資格
数時間後、殲滅作戦が終わり、鉄妖を回収していると、数人の男たちが近づいてきた。
リーゼが、レオの前に出る。その手はサーベルの柄を握り、もう片方の手でレオの身体を守っている。
男たちは、おろおろと、お互いを見つめていたが、突然、全員が地面に頭を付け、「お願いします。我々にもその技術を貸していただけませんか?」
「何事だ」父が近づいて来て、男たちを見る。どうやら近隣の村の住民であるらしかった。
「我々の村もマガイの被害にあっていて……お願いします。その技術を貸していただけませんか?」
父親は苦い顔をし、「この技術は素人では扱うことはできない」
それでも男たちは下がらず、「基礎的なことだけで良いのです。お願いします」
臣下が父に耳打ちする。父は回収作業に戻り、
ディーデリヒは冷静に、「鉄妖の技術は王の許可がないと貸し出すことができないのです」
「そこを何とか!」
ディーデリヒは剣を抜き、「一度しか申しませんよ」
村人は歯噛みし、震えていた。しかし、ディーデリヒを見て、流石に諦めたのか、立ち上がり、疲れた顔をしながら帰っていく。
「鉄妖の力は許された者だけが使える力なのです」ディーデリヒがぽつりと言った。
それを聞いたレオの脳裏に、一つの疑問が浮かぶ。
力場式炸裂弾や、シモンの《祝福》。そして、それらを生み出す鉄妖の力場。余りに強大なその力。それらの使用者に課せられた法は、どのように決められ、どのように守られているのか?
ディーデリヒが言った、許された者、とは法を順守する者、という事だろうか。だとしたら、あの村人がそれかどうかは判断できないのではないか。
「彼らが法を破るかは分からない。まずは、渡せば良いのではないか」レオは小声で、ディーデリヒに言った。
ディーデリヒは虚を突かれ、「法を彼らが遵守し続けられるかどうか分かりませんゆえ」ディーデリヒはそれだけ言うと、回収作業に戻った。
じゃあ、我々は永久に法を順守し続けられるのだろうか?
レオは微かに苦い物を覚えた。