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魔塔士達の交響曲  作者: 神楽 棗
第一章 出会い編
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使い魔のランク

 コハナが酷使を選んだことでコハナは魔塔士生に降格、私が中級魔塔士に昇格となった。


「魔冷庫が完成するまでの間、コハナ魔塔士生はリュナ中級魔塔士の補佐役として作製に協力すること。それ以降は、コハナ魔塔士生の頑張りによって査定を行うことになるから。ただ今回の件もあるし、簡単にランクが上がるとは思わないでね。俺的には三年は魔塔士生のままでいてもらうつもりだから」

「……ケチ」

「減点」

「もう下がりきっているので、好きなだけ減点すればいいですよ」


 開き直ったコハナが先輩に楯突く。


「魔塔主様がわざわざ顔出しの激励をして下さったのに、減点ばかりされていたらガッカリされるだろうね」

「減点されないように、頑張ります!!」


 魔塔主の顔を見れたからか、さらにコハナのやる気がみなぎっている。

 コハナの中では、理想の男性像以上だったのかもしれない。


「こっちは片付いたから、使い魔について説明するね」


 やる気十分のコハナを放置して、先輩が私に向き直る。


「使い魔っていうのは、魔力を持つ者が一体だけ契約を結んで使役できる動物のことを指すんだ。契約を結んだ動物は、契約者の魔力を使用することで、あらゆる力を使えるようになる。例えばこのねずみ……」

「ねずみじゃなくて、ハムスターです!!」


 先輩は面倒くさそうな顔をしながら、コハナを無視する。


「この動物は自分の目や耳を通して、彼女に情報を送ることができるんだ。だからあんたのレポートから作製の過程まで、あらゆる情報を目や耳から直接送っていたってわけ」

「じゃあ大きい鳥と契約したら、空も飛べるってことですか!?」


 魔塔に来て最初に出会った大きな鳥を思い出す。

 あの鳥なら、私を掴んで空を飛んでくれるかも!


「相手が契約に同意してくれればね」

「契約してくれないこともあるんですか?」

「そりゃあ誰だって使役なんかされたくないからね。自分にとって契約してもいい相手かどうか、こちらは査定されるってわけ」


 ここでも査定されるのね。

 魔塔士って査定されてばかりの人生なんだ。


「だから魔塔士は自分の使い魔をあまり見せたがらない。使い魔がどういう能力を持っているか分かってしまうのもあるけれど、自分の使い魔ランクがどの程度なのかも知られてしまうからね」


 思わずねずみに目を向ける。


「私は恥じてないからね! この子は小回りも利くし、世情を知るにはうってつけなのよ!」


 しまったとコハナが口を塞ぐ。

 コハナが情報に詳しかったのって、このねずみのお陰だったのね!


「心配しなくても、知ってるから」

「知ってて泳がせてたんですか!?」

「見逃してあげていたことを、感謝して欲しいところなんだけど? 規制かけて欲しいの?」

「よっ! さすが魔塔士長! 器がデカいですね!!」


 凄い変わり身の早さだ。


「さっきも言った通り、使い魔は契約者の魔力によって能力が開花する。だから使い魔を見れば、契約者の魔力の程度も分かるってわけ」

「どうせ私は低魔力者ですよ」


 コハナが不貞腐れる。

 何も言ってないのに……。


「使い魔のことは分かりましたが、コハナが使い魔を悪いことに使ったことにあれほどみんなが怒ったのはなぜですか? 悪いことに使うことはもちろん駄目でしょうけど、使い魔を使うこと自体は問題ないんじゃないですか?」


 先輩に尋ねると、コハナが気まずそうに視線を逸らす。


「使い魔は精霊の森に住む動物なんだ。精霊の森は俺達魔塔士にとって、神聖な場所とされている。だからそこに住む動物に悪いことをさせるのは、神の冒涜とされているんだ」

「それであんなにみんな、怒っていたんですね」

「でも俺はどれが悪でどれが善かなんて、境目は曖昧なものだと思ってる。自分が善と思っていることでも人から見たら悪だったりするし、自分が悪だと思っていても、人によっては善だと受け取る場合もある。善悪の境界なんて人の匙加減一つなんだ。だからといって人の案を盗むために使い魔を使うのは、悪だとは思うけどね」


 先輩がギロリとコハナを睨む。

 コハナとねずみが身を縮こまらせる。

 善悪の受け取り方の違い……か。

 コハナやマウノを魔塔で受け入れるために動いた先輩だからこそ、感じることなのかもしれない。


「じゃあ使い魔と契約したければ、精霊の森に行けばいいということですね?」

「そういうこと。魔塔主様にも頼まれたし、明日でよければ一緒に行くよ」

「お願いします!」


 目を輝かせると、先輩の顔が緩む。

 その顔に一瞬見惚れるも、コハナの声で我に返る。


「私も行きたいです! 私はリュナの助手なので、付いて行く権利はあると思います!」

「一生幽閉ってこと、忘れたの?」

「幽閉されている者でも、たまには監視付きで外に出られるじゃないですか。それに私は今、魔塔主様の期待に応えるという使命を帯びています。魔塔から逃げ出すような馬鹿な真似はしませんよ」


 溜息を吐く先輩。

 自分だけの使い魔か……。

 私の胸はドキドキと不思議な高鳴りを感じていた。



 精霊の森に向かって、歩く一行。


「そんな話になっていたなんて、僕だけ仲間外れなんて酷いですよ」


 先輩の忘却の魔術に当てられて事情を知らなかったマウノが嘆く。


「ごめん、ごめん。だから今日は誘ってあげたでしょ」

「忘却の魔術にかかるなんて、まだまだ修行が足りないんじゃないの?」

「俺があんただけにはかからないようにかけただけなんだから、偉そうに言える立場じゃないよ」


 コハナが先輩の指摘に口を噤む。

 本来は魔塔から出ることが出来ないコハナも、先輩の同行と魔塔主の許可を得て、特別に精霊の森の往復のみの外出を許されたのだ。

 ただし先輩から一定の距離を離れたら爆発するという、恐ろしい魔導具の首輪付きだけど。


「ところでマウノも使い魔がいるの?」

「ええ、もちろんです。といっても僕も魔力が低いので、低ランクの使い魔ですけど」


 そう言うマウノの腕に、白い蛇が絡みつく。


「ギャア! 蛇!!」


 コハナが叫ぶと、蛇がシャーッとコハナを警戒する。


「もしかしてその蛇さんがマウノの使い魔?」

「はい」


 マウノが牙を剥き出しにする蛇を撫でる。


「僕の蛇やコハナさんのねずみなど、小動物は低ランクとされています」

「私の子は、ねずみじゃないから!」


 コハナがマウノに怒ると、落ち着いていた蛇が再び牙を剥く。


「せいぜいコハナさんの使い魔が、僕の使い魔に食べられないように気を付けて下さいね」


 時々マウノってダークな発言をするから怖い。


「高ランクになるとどんな動物になるの?」

「猫や鳥類のように知能が高い動物は、高ランクになりますね」


 鳥は高ランクなんだ……。

 空を飛ぶ夢は、夢で終わりそうだ。


「高ランクの使い魔なんて、昨日見た魔塔主様の猫くらいしか知らないわ」

「基本自分の使い魔を紹介することなど、ありませんからね。僕は気にしませんが、コハナさんのように気にされる方がほとんどですから」

「私だって気にしてないわよ!」

「じゃあ先輩も使い魔がいても、教えてくれないですよね」


 何気なく聞いたのだが、私よりも他の二人の方が興味津々で耳を傾けている。


「あんたは見た事あるはずだけど?」


 見た事ある?


「あんたが魔塔に来た事を教えてくれたのは、俺の使い魔だから」

「あっ! あのと……」


 鳥と言おうとして口を塞ぐ。

 二人も聞いているし、紹介することなどないってマウノも言っていたから、黙っていた方がいいよね。


「ちょっと! 二人だけの秘密ってずるくない!? 私達にも教えなさいよ!」


 コハナに掴みかかられる。


「でも、使い魔って紹介しないんだよね?」

「私達の使い魔だけ紹介させておいて、魔塔士長は内緒ってのは卑怯よ!」


 コハナは紹介されたというよりは、自業自得でしょ?

 私が困っていると、先輩が上を見上げる。

 するとバサリと大きな音とともに、見た事のある大きな鳥が太い枝に止まった。


「あれが俺の使い魔」


 二人が絶句する。

 それだけで高ランクの使い魔であることを察した。


「せいぜい二人の使い魔が、俺の使い魔に食べられないように気を付けてね」


 それを聞いて使い魔のランクを理解した。

 つまり使い魔ランクって、弱肉強食というわけなのね。





読んで頂き、ありがとうございます。

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