第5話 同棲スタート
新居にはすぐにでも住めるようにしてもらっていたので、デート終わりで送ってくれると言った後輩を俺は新居の住所に案内してもらった。
新居には徒歩で充分行ける距離にあるのですぐにつき、それから俺は後輩を軽く家の中を案内した。
「親には絶対許可とってきます!」
そう言って後輩はダッシュで帰っていった。
大雑把に家具や家電はもう配置しているので、俺は今日で家具や食器などの細々とした荷物を整理するのを終わらせようと動き出す。
「親に話つけてきました!条件もつけられましたが全部許可はでました」
夜の大体の作業が終わった頃に後輩からそう連絡が来た。
早速明日の学校が終わった夕方から家に行きたいとのことだ。
後輩は大学にしっかり入ってちゃんと卒業するということを条件に許可をもらったらしい。
そして次の日の朝、さっそく動画投稿者として働こうと準備をすすめる。
午前から早速喫茶店の動画を編集し始めて8分ほどの動画にして今日の夜に予約投稿できるようにする。
俺はこの動画が伸びると確信している。
何故そう思うかというと前提としてこの世界は男が少ないので一夫多妻制が普通で、1人の男が5人以上の女性を妻にするというのが一般的である。
世界的にはそれが一般的なのだが、こと日本においては文化や歴史の影響で日本人女性は一人の男にだけ熱烈に愛されるというのに憧れがとても強く、一途な男というのがとてつもなく需要がある。
だが実際には一人だけを愛してくれるような男はそうそういないので、日本人女性は創作物で描かれる自分だけを愛してくれる理想の男で欲求を満たしている。
そんな背景があるので、こういう2人だけの恋人の動画はきっと需要があるだろう。
俺は普段ネットを活用するときに昔から面倒がないように自分を未婚女性ニートと偽っていろいろな情報を集めていたので、そういう女性の需要が男の割に分かっているつもりだ。
「少し時間が空いたし一人で動画撮ろうかな」
喫茶店の動画の編集やSNSや投稿するチャンネルをつくる事を午前中に終わらせ、軽くカップラーメンで腹を満たした俺は、キッチンでカメラを回し始め今日の晩ごはんの準備をする動画を撮る。
自分のためだけに料理するのはモチベーションが上がらないが、人に料理するのは好きでよく母につくっていたので料理は出来る方だ。
カメラを回し食材を出して料理をしていく。
「じゃあ料理していきます。鶏肉ときのこの炊き込みご飯と、具沢山うどんとサラダをつくろうと思っているので、下準備していきます」
俺は手慣れた様子で次々と食材を切っていき、炊飯器を予約してあとは火にかけるだけの状態にしてからカメラを一旦止める。
後輩にはできたてを食べてほしいのでこの動画はまた後輩が家に来てから回し始めることにして、今撮った動画を編集していく。
「先輩!来ましたよ!ただいま!」
そうしていると後輩が元気に荷物を沢山持ってやってくる。
今日から後輩はここに住むことになるので後輩はちょっとずつ実家から荷物をこちらに持ってくるつもりらしく、テキパキと俺が割り当てた後輩の部屋に荷物を持っていく。
後輩も来たし日が沈んでもう良い時間になってきたので、夕食の用意をするために俺はキッチンに行きカメラを回し始める。
動画を撮りながらうどんを火にかけ、炊き込みご飯とサラダを用意する。
「出来上がりです。これから後輩と一緒に食べたいと思います」
そう言って一旦動画を止める。
部屋で楽しそうに素っ頓狂な鼻歌を歌いながら荷物整理をしている後輩を呼んで夕食を一緒に食べる。
事前に夕食を食べる動画を撮ると言っていたので、後輩は少し緊張してきたのか不安そうな表情を浮かべる。
「じゃあカメラ回すよ」
「あー、緊張するなあ」
「自然体でいいよ。リラックスして」
そんな会話をしながら机にビデオカメラを固定してカメラを回し始める。
夕食を食べている自然な姿を動画に撮りたいので、特に動画を見る視聴者に向けての挨拶などはせずにぬるっと動画を撮り始める
「「いただきます」」
緊張しているのか後輩は固い表情でうどんから食べ始める。
「美味しいよ!はぁ~人生で男の手料理なんて一生食べれないと思ってたから今メチャクチャ幸せ!」
「そう、それはよかった」
そうして食べながら動画をとって緊張もほぐれてきたところで、後輩にあーんと言って炊き込みご飯を食べさしたり、頬をつついたりなどのいたずらしたりして照れまくっている後輩の反応を楽しむ。
「「ごちそうさまでした」」
そうして食べ終わったところで俺は提案をする。
「俺は次の動画でしたいことは決まってるんだけど後輩は何かしたいとかある?なんでもいいよ。それで二人でじゃんけんして勝った方の案を採用したいと思っているけど、どう?」
そういうとチャンスと思ったのかすぐに後輩は
「良いですね!じゃあ先輩が王子様の格好で私をお姫様だっこしていっぱい私の名前を呼んでくれるっていう動画がいいです!」
とニヤニヤしながら言う。
まさかひとつの案にこれだけの要素を詰め込んでくるとはなかなか姑息な手を使うなと思いながらも、俺は余裕の表情で答える。
「ふーん。言いたいことはあるけどまあ良いとしよう。ちなみに俺が勝ったら後輩と一緒に服を買いに行って二人でいろんな服を着る動画を撮るからね」
「先輩。確認しますけど本当に良いんですね?」
後輩が真剣な顔で聞いてくる。
「男に二言はない」
後輩はめちゃくちゃ気合いを入れた様子で、腕を顔の前にひねって組んで手をくっつける。
「先輩。私はこのじゃんけんに全てをかけます!」
ただのじゃんけんなのに後輩は全身に力をいれて謎の素振りまでしている。
後輩が準備ができたところで俺は掛け声をする。
「「じゃんけんぽん!」」
結果、俺がグー、後輩がチョキで俺の勝ちだ。
「いやまってまって!うちの国では3回勝負が常識だから!」
後輩は聞いたことのない謎の常識をすがるように出してくるが、まあ別に良いかと思い了承してもう一度掛け声する。
「「じゃんけんぽん!」」
結果は俺がパーで後輩がグー、俺の勝ちだ。
「あれ?2連続で勝っちゃったけど?」
後輩は諦めきれないのかなおも粘ろうとする。
「最後の1回は3勝扱いでお願いします。お願いお願い!一生のお願いです!」
そんな事を言うので今の後輩に負ける気がしなかった俺はなおも余裕の表情を浮かべる。
「じゃあ次で勝ったほうが勝ちで良いけど、そのかわりもし後輩が負けたら罰ゲームね。
じゃあ…モテようとして失敗したエピソードでも話してもらおうかな」
「勝てば良いんですよ勝てば。3回連続で負ける確率なんて相当低いから、次は絶対に勝てます!」
ここまで来たらもう確率は50%なんだよなぁと思いつつ、口には出さないで掛け声をしようとすると、
「待った!私のタイミングでじゃんけんをしたい!そうすれば絶対に勝てるから!」
と謎の必勝法を言いだしたので、俺は呆れた顔で後輩にタイミングは任せる。
「「………じゃんけんぽん!!!」」
俺はパー後輩はグー、俺の勝ちである。
後輩は流石に諦めたのか燃え尽きたようにうつろな目で語り始める。
「目を合わせて会話するとモテるって聞いて、試しに意識してやってみたら、男の人に『なんかキモいから目合わせないで』って言われました…」
そう悲しそうに語り始めたので、俺は後輩を抱き寄せ頭をなでながら、
「かわいそうに…よーしよしよし。大丈夫大丈夫。後輩は悪くない。悪くないぞ。あ、そろそろ終わります。ありがとうございました」
俺は軽く挨拶をして動画を終了する。
後輩は頭を撫でられている現状を終わらせたくないのか離れようとしないので、満足するまでなで続ける。
ある程度撫でられて満足した後輩は嬉しそうな様子で話し始める。
「先輩!後半カメラ回っていることを意識から抜けちゃってたんですが大丈夫でしたか?」
「うん。なんなら後半のほうが自然体で良かったよ」
そう言うと安心していた。こうして、今日撮る動画は終了した。
それからは後輩の勉強をみたり、一緒にストレッチなどをして過ごしていると、今日投稿される動画の時間となったので二人で一緒に見る。
チャンネル名
“先輩と後輩カップルの日常”
動画
“喫茶店でデートする先輩と後輩”
「先輩、ついに始まりましたね…なんだか私凄く嬉しいです!」
「そうだね、ここから一緒に頑張っていこう」
隣りにいる後輩の顔を見ていると、これからいろいろなことがあると思うがなんだか後輩とならどんな困難でもどうにかなると思えたのだった。
西野鈴音
【彼氏と同棲めちゃくちゃ楽しい!みんなも絶対彼氏と同棲したほうが良いよ!あっごめんね。みんなは彼氏いないよね…かわいそう…】