を上げて笑い出す。
「この子に我を忘れさせるなんて、本当に面白い方達ですね」
止めさせるように魔塔主が猫を撫でた。
「クワァ?」
「どこが? と言っています」
「リュナ、もういいから」
私の後ろに立った先輩が、私の肩に手を置いた。
「しかしあの扉を壊すとは、凄まじい力ですよね。あなたもそう思うでしょ」
魔塔主が撫でている猫に視線を落とす。
猫もそれは感じていたのか、返事をせずにプイッと視線を逸らした。
「ペンギンの話はそれくらいにして頂いて、用がなければ帰りたいのですが?」
「本題がまだですよ」
私を挟んで、睨む先輩と不敵に笑う魔塔主の間に火花が飛び散る。
触れたら火傷しそう……。
「座りなさい」
魔塔主に促されて、先輩が溜息を吐きながらペンギンとは逆の私の隣に腰掛けた。
扉、破壊されたままだけど、このまま話を続けるんだ……。
「私はあなた達二人の結婚に反対はしませんよ。むしろあなた達の手助けしようと考えています」
どうして魔塔主が私と先輩の恋愛に関与してくるんだろう?
先輩のお父さんの大公からなにか言われたのだろうか?
「大公家の役目を考えれば、純粋覚醒した彼女は終止符になる可能性を秘めていますからね」
「俺は彼女を大公家の都合で利用するつもりはありません」
「しかしあなたが結婚すれば、自ずとあなたと彼女の子どもは大公子になるのですよ?」
「前に言いましたよね。身分など捨てられると」
言い合う二人を目で追う。
なになに?
なんだか当事者同士の問題として話をしているように聞こえるんだけど?
「あなたが大公子としての役目を果たせないのでしたら、彼女は王のもとに嫁がせるしかなくなりますが、よろしいのですか?」
それまで穏やかだった魔塔主の声が低くなった。
隣から歯を噛みしめる音が聞こえてくる。
どうしよう……先輩を助けられるなにか……なにか……。
「あの!」
私が手を挙げると二人の視線が私に向く。
「事情はよく分かりませんが……どんな強制力が加わろうとも、私は先輩以外の人と結婚するつもりはありませんから!」
私の堂々宣言に、先輩の顔は真っ赤に染まり、魔塔主は目を丸くしたのだった。
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