能力
コハナが息絶え、私は我を忘れて全ての負の感情を解放した。
こいつらが憎い、殺せ! 根絶やしにしろ!!
私の心が大きく叫ぶ。
「リュナ上級魔塔士!?」
私を呼ぶ眼鏡の声も聞こえない。
お師匠様がなにをした! コハナがなにをした! みんなを苦しめるお前達を、私は絶対に許さない!!
魔力が呼応するように膨れ上がっていく。
意識が魔力にのまれそうになった時だった。
眩しい光と共に、ゲートが開かれる。
ペタペタペタ……。
聞きなれた可愛い音に、我に返る。
ゲートから姿を見せたのは私の使い魔のペンギンだった。
「ペンギン?」
奴等が戸惑うように呟く。
ペンギンはゲートから出てくると、突然両手をバタバタと上下に激しく揺らす。
「ギョェェェェェェェッ!!」
耳を塞ぎたくなるような不快な叫びを上げた。
「なっ!? 何なのこの声!?」
奴等も耐えきれずに耳を塞ぐ。
「ギョェェェェェェェッ!!」
ペンギンは止めることなく叫び続ける。
私も思わず耳を塞いだ。
すると大地が激しく揺れだす。
なにが起こっているのか戸惑っていると、空から様々な種類の鳥達が飛んできて奴等に攻撃し始めた。
そして先程から感じていた振動は、あらゆる動物達がこちらに突進してきていたのだ。
しかし動物達は私達には目もくれず、奴等に向かって突き進む。
「なんなのよ、これ!!」
女性が叫びながらコハナにかけた水を取り出す。
しかし動物達の激しい攻勢に、自分に振りかかってしまったようだ。
「キャーーーーー!!」
女性の悲鳴が聞こえてくる。
「一旦逃げるぞ!」
男が女性を抱えて去っていくのが見えた。
逃がさない!!
追いかけようとすると、ペンギンが私の前に立ちはだかった。
「クワッ」
いつものように私に手を差し出してくる。
手を握れってこと?
ペンギンの手をそっと握った。
次の瞬間、目を開けていられないほどの眩しい光が放たれた。
光が落ち着いたのを感じて、閉じていた目を開く。
するとそこには奇跡が起きていた。
「あれ? 私、死んでない?」
息が完全に止まっていたはずのコハナが起き上がっていたのだ。
ポタポタと涙が零れ落ちる。
「え? なんで私、生きてんの? しかも前より体が軽いんだけど? やっぱり死んでる?」
「コハナ!!」
コハナに抱きついた。
「えぇ~? どうせならカッコいい男に抱きつかれたいんだけど……」
「コハナ!! 良かったよ!!」
泣き叫ぶ私の背中をコハナが優しく叩いた。
「これであんたに助けてもらった借りは、なしだからね」
抱きついたままコクコクと大きく頷く。
「リュナ!!」
上空から私を呼ぶ声が聞こえて顔を上げる。
「先輩?」
コハナから体を離して立ち上がる。
近くまで飛んで来ると先輩が、使い魔の鳥から飛び降りた。
そして着地すると同時に、私を抱き寄せた。
「リュナ……。無事でよかった……」
安堵したように耳元で囁く先輩の背中に手を回す。
「はい……」
先輩の温かい胸に顔を埋めた。
しかし咳払いが聞こえてきて我に返る。
「リュナ上級魔塔士がお気に入りなのは知っていますが、こういう行為は時と場所をわきまえて下さい」
眼鏡に注意されてお互いが体を離す。
「死んだのは私なのに、なんで真っ先にリュナの心配をするのよ。心配で抱きしめるなら、私が先じゃない?」
「コハナさんが以前、心配していた通りの展開になりましたね」
気まずくなり、視線が泳ぐ。
「その……みんな無事でよかったよ」
先輩が咳払いをしながら、何事もなかったかのように振舞った。
「無事じゃないです。私、死んでますから」
「あんたが外に出ていることについては、後で詳しく聞かせてもらうから」
コハナが押し黙る。
助けてもらった身だし、あとでコハナの武勇伝でも先輩に語っておいてあげよう。
「それよりもなにがあったの?」
先輩に尋ねられて事情を説明しようとして、ペンギンがいないことに気付く。
「あれ? リュナペンギンはどこに行ったの!?」
「リュナペンギン?」
先輩が首を傾げる。
「新種の生き物には名前が付けられるんですよね? だからあの子はリュナペンギンという種類の名前を付けました!」
「精霊の森の生き物に新種もなにもないでしょう。馬鹿なのですか?」
眼鏡が相変わらずの嫌味っぷりで、見下すように眼鏡を持ち上げた。
「いや……まあ、あんたがそう名付けたいのなら、リュナペンギンでいいんじゃないかな?」
「本当にあなたはリュナ上級魔塔士に甘すぎますよ」
眼鏡があきれたように返す。
そしてその隣でコハナも大きく頷いた。
「それよりペンギンは……」
「ペンギンでしたらまたゲートを開いて帰って行きましたよ」
心配しているとマウノが教えてくれた。
「ゲート? 空間を行き来できる使い魔なの?」
先輩が驚いたように尋ねてくる。
「はい。先輩の部屋もゲートを使って移動していましたから」
先輩が絶句した。
私は当たり前のように見ていたけど、ゲートを開く使い魔ってやっぱり珍しいのかな?
「あんたのペンギン、さぼり魔かと思ったら、とんでもない力を隠し持っていたのね」
「ええ。僕も驚きました。動物を操ったり、人を生き返らせたり……まるで奇跡のようです」
「使い魔の力って凄いんだね」
感心するも、先輩と眼鏡は黙ったまま難しい顔をしていたのだった。
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