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魔塔士達の交響曲  作者: 神楽 棗
第一章 出会い編
29/72

おかしな使い魔

「ただいま!」


 魔塔に戻って来た私は、二人に会いたくなってすぐに食堂に向かった。


「おかえり」

「おかえりなさい」


 抱きしめようと広げた手が動きを止める。

 二人との温度差に虚しくなったからだ。

 そうだった。

 何も知らない二人からしたら、ただ帰省して帰ってきただけのようにしか見えないんだ。

 しょんぼりしていると、コハナが手の平を向けてきた。


「お土産は?」


 ハッとなった。

 色々あって、お師匠様を見送って……そのまま本当の意味で飛んで帰って来ちゃった。

 ダラダラと嫌な汗が流れる。

 しかしコハナのことだ。

 土産がないと知ったらきっと怒り出す。

 最後の手段と持っていた物をコトリとテーブルに置いた。

 二人がその物に眉を寄せる。


「お酒? ですか?」

「……私、お酒飲まないわよ?」

「これはただのお酒じゃないの。魂が抜けたお酒よ」


 ますます二人の顔が歪む。


「あんた友達になんて物差し出すのよ!」


 どちらにしても怒られた。


「中身はあるようですが、魂が抜けたとは、どういう意味でしょうか?」


 マウノに尋ねられて事情を説明した。


「へぇ! そんなことになってたの!」

「まさか霊体と契約できるなんて、初めて知りました」

「二人とも返事が軽いけど、大変だったんだからね」

「こっちだって大変だったのよ! 作りかけの魔冷庫の作製、頑張ってたんだから!」


 それを言われては何も言い返せない。

 しかしマウノがつっこんでくれた。


「コハナさんは助手なのですから、頑張って当然だと思いますよ」


 コハナが押し黙る。

 さすがに申し訳なくなって、提案した。


「お詫びにスイーツを奢ってあげるから」


 するとコハナの目が輝く。

 中級魔塔士以上になると、食事とは別でメニュー表のスイーツの欄も注文できるようになる。

 食事ではないため、三回の無料制限には含まれず、一回目から給料から天引きされるのがネックだけど。

 三種類しかメニューのない魔塔士生はもちろん食べられず、中級魔塔士を経験したことがあるコハナには嬉しいことのようだ。


「マウノもお土産ないお詫びに、スイーツを奢ってあげる」

「ほんとですか!」


 マウノが嬉しそうに声をあげる。

 もちろん下級魔塔士のマウノも、スイーツメニューを食べたことはない。

 マウノって結構スイーツ好き?

 二人が浮かれた足でメニュー表を取りに行き、私の前に差し出す。

 そして二人が同時に指したのは……。


 巨大なパフェだった。


 私の今月のお給料、足りるかな?



 魔塔に戻った数日後。

 再度、私の使い魔を見つけるために、先輩とコハナ、マウノと一緒に精霊の森にやってきていた。

 できるなら先輩の鳥さんのように空が飛べる使い魔だといいな。

 先日の初飛行体験に思いを馳せる。


「しっかしまさかリュナの使い魔がキイラ女史だったとか、最強の使い魔じゃない。解放するなんてもったいないわよね」

「いつまでもお師匠様に頼ってばかりの情けない弟子ではいたくないの」

「キイラ女史が使い魔だったら怖いものなしでしょうけど、怖すぎて誰も近付いてこなくもなりそうですからね」


 確かに名前だけでも大変な騒ぎになる。

 二人には、『神の代行者』の話だけ伏せて、一連の出来事を説明している。

 先輩と相談して『神の代行者』の存在は危険すぎるため、二人を巻き込まないためにも黙っておこうという話になったのだ。


「それにしても、あんたの使い魔がどんななのか、今から楽しみだわ」


 コハナがニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる。


「私は別にコハナのねずみさんのような使い魔でも構わないけど?」

「だからねずみじゃないって何度言えば分かるのよ!」

「精霊の森に入ったんだから、静かにしてくれる?」


 先輩がコハナを窘める。


「贔屓だわ……」

「贔屓というか、あんたは本当にうるさいから」


 ハンカチを取り出したコハナが、憎々し気に噛みしめる。

 ペタペタ……。

 コハナが静かになると、奇妙な音が近付いてくるのに気付いた。

 ペタペタペタ……。

 その音が段々近付いてきて、私達は警戒する。

 すると木々の隙間から姿を見せた生き物に、全員の頭に同じ名称が浮かぶ。

 『? ペンギン?????』


「クワッ」


 ペンギンは私達を見て一鳴きする。

 姿形はペンギンに似ているが、鳴き声がペンギンらしくない。

 それよりももっと気になることがある。


「なんで森にペンギンがいるのよ」


 真っ先にその疑問を投げかけたのはコハナだった。

 さすが思っていることは口にしたいタイプだ。


「というか、本当にペンギンなのでしょうか?」


 鳴き声に引っかかりを覚えたマウノが、遠目でペンギンを観察する。

 戸惑う私達を余所に、ペンギンは体を左右に揺らしながら、ゆっくりとこちらに近付いてきた。


「精霊の森の生き物だから、危害は加えてこないと思うけど……」


 先輩も初めてのことなのか、自信なさそうな様子だ。

 ペンギンは私の前に立つと、平べったい手を差し出してきた。

 握手を求めているのだろうか?

 疑問に思いながらペンギンに手を伸ばす。


「リュナ!?」


 先輩が止めようとするも間に合わず、私の足元が光り魔法陣が浮かび上がった。

 そしてすぐに消えた。


「今のって?」


 見た事のある魔法陣だった。

 私以外の全員が絶句している。


「クワッ!」


 ペンギンが再び手を差し出してくる。

 どうすればいいのか戸惑っていると、先輩の使い魔が先輩の前に降り立った。


「そうなの?」


 使い魔と会話しているのか、先輩が相槌を打っている。

 そして私に顔を向けた。


「俺の使い魔は契約しても問題ないって言ってるけど、どうする?」

「あんた止めときなさいよ。どう見たってこのペンギン、空も飛べなきゃ隠密活動も出来ないわよ」

「でも一応鳥類ですし、ランクとしては高ランクにあたるのでしょうか?」

「鳥類だからってなんでも高ランクとは限らないでしょ! このペンギンなら、私のハムスターの方が全然役に立つわよ!」

「グワワッ!!」


 怒ったのかペンギンが両手を上下に振りながら、コハナを威嚇する。

 元々目つきが悪いので、怒っているのか表情からは判断できないけど。


「う~ん、可愛いし契約してもいいかな」

「これが可愛い? あんたの美的感覚を疑うわ……」

「コハナさん。どんな能力があるのか分からないのですから、これ以上ペンギンを怒らせると、あとが怖いですよ」


 マウノがコハナを注意する。


「よろしくね」


 ペンギンの固い手に触れて契約の魔術を唱える。

 するとペンギンの足元が光り、先程と同様にすぐに消えた。

 これで契約完了したのかな?

 疑問に思っていると、ペンギンは満足したのか私達に背中を向けてペタペタと元来た道を歩き出す。


「ちょっとあいつ、仕事しない気じゃないの!? 契約詐欺よ!」

「特に頼むこともないし、いいんじゃない?」


 森に帰るペンギンの後姿を見送る。

 一生懸命体を左右に揺らす歩き方が可愛い。


「自分から望んで使役されたいと来る使い魔は初めて見ましたけど、過去にもあったのですか?」


 マウノが先輩に尋ねる。


「俺が知る限りでも初めてだよ。誰だって人間に使われたいなんて思わないからね」

「リュナとなら契約してもサボれるとでも、考えてるんじゃないですか? こうなったらリュナ、じゃんじゃんこき使うのよ」

「コハナじゃあるまいし、そんな打算的な考えはないと思うよ」

「それはいえてるかもね。サボりたければ契約しなければいいだけの話だから」

「コハナさんはもう少し尽くす精神を持った方がいいですよ」

「どうして私の味方は一人もいないのよーーーーー!!」


 コハナの声が精霊の森に木霊する。

 お師匠様、みんなに囲まれて、私は今日も幸せです!





ここで一章完結となります。

いつも読んで下さっている皆様、ありがとうございます。

作者が面白ければPV0でもいいやと思って書いていたので、読んで下さっている読者様がいらっしゃるのを知って、勝手に仲間意識が芽生えています 笑

次から二章に入るのですが、ストックが少なくなってきており、投稿を休む日などが出てくる可能性もありますので、ご了承頂けると幸いです。

読んで頂き、ありがとうございます。

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