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黒の鉄腕よ、滾(たぎ)れ  作者: 賢河侑伊
第二部 調査編
25/35

暗躍

【1】


 レオは、アイメルト城の城門前に居た。リヒャルトから頼まれた任務がこれだ。


 巨大な城壁と、そこに囲まれた広大な敷地―まるでそこが一つの都市であるかのように、城を中心として騎士の詰め場や家があり、畑があり、武器屋があった。


 マガイが襲撃してきた際に、要塞として機能するように、こうなっているのだという。


 城の周辺は、あの特徴的な鉄仮面を被った衛兵たちが居た。


 レオは、衛兵に《呪い》のこと、そして、それが五年前から発生していることを説明する。


「これを行えたのは、ゼーフェリンク家とアイメルト家だけだ。何か知っていることがあれば説明して下さい!」レオは強引に城に入ろうとする。


「謁見は無理だ!」衛兵が、レオの前に立ちふさがる。暴行を加えないのは、オイレンブルク家の子息だからだろう。


「これは《代行者》の動きとも関連している、そんな気がするんです!」


「とにかく、ソフィア様には会えん」衛兵は、優しく肩を掴む。


 ―これで良いだろうか。レオは心の中で呟く。


 リヒャルトからの依頼は「予約もなしに謁見を申し込み、アイメルト家としては見逃せないワードを放った上で、派手に断られる」というもの。つまり、成功だ。


「どうしました」衛兵の後ろで高いが冷たい声がした。どうやら侍女の一人が騒ぎを聞きつけたようだ。質素なメイド服で、髪は団子。


 レオと同い年くらいの侍女は、衛兵から話を聞き、


「后様は体調を崩されています。それに事前連絡もなしに謁見など……」侍女は、レオを睨みつけた。


「城から今すぐ出て行ってください。街まで付いて行きます」侍女が言い、レオは渋々従う。


 レオは微かに委縮し、侍女の後に付いていく。


「《代行者》の攻撃の可能性があるのに、探偵ごっこ?」聞き覚えのある囁き声がし、レオはハッとする。囁き声の先は前を歩く侍女。


 聞き覚えのある甘ったるい高い声。


「お前……蕾か? なんで」レオは侍女の隣へ追いつき、その顔を見る。丸い童顔に、八重歯。派手なメイクを落としているせいか、まるで気づかなかった。


「警護兼世話係ってところ。レオたんこそ、なんで探偵ごっこなんか」


「それは……」


 蕾は鼻で笑うと、「まさか、あーしたちを疑ってるの?」


 猫を思わせる丸く鋭い瞳が、童顔の中でぎょろりと動く。


 レオはハッとする。長い間、一緒に居たからか友人のように思っていたが、敵になる可能性もある。


「まさか」レオは表情を崩さずに言い、


「アイメルト家きっての才女に、助言をしてもらうために来たんだけど……」


「事前連絡なしに后に謁見なんて出来る訳ないでしょ」蕾がため息をつき、


「さ、さ、帰った帰った。あーしらも暇じゃないんだから」そう言って、手を組み、だるそうに片手を振り、レオを遠ざけるような仕草をした。


 レオは大きくため息をつき、その場を去る。そして、リヒャルトと約束していた場所へ向かう。そこは高級な酒場だ。城から歩くこと数分、酒場にたどり着いた。


 瀟洒で洗練された建物が多い中、ここも落ち着いた酒場兼宿屋であり、静かに話すのに持ってこいだった。部屋の奥に、リヒャルトが居り、もう飲み始めていた。



【2】


 席に着き、冷えたエールを注文したレオに、リヒャルトはニヤニヤと笑いかける。


「派手にやって断られたみたいですね」


「うるさい、お前の指示だろ!」顔を紅潮させ、レオはエールを飲む。


「おっ結構、結構!」リヒャルトはお代わりを頼む。


 どんどんエールが無くなっていき、くだらない会話は盛り上がっていく。しかし、気づくと飲みすぎたのか気分が悪くなっていた。


「近くで休みましょう」リヒャルトに言われ、レオは近くの宿屋の一室に向かう。しかし、一向に着かない。


「ま、まだ?」レオは吐き気を堪え、訊く。


「もうそろそろです」そう言って、宿に入る。


「申し訳ない……」ベッドの横になるレオに、リヒャルトは水を渡す。


「私が飲ませすぎてしまいましたから」リヒャルトは微笑む。


 リヒャルトが虚空に向かって、「で、どうでした」


「数人が尾行してきました」影からリーゼが現れ、冷静に言う。


「ガオの報告に合った人物は?」リヒャルトが訊く。


「2人はそうでした。他は、別の物が尾行しています」


 レオは、水を飲みながら二人のやり取りを眺めていた。しかし、我に返り、


「僕をおとりにしたな……」


 リヒャルトは目を細め、微笑み、「そうです」


 レオは歯噛みした。のこのこと城まで行き、アイメルトの注目を浴びる。そうすれば、必ずアイメルトが刺客を放ち、尾行が行われる。その尾行者をガオが調べれば、彼らが盗賊団の一味かどうかが割れる。


「アイメルトと盗賊団のつながりを証明したかったのですが、これで明らかになりました。ほぼ確実に繋がっていますよ」


「ここまで飲ませることはなかったのでは」リーゼが、レオに毛布を掛けながら言う。


「相手に油断させなければならなかったんです」リヒャルトはそう言い、微笑む。


「助かりました。若」リヒャルトは目を細め、微笑む。


「これからどうするつもりだ?」レオは横になりながら訊く。


「アイメルト家内部にスパイを作ります。できれば、騎士団関係者の上層部が良いですね」


「情報は渡してくれるんだろうな?」リーゼが訊く。


「勿論ですよ」リヒャルトが微笑み、レオはそれを見て、がくりとうなだれた。


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