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黒の鉄腕よ、滾(たぎ)れ  作者: 賢河侑伊
第一部 襲撃編
4/35

反撃ー1

 マガイ襲撃から1時間―オイレンブルク家の人々は城の居間で待機していた。


 どん、と扉が乱暴に叩かれ、その一部が割れる。マガイの鋭い棘が、にゅっと現れる。先ほど、シモンたちが向かった所とは逆の場所にもマガイが居るという事だ。


 はっ、と誰かが息を飲む声がし、皆が部屋の中心に集まる。


「まずいな」父は冷静に言い、レオとリーゼを見て、


「城の最深部まで行けるか?」


「どういうことです?」リーゼが訊く。


「俺達でここを食い止める。お前は、レオとシャルロッテ、母さんを頼む」


「ですが……」


「レオが居れば何とかなる」父が、レオを見て。言う。


「僕もここで……」


「駄目だ。ここで闘っても、死ぬだけだ」


 父は、息子の顔をまっすぐ見つめ、「頼んだぞ。強い騎士になるのだろう?」


「分かりました」レオは頷き、シャルロッテの手を引き、城の奥へと走り出す。リーゼが、レオの母の手を引く。


 城の奥、倉庫などがある場所に着く。雑多な物が置かれ、スペースは少ししかない。レオやリーゼが着るには大きすぎる鎧や盾、古い剣などが置いてあった。他は医療品や薬など。


「扉を絶対に開けてはなりません」リーゼが扉を閉めながら言う。


「リーゼ……」レオは微かに逡巡したが、扉を閉める。


「若様……」シャルロッテが、抱き付いてくる。


「大丈夫、きっと何とかなる」レオは言いながら、自身の手が震えていることに気づく。何か、使えるものはないか、そう探していた時、見えたのは、強く梱包された金属の箱。


 レオは、梱包を開け、微かに歯噛みする。そこには一体の鉄妖。


 鉄妖の力場は非常に強力な力である。しかし、その操作は難しく、力場を使いこなすには才能が必要だ。それこそ、レオがオイレンブルクの騎士―鉄器兵装を装備する―になるために足りない要素の一つだった。


 どん、と乱暴に扉が叩かれる。


「リーゼ!」母親が、扉を開けようとし、レオが止める。


「リーゼなら、最期まで戦うはずです」その言葉には、従者への強い信頼。


 レオは扉の前に立ち、抑える。まるで岩石が扉にタックルしているかのような衝撃。扉を叩く音は次第に大きくなり、鋭い棘が、扉を突き破る。


「ああ……」母親が座り込んでしまう。レオは、鉄妖を手に取り、箱に入っていた操作杖を手に取る。鉄妖が、ぐにゃり、と歪む。


 レオは、操作杖を一瞬、睨みつける。鉄で出来ている柄に、前後左右に動かせるスティックが取り付けられ、握る場所には、ボタンが一つ付いている。これは、誰でも鉄妖を扱う為の器械だ。ボタンを押せば、力場を起動し、鉄製の物を浮かせたり、高速で移動させることができる。スティックは方向を指示するためのものだ。


 レオは、置いてあった盾に、鉄妖の一部をちぎり、付ける。鉄妖は自身の一部が付着した物や、特定の匂いを判別し、それに対して力場を発動させる。


「浮け」そう言い、ボタンを人差し指で押すと、盾が浮かび上がる。レオは操作杖を指で弄り、盾を扉の前にやる。そして、扉を押さえつける。これで、何分かは持つだろう。


 しかし、盾も強引に押され、ぐらぐらと揺れ始める。


 レオは咄嗟に、身体の左側で、盾を押える。扉が破られ、どんどんと木屑が転がっていく。破壊された扉の向こうには、血を流して倒れているリーゼが見えた。


 助けないと、と思うが、今は自分を守ることすらままならないのだ。何とかしなければ、そう思い、剣を見るが、レオが振るには余りに大きい。


 ぱき、と嫌な音がした瞬間、レオの左手に激痛。


「ぐっ……」咄嗟に、後退する。腕から血が流れ、服が黒く染まっていく。

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