第3話 バッティングセンターデート
デート当日の日曜日、天気は快晴で絶好のデート日和だ。
後輩のデートプランではお昼の1時から近場で待ち合わせをして徒歩でデートに行って5時に帰るという予定でいきたいらしい。
「後輩はあきらかに気合いを入れてるような様子だったから、きっとデートを絶対成功させたいんだろうな。俺も後輩を他の男に取られるようなことだけはしたくないから徹底的に攻めますか」
俺は現時点で後輩と恋人になりたいと思っているし、将来的に仕事と恋人の両方で一生のパートナーとして暮らしていきたいと思っている。
このデートで俺はやりたいことがある。
それは恋人になるだけではなくて、将来の道を俺に賭けて一緒についてきて欲しいと交渉もしたいとも思っているので、成功率を少しでも上げるためになるべくかっこいい格好で決めたい。
デート内容も考慮して、服装をスポーティー風にしつつ襟がV字になったTシャツを着て鎖骨を見せることでこの世界の男にしては少しセクシーに見えるようにコーデし、眉を整え、髪をセットして準備をする。
持ち物にタオルや着替えや財布を持っていくのと、今日のために買った小さくて高性能なビデオカメラも持っていく。
待ち合わせ時間の5分前に待ち合わせ場所につくと、すでに後輩は待っていた。
「おまたせ。待った?」
「ううん、全然待ってないよ!」
「そう。じゃあ行こうか。手を繋いでいい?」
「うぇ!も、もちろんいいよ!」
後輩は手のひらをズボンでゴシゴシしながら遠慮がちに手を出す。
この世界の男は積極的に相手を求めるようなことはしないので、そんなことを言われるとは思っていなかったのか嬉しそうな様子で頬が赤く染まっている。
後輩の手を握ると俺の温かい手に後輩の冷たい手の体温が伝わって気持ちがいい。
今日はまだ少し肌寒いので、きっと待ち合わせ場所に早く来て長い間待っていてくれたから手が冷えたのだろう。
待っていてくれたことに感謝する気持ちを込めて俺は冷えた手を温めるように手に力を込める。
そうして手を繋ぎながら歩いていると彼女は嬉しそうな反応をしているので、畳み掛けるように俺は言う。
「私服初めて見たけど、すごい可愛いよ」
高校では制服と野球のユニフォームの彼女しか見たことがなかったが、上はピンクのスポーツウェアの上に一枚羽織って下は白のパンツを履いたような格好をしていて、後輩のスタイルの良さと相まって健康的で活発な感じが凄く似合っている。
「あ、ありがとうございます、先輩の格好もなんかエロい…じゃなくて!格好いいです!」
男にしては少し攻めた格好をしたおかげで、一瞬出た彼女の素直な反応的にも少し攻めて正解だった。
この世界の女性は男が少ない影響か性欲が強めなので、こういう格好は受けがいいと思っていた。
そして、他愛のないような会話をしながら手を繋いでいると俺の手の熱で彼女の手もどんどん温まって来たので、そろそろもっと攻めようかと思い今度は腕を組みに行く。
一気に密着度合いが上がったことで後輩はかなり興奮している様子があり、周りにいた一般女性も、
「えっ、男があんなことするんだ。彼女うらやましい!」
などとザワザワと聞こえてくる。
そうしていると後輩はなぜか表情を取り繕おうとして、全然嬉しくないよ、普通の事ですよ、とでもいうような表情をしようとするが、全く取り繕えずに鼻の穴が大きくなってフンフンと激しめの鼻息をしている。
そんなこんなをしていると近所のバッティングセンターにすぐに付いた。
店に入ると一旦腕を離して受付でチケットを買う。
後輩は名残惜しそうな顔をするが、よく行きなれた場所を案内したいのかずんずんと歩いていって打つところやバットの場所の説明してくれる。
「私はいつもここでやってるから最初は見てて!」
楽しそうに後輩はバットを持っていき、綺麗なフォームでどんどん打っていく。
130キロがでるマシンのところに入っていき、20球で1セットと設定されている中で18球打ち上げた後輩はおおむね満足そうだ。
「めちゃくちゃ上手いね!フォームもキレイだったしかっこよかったよ。」
「そう、えへへっ、凄いでしょ!」
後輩は運動して体の余計な力がぬけてきたのか、リラックスした様子で屈託のない笑顔で返事をする。
「じゃあバットの持ち方と、打ち方を教えてあげるね」
彼女に基本を教えてもらいながらまずは素振りをしていく。
教えているうちに後輩はチャンスと思ったのか、必要以上に密着してきたり筋肉をなぞるように触ったりと、セクハラまがいのことをどんどん積極的にやってくる。
きっと俺が攻めた行動と格好をしたのが効いてきたから後輩も乗ってきたのだろう。
気づいてないフリもできるが少し意地悪がしたくなり、
「後輩はむっつりだね。でも俺は優しいからもっと触ってもいいよ。」
と言うと、後輩は面白いように慌てていた。
そんなやり取りをしつつも、要領がいい俺はわりとすぐ形になったのでバッティングをしにいく。
後輩には最初は100キロくらいがいいとおすすめされたが俺は最初から130キロのマシンのところに入り、最初の5球で感覚をつかんで少しずつ調整しながら打っていくことで後半にはそこそこ飛ばせただろう。
それからは、交互にバッティングしたり、休憩しながら雑談したりで良い雰囲気になってきたところで、前からしようと思っていた考えを提案をする。
「次の20球でどっちがいっぱい打てるか勝負しよう。」
「いいよ、でも私野球部だから絶対に負けないよ」
「ほう…そんなに自信があるなら負けた方が勝った方に一つだけなんでも言うことを聞く。っていうのはどう?」
「じゅるり…う、うん。いいよ。のぞむところだよ!」
普通なら経験者に初心者は勝てないだろうが、俺には勝算があった。
順番は俺の要望で先行にしてもらう。
勝算はあるが万が一にも負けるつもりもないので、全力でやりきった結果20球中14球打ち上げて後輩と代わる。
15球なら勝てないことはないと思っているのか後輩の顔は緩んでいる。
でも俺は後輩に負けるのはなんとなく癪に触るし、そもそも負けず嫌いなのでなんとしても勝ちに行く。
後輩の番になると、俺は少しだけ大きな声で
「ふぅーあついなあ。1枚ぬぐかぁ」
とわざとらしい声で後輩に聞かせるように言う。
そう、俺の作戦は誘惑による妨害である。
こんなわざとらしい誘惑でもむっつりスケベな後輩なら引っかかるとは思っていたが、思ったより効果があるようで球が来ているのにも関わらず彼女はずっとこっちを見ていて、見送る結果となった。
その後も投げキッスやウインクをしたり、お腹をちらっと見せたりと思いつく限りの軽い誘惑をやりまくり後輩の妨害をした。
そうした結果、後輩は20球中6球しか打ち返せなかったので俺の圧勝だ。
「ちょっと!妨害はズルいよ!ノーカン!ノーカン!」
そんなこと喚いているがお構いなしに俺は、
「勝ちは勝ちだから何か言うことを聞いてもらおうかなぁ」
と意味深に笑みを作る。
後輩は不安そうにしているが、もう後輩にやってもらいたいことは決まっていた。
「じゃあ2人でラブラブな写真をとって、その写真をSNSにあげて周りに自慢しまくってほしい」
「え?そんなことでいいんですか?そんなのこっちが嬉しいだけですけど?」
後輩は軽いお願いだと思っているみたいだが、俺は後輩に将来的にもずっとこういうことをして周りの女性から羨望と妬みの視線を集めてほしいと思っている。
なんでこんなことをして欲しいかはこの後の喫茶店で話すと言い、とりあえず了承した後輩と超密着した距離で2人の写真を自撮りしてからバッティングセンターをあとにする。
喫茶店に向かいながら俺は後輩に話しかける。
「ちなみに後輩が勝ったら何をお願いしようとしてたの?」
「それは先輩に後輩じゃなくて鈴音って名前で呼んでほしいってお願いしようとしてました。」
「なんか最初はいやらしい表情していたから、いやらしいお願いされると思ってたよ。
じゃあ次もなにかの勝負に勝ったら呼んであげるね」
「ああ!先輩今絶対勝てないだろうけどなっていうような表情した!絶対先輩のことを負かして私のこと名前で呼ばしますからね!」
うん、ずっと後輩って呼び続けてやろう。
西野鈴音
写真付き
【先輩と密着してラブラブな写真をとったよ!
彼氏いないお前らに幸せのおすそわけしてあげる私優しいなぁ!】