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黒の鉄腕よ、滾(たぎ)れ  作者: 賢河侑伊
第一部 移送編
8/35

資格

 数時間後、殲滅作戦が終わり、鉄妖を回収していると、数人の男たちが近づいてきた。


 リーゼが、レオの前に出る。その手はサーベルの柄を握り、もう片方の手でレオの身体を守っている。


 男たちは、おろおろと、お互いを見つめていたが、突然、全員が地面に頭を付け、「お願いします。我々にもその技術を貸していただけませんか?」


「何事だ」父が近づいて来て、男たちを見る。どうやら近隣の村の住民であるらしかった。


「我々の村もマガイの被害にあっていて……お願いします。その技術を貸していただけませんか?」


 父親は苦い顔をし、「この技術は素人では扱うことはできない」


 それでも男たちは下がらず、「基礎的なことだけで良いのです。お願いします」


 臣下ディーデリヒが父に耳打ちする。父は回収作業に戻り、


 ディーデリヒは冷静に、「鉄妖の技術は王の許可がないと貸し出すことができないのです」


「そこを何とか!」


 ディーデリヒは剣を抜き、「一度しか申しませんよ」


 村人は歯噛みし、震えていた。しかし、ディーデリヒを見て、流石に諦めたのか、立ち上がり、疲れた顔をしながら帰っていく。


「鉄妖の力は許された者だけが使える力なのです」ディーデリヒがぽつりと言った。


 それを聞いたレオの脳裏に、一つの疑問が浮かぶ。


 力場式炸裂弾や、シモンの《祝福》。そして、それらを生み出す鉄妖の力場。余りに強大なその力。それらの使用者に課せられた法は、どのように決められ、どのように守られているのか?


 ディーデリヒが言った、許された者、とは法を順守する者、という事だろうか。だとしたら、あの村人がそれかどうかは判断できないのではないか。


「彼らが法を破るかは分からない。まずは、渡せば良いのではないか」レオは小声で、ディーデリヒに言った。


 ディーデリヒは虚を突かれ、「法を彼らが遵守し続けられるかどうか分かりませんゆえ」ディーデリヒはそれだけ言うと、回収作業に戻った。


 じゃあ、我々は永久に法を順守し続けられるのだろうか?


 レオは微かに苦い物を覚えた。

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