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第26話 温泉旅行

 今日は以前から予定していた旅行の日で、金曜日の夕方から土曜日日曜日と2泊3日で旅行する。


 事前に後輩の実家にクイーンを預けているのであとは後輩の帰りを待つだけだ。


「ただいま!先輩帰りました!さっそく行きましょう!」


「よし。早速駅まで行こう」


 今日は夕方に温泉宿に着いて、そこでのんびり過ごす予定だ。本格的に遊ぶのは明日以降になるが、旅館でおいしい晩ごはんを食べ、温泉にも入れるので楽しみだ。


 駅につき、特急列車に乗り2人で隣り合って座る。


「とりあえずあと2時間もあれば旅館の最寄り駅に着くらしいよ」


「楽しみですね!そうだ。お菓子いっぱい買ってきましたよ!食べませんか?」


「いいね!あ、でも旅館についてちょっとしたらすぐ夕食だから今は食べるのを控えようかな」


「ええ~夕食まで3時間はありますよ?それだけあれば消化してくれるでしょ!だから私はちょっとだけ食べちゃいます!」


 そんな話をしているとあっという間に旅館の最寄りについた。ここから歩いて5分くらいの距離に旅館がある。


「旅館の場所は覚えてきたんで案内は任せて下さい!」


 後輩が胸を叩いて俺を先導するように歩く。


「なんかいつもより後輩が頼りになるね」


「初旅行ですからね!なんとしても楽しい思い出にしたいんですよ!」


「そんなに気負わなくても後輩とならなにかトラブルがあっても楽しめるでしょ」


 後輩は俺の言葉に安心したのか少し肩の力を抜いた。


「あ、先輩!見えてきましたよ!ここが今日泊まる旅館です!」


「おお!なんかいかにも温泉宿っぽさがあって良いね」


 2人で旅館に入りチェックインする。女将さんに案内されながら食事の時間などの希望を言い、部屋の前で軽く説明をしてから女将さんは退出した。


「結構広い部屋ですね!畳のいい香りがします!」


「そうだね。安かった割にかなりいい部屋だね」


 後輩は好奇心の赴くままに部屋を物色してどこに何があるのかをチェックしている。


「じゃあ浴衣に着替えようか」


「先輩!浴衣の着方が分かりません!」


 後輩は女将に浴衣の着方は分かりますといっていたので説明はなかったのだが、本当は知らなかったようだ。何故わざわざ女将の説明を断ったんだろうか。


「先輩は浴衣の着方が分かるって言っていましたよね?先輩!私に着せて下さい!」


 なるほど。後輩は俺に浴衣を着せてほしかっただけか。可愛いこと言ってくれるな。


 俺は後輩に浴衣を着せる。後輩が嬉しそうにしているので最後に腰紐をグッと力いっぱい結んで意地悪する。


「うぐっ。ちょ、ちょっと先輩!キツイです!口から何らかの臓器が出ちゃいます!」


「ごめんごめん。後輩が可愛いから意地悪したくなっちゃった」


「謝るんならお詫びに私も先輩の浴衣を着せたいです!」


「じゃあお願いしようかな」


 後輩に浴衣を着せてもらう。部屋に入って少しテンションが上っているからか、こんなやり取りでもいつもより楽しく感じるな。


「じゃあ着替えたことだし夕食までゆっくりしようか」


「そうですね。夕食までそんなに時間もないですし軽く動画でも撮って時間を潰しますか」


 部屋の雰囲気や浴衣姿などを動画に撮っているとすぐに夕食の時間になったので会場へ歩いていく。


「おお!部屋に入った瞬間からもういい匂いがしてますよ!楽しみですね!」


 テーブルにはすでにカニ鍋の用意がされていて、茹でる用のカニだけではなく、かに味噌や蒸したカニも置いてある。カニはいくらでもおかわりしていいらしい。


「先輩!カニ鍋ですよ!今日お昼にお弁当を抜いたのはこの夕食のためですよ!」


「お菓子は食べたのに?」


「あっ……あれはノーカウントです!」


 後輩は少し恥ずかしがりながらも目の前のカニ鍋に夢中のようだ。


「「いただきます」」


 後輩は待ちきれないといった様子で茹でたカニをポン酢につけて食べていく。


「うん!美味しいです!意外とカニって優しい味がしますよね」


「確かに。見た目だけならごついし虫みたいだしね」


 そう言いながらも美味しいことはすでに知っているので、俺も茹でたカニを食べる。ああ、やっぱりカニは美味いな。蟹の足に事前に切れ込みを入れてあるお陰で食べやすい。


 次は2人でカニ味噌も食べてみる。


「私、かに味噌は初めて食べます!ホントにこんなグロい見た目の食べ物が美味しいんでしょうか………おいしい!意外と臭みも少ないんですね!もしかしたら私はカニよりも好きかもしれません!」


 後輩はおそるおそるカニ味噌を食べたのだがかなり気にいったようだ。


 俺はカニ味噌を食べる時にやってみたい食べ方があったのでいい機会だと思い試してみる。


「うん。抜群に美味い!後輩も試しに茹でたカニの身をかに味噌に入れて食べてみてほしい」


「じゅるり…想像するだけで美味しそうですね。では食べてみますね……ああ…幸せの味がしますね…」


 後輩はとろけたような表情を浮かべる。


 その後も俺たちはメインでカニを食べつつ他のしいたけや白菜などの具材も美味しく食べていった。


「「・・・・・・」」


 カニを食べることに熱中しすぎてお互い無言になる。まあこれはどうしてもカニを剥く作業に集中してしまうので仕方がないことだ。おしゃべりな後輩ですら静かになる程カニというのは魅力的なのだろう。


「ふぅ。俺はもう満足かな。しめのためにこれ以上は食べないことにする。カニ雑炊楽しみだなあ」


「しめは雑炊ですか!私、鍋の1番好きな所はしめかも知れません!」


 後輩が満足いくまで食べ終わったところで米をもらい、俺は雑炊を作っていく。


 カニ雑炊というのは卵とネギと少しのカニの身が入っているだけのシンプルな料理なのに、何故こんなにも食べる前に期待感があるのだろうか。


「凄く美味しい…カニからいい出汁が出てるからかな」


「お腹はいっぱいなのに美味しくて食べる手が止まりません!」


 確かに俺もかなりお腹はいっぱいなのだがもう少し食べたいと思ってしまう。うーん、せっかくだしもう少し食べようか。


「「ごちそうさまでした」」


「はあ…ちょっと食べすぎました…もう一生カニは食べなくていいかもです…」


「ああ、俺も食べ過ぎた…ちょっと休憩しよう」


 食べすぎたので部屋に帰り少し休む。部屋にはすでに布団がひいてくれているのが今はありがたい。


 後輩は着物の帯を緩めた状態で布団の上で寝転んでいるので俺も同じようにする。


「少し休憩してから温泉に行こうか」


「良いですね!私温泉大好きなんですよ!」


 1時間ほどダラダラと布団の上で過ごし、満腹感もマシになってきた。


「そろそろ温泉に行きますか」


「ですね。ここの温泉は美容にも良いらしいですよ!先輩がこれ以上かっこよくなったら私おかしくなってしまうかもです」


「温泉入ったくらいじゃそんなに変わらないでしょ」


 そうしてこの旅館の温泉に向かい、男湯と女湯の前で別れる。


「じゃあ1時間後に部屋で集合しましょうか」


「おっけー」


 男湯に入るとどうやら今入っている人は少ないようなので、広々と温泉に入ることができて快適そうだ。


 脱衣所で服を脱いで温泉内を軽く見渡す。


 ここには2種類の温度の違う温泉と小さいサウナと水風呂があるようだ。


 まずは体を洗っていく。備え付きのシャンプーとボディソープが置いてあるので惜しみなく使って洗う。家だともったいなくて適量しか使わないのだが、こういうところだと多めに使ってしまう。


「ふぅ…いい湯だな…」


 お風呂は少し熱めのお湯が好きなので、ここの少し熱いくらいの温泉が気持ちいい。


 この濁ったお湯の成分のおかげか、少し入っただけでお肌がツルツルになっていることが分かる。


 温泉にゆっくり浸かり、サウナや水風呂も充分に堪能した。疲れが抜けたのか体が少し軽い気がする。


 ふと脱衣所の入り口を見ると、小さな冷蔵庫に瓶のコーヒー牛乳が売っていたので思わず買ってしまう。これは部屋で飲もう。


 部屋に帰るとすでに後輩が先に帰っており、飲んだ後の牛乳瓶が机に置いてあった。どうやら後輩もコーヒー牛乳を買っていたようだ。風呂上がりのコーヒー牛乳はやたらとおいしいからなあ。


「おおお!湯上がりの先輩色気がやばいです!危険です!」


「後輩もいつもより色っぽいよ」


 後輩はいつも可愛いがより可愛く見える。髪が少し濡れている様子や、温まってほんのり顔が赤くなっている姿が俺の情欲をそそる。これが温泉効果か。


 俺は思わず温泉効果でもちっとしている後輩のほっぺをツンとつつく。近づくといつもと違う後輩の香りがしてドキドキする。後輩も心なしか目がトロンとしてきた。


 このまま部屋で後輩とイチャイチャしていたくなるが、まだ行くところがあるので意識して気を取り直す。


「先輩、このまま部屋で休憩しちゃうというのはどうでしょう」

 

 後輩が俺に甘えるようにそう言ってくる。うーんでもなぁ。もうちょっと観光したい気分なんだよなぁ。


「それもいいかと思ったけどせっかくなら予定通りに外湯に行かない?」


「外湯で混浴しに行く予定でしたけど、こんな色っぽい状態の先輩を混浴なんかに入れたら危険です!流石に守りきれません!」


「まあ行ってみようよ。俺も後輩と一緒に温泉に入りたいし。混浴でも湯浴み着は着るし日本は治安良いし大丈夫でしょ」


「甘いですよ!いくら治安が良くても今の先輩が混浴に入るなんて空腹の狼の群れに肉の塊を放り込むようなものですよ!今回は絶対にダメです。本当は私も先輩と一緒に温泉入りたかったんですけどね…」


「後輩がそこまで言うならやめるか。また今度貸し切り温泉がある所で一緒に入ろうか」


「うはあ!先輩と一緒に温泉楽しみです!じゃあ今回はお部屋で休憩するということで…」


「いや、せっかくだし少しここらをダラダラ歩こう。観光地だから夜もライトアップされていて綺麗だしね」


「ええ~まあそれも楽しそうですけど…」


 後輩も未練タラタラな様子だが一応納得はしたようだ。


 温泉で温まった体を夜風で冷ましながら2人で歩く。景色がいいので歩くだけでも楽しいのに途中で昔ながらのお土産屋があったり、無料で入れる足湯があったりと魅力的な所がいっぱいある。


 軽く歩き疲れるくらい散策したところで夜も遅くなってきたので旅館に帰り、布団の中で寝る準備をする。


 今日はずっと楽しかったのでまだ少し気分が高揚している。うーん…これはすぐには寝られそうにないな。もう少しだけ布団の中で隣の後輩と喋っていたい気分だ。


「後輩。俺は今開放的な気分だから何してもいいよ」


 俺が小声でそう言うと後輩は俺の布団の中に入って来てキスをしてきた。俺からキスすることが多いので後輩からの不意打ちのキスに俺はいつもより少しドキドキした。


「えへへ…ついしたくなってやっちゃいました…」


 恥ずかしそうにしている後輩がとても可愛いので俺も軽く後輩にキスを返す。


 それからは後輩と布団の中で手を繋ぎながらしばらくおしゃべりしていたが、だんだん眠くなってきてしまっていつの間にか俺は眠りに落ちていた。



 西野鈴音

【カニも温泉もとっても良かった!でも1番良かったのは温泉に入った直後の先輩かな!】


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