共闘
朝早く、レオは、ゼーフェリンク家の寮で訓練をしていた。
来たかった訳ではない。オイレンブルクの寮で、朝から父とディーデリヒが口論を始めていたからだ。
先日、アイメルト家に協力することを対価として、ここヴィンで、ゴレイヤ公国を待ち受けることとなった。その話が進んでから、父とディードリヒの仲はどんどん険悪になっている。原因を知りたいが、レオが顔を出すと、二人とも気まずそうに押し黙ってしまうのだ。
レオは、黙々とサンドバックを殴り続ける。
ふと後ろから低い声、「早いですね」
振り返ると、リヒャルトが居た。
「リヒャルトさん、一つ教えてください」レオは挨拶もせず、息を切らしながら訊く。
「リヒャルト、で良いですよ。で、なんでしょう?」
レオは息を吸い、「もし《第壱位階》が破壊されれば、この国の秩序は、再び元の状態の戻るのではないですか?」
「そうですね。それは否定できません。とは言え、もし《代行者》の破壊行為を止め、彼らを殲滅できたとしましょう。そして《第壱位階》を破壊する必要がなくなったとする。それでも私は破壊に賛成ですね」
「なぜです?」
「《第壱位階》を破壊しなければ、現王家がその力を独占することになります」
レオは王家ともども、オイレンブルク家にダメ出しをされたような気がし、「いけませんか?」
「人が持つには余りにも強大な力ですよ。力を独占した者が、正しい政治をやれるとは限らない」
レオは俯き、「僕はまだ信じたいんです。適性のある者に力が渡れば、正しく利用できる、と」
「私もそれは同じです。しかし、理想と現実は違う。現に《代行者》は御三家の内のどれかが支持していると言われている」
レオとリヒャルトは、お互いを睨みつけ、瞬時に目を逸らす。
リヒャルトは言葉を続け、「それに、今は適性があったとしても、未来永劫そうとは限らない。今では考えられませんが、《第壱位階》の管理が最も上手かったのは、あのアイメルト家なんですから」
レオは、少し呻いてしまう。その脳裏には、エーレンフリート・アイメルトの肖像画―アイメルト家で初めて《第壱位階》に相対した男。《第壱位階》を封じ込め、徹底した管理体制を敷き、平和を打ち立てた賢者。
レオは顔を上げ、「調査を手伝わせてください。その結末を見届けたい」
「分かりました。よろしくお願いいたします」
二人は静かにお互いを見据えた。




