表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔塔士達の交響曲  作者: 神楽 棗
第二章 両片思い編
41/72

能力

 コハナが息絶え、私は我を忘れて全ての負の感情を解放した。

 こいつらが憎い、殺せ! 根絶やしにしろ!!

 私の心が大きく叫ぶ。


「リュナ上級魔塔士!?」


 私を呼ぶ眼鏡の声も聞こえない。

 お師匠様がなにをした! コハナがなにをした! みんなを苦しめるお前達を、私は絶対に許さない!!

 魔力が呼応するように膨れ上がっていく。

 意識が魔力にのまれそうになった時だった。

 眩しい光と共に、ゲートが開かれる。

 ペタペタペタ……。

 聞きなれた可愛い音に、我に返る。

 ゲートから姿を見せたのは私の使い魔のペンギンだった。


「ペンギン?」


 奴等が戸惑うように呟く。

 ペンギンはゲートから出てくると、突然両手をバタバタと上下に激しく揺らす。


「ギョェェェェェェェッ!!」


 耳を塞ぎたくなるような不快な叫びを上げた。


「なっ!? 何なのこの声!?」


 奴等も耐えきれずに耳を塞ぐ。


「ギョェェェェェェェッ!!」


 ペンギンは止めることなく叫び続ける。

 私も思わず耳を塞いだ。

 すると大地が激しく揺れだす。

 なにが起こっているのか戸惑っていると、空から様々な種類の鳥達が飛んできて奴等に攻撃し始めた。

 そして先程から感じていた振動は、あらゆる動物達がこちらに突進してきていたのだ。

 しかし動物達は私達には目もくれず、奴等に向かって突き進む。


「なんなのよ、これ!!」


 女性が叫びながらコハナにかけた水を取り出す。

 しかし動物達の激しい攻勢に、自分に振りかかってしまったようだ。


「キャーーーーー!!」


 女性の悲鳴が聞こえてくる。


「一旦逃げるぞ!」


 男が女性を抱えて去っていくのが見えた。

 逃がさない!!

 追いかけようとすると、ペンギンが私の前に立ちはだかった。


「クワッ」


 いつものように私に手を差し出してくる。

 手を握れってこと?

 ペンギンの手をそっと握った。

 次の瞬間、目を開けていられないほどの眩しい光が放たれた。

 光が落ち着いたのを感じて、閉じていた目を開く。

 するとそこには奇跡が起きていた。


「あれ? 私、死んでない?」


 息が完全に止まっていたはずのコハナが起き上がっていたのだ。

 ポタポタと涙が零れ落ちる。


「え? なんで私、生きてんの? しかも前より体が軽いんだけど? やっぱり死んでる?」

「コハナ!!」


 コハナに抱きついた。


「えぇ~? どうせならカッコいい男に抱きつかれたいんだけど……」

「コハナ!! 良かったよ!!」


 泣き叫ぶ私の背中をコハナが優しく叩いた。


「これであんたに助けてもらった借りは、なしだからね」


 抱きついたままコクコクと大きく頷く。


「リュナ!!」


 上空から私を呼ぶ声が聞こえて顔を上げる。


「先輩?」


 コハナから体を離して立ち上がる。

 近くまで飛んで来ると先輩が、使い魔の鳥から飛び降りた。

 そして着地すると同時に、私を抱き寄せた。


「リュナ……。無事でよかった……」


 安堵したように耳元で囁く先輩の背中に手を回す。


「はい……」


 先輩の温かい胸に顔を埋めた。

 しかし咳払いが聞こえてきて我に返る。


「リュナ上級魔塔士がお気に入りなのは知っていますが、こういう行為は時と場所をわきまえて下さい」


 眼鏡に注意されてお互いが体を離す。


「死んだのは私なのに、なんで真っ先にリュナの心配をするのよ。心配で抱きしめるなら、私が先じゃない?」

「コハナさんが以前、心配していた通りの展開になりましたね」


 気まずくなり、視線が泳ぐ。


「その……みんな無事でよかったよ」


 先輩が咳払いをしながら、何事もなかったかのように振舞った。


「無事じゃないです。私、死んでますから」

「あんたが外に出ていることについては、後で詳しく聞かせてもらうから」


 コハナが押し黙る。

 助けてもらった身だし、あとでコハナの武勇伝でも先輩に語っておいてあげよう。


「それよりもなにがあったの?」


 先輩に尋ねられて事情を説明しようとして、ペンギンがいないことに気付く。


「あれ? リュナペンギンはどこに行ったの!?」

「リュナペンギン?」


 先輩が首を傾げる。


「新種の生き物には名前が付けられるんですよね? だからあの子はリュナペンギンという種類の名前を付けました!」

「精霊の森の生き物に新種もなにもないでしょう。馬鹿なのですか?」


 眼鏡が相変わらずの嫌味っぷりで、見下すように眼鏡を持ち上げた。


「いや……まあ、あんたがそう名付けたいのなら、リュナペンギンでいいんじゃないかな?」

「本当にあなたはリュナ上級魔塔士に甘すぎますよ」


 眼鏡があきれたように返す。

 そしてその隣でコハナも大きく頷いた。


「それよりペンギンは……」

「ペンギンでしたらまたゲートを開いて帰って行きましたよ」


 心配しているとマウノが教えてくれた。


「ゲート? 空間を行き来できる使い魔なの?」


 先輩が驚いたように尋ねてくる。


「はい。先輩の部屋もゲートを使って移動していましたから」


 先輩が絶句した。

 私は当たり前のように見ていたけど、ゲートを開く使い魔ってやっぱり珍しいのかな?


「あんたのペンギン、さぼり魔かと思ったら、とんでもない力を隠し持っていたのね」

「ええ。僕も驚きました。動物を操ったり、人を生き返らせたり……まるで奇跡のようです」

「使い魔の力って凄いんだね」


 感心するも、先輩と眼鏡は黙ったまま難しい顔をしていたのだった。





読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ