表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

第16話 フリスビー

誤字脱字報告ありがとうございます。

 いつもクイーンの散歩は朝と夜の2回、1時間ほど行っている。


 朝の散歩は後輩と2人で行き、夜の散歩は俺1人で行くのが我が家の習慣だ。


 今日も早朝から2人でクイーンに散歩をしようと言うと、散歩が大好きなクイーンは大喜びで玄関までダッシュして扉前でピタッと座って待っている。


 クイーンは元気盛りでエネルギーが有り余っているので、いつも朝の散歩は一緒に走っていてある程度疲れてきたら歩くというのを交互にして運動量を確保しているのだが、今日はなかなか走らない俺たちをクイーンは不思議そうな目でみてくる。


 そういうのも今日は普段の散歩とは違い大きな公園でクイーンを全力で遊ばせようと思っているので、そこでいっぱい遊べるようにゆっくり歩いて体力を温存させている。


「じゃーん!クイーン、これなんだと思う?」


 公園につくと後輩は昨日ふと学校帰りに雑貨屋に寄って買ってきたフリスビーをクイーンに見せつける。


 クイーンはフリスビーがなにかは分かっていないようだが、なにか面白そうなものを出してきたという認識はありそうで少ししっぽをゆらゆらと振っている。


「クイーン!取ってこい!あ!」


 後輩はフリスビーを投げるが手を離すタイミングが遅れて変な方向に飛んでいってしまった。


 クイーンも何してんだこいつというような目で後輩をみている。


「まずは投げる練習をしようか」


 俺たち2人は距離を取ってお互いに向かってキャッチボールをするようにフリスビーを投げ合う。


 クイーンは飛ぶフリスビーを見て、目で追ったりその場でくるくる回ったりとそわそわしだした。


 クイーンのテンションがどんどん上っていきフリスビーを追いかけるようになったので、俺はクイーンに取ってこいと投げてみるとクイーンは全力疾走で走って取りに行った。


 クイーンはフリスビーに追いついてキャッチしようとするが失敗して地面に落としてしまう。


 クイーンは上手くキャッチ出来なかったことなど関係なしに落ちたフリスビーを咥えて俺の方に持ってきて嬉しそうにしっぽを振る。


 そんな楽しそうな姿を見せられると俺も嬉しくなってしまい、クイーンを全力で撫でながらいっぱい褒める。


 褒められたクイーンはもっと大きくブンブンとしっぽを振り、凄く楽しかったようでもう1回投げてというようなキラキラとした目で俺を見てくる。


 普段は賢くて大人っぽいクイーンでもこういう時は本能の赴くまま楽しんでいるのを見ると、公園に連れてきて良かったとしみじみと思う。


「じゃあもう1回行くよ。クイーン取ってこい!」


 俺がもう1度投げるとクイーンは全力で取りに行き、大きくジャンプして見事空中でキャッチし、俺に嬉しそうに持ってきてくれる。


 俺が持ってきていたおやつを少しあげて褒めまくるとクイーンは大喜びで食べて、まだまだ遊び足りないからフリスビーを投げてと弾みながら催促される。


「先輩!私も投げたいです!」


 後輩がそう言うのでフリスビーを渡す。後輩がフリスビーを持つとクイーンは俺が投げる時とは違い、仕方ないから取りに行ってあげるというような態度を見せる。


「なんですかその顔は!先輩の時と全然態度が違うじゃないですか!まあいいです。じゃあ投げます!クイーン取ってこい!」


 後輩がいざ投げるとクイーンはなんだかんだノリノリで取りに行く。


 今回も見事空中キャッチし、クイーンは何故か投げた後輩の方ではなく俺の方に戻ってくる。


「ちょっと!投げたのは私ですよ!なんで先輩に持っていくんですか!」


 クイーンが俺の方に持ってきて褒められたそうにしているので一応撫でながら褒める。


 このあとも後輩は何度か投げてみたが、キャッチしたフリスビーは全部俺に持ってきた。


 そろそろ俺もフリスビーを投げたくなってきたが後輩もまだ投げたそうにしているので俺はクイーンが持ってきたフリスビーを持って遠くに走り、後輩へ向かって投げる。


 そうするとクイーンはフリスビーと並走するように走り、後輩がそれをキャッチして再度空へ投げるとクイーンは全力で走って取りに行き、キャッチすると俺の方に走って持ってくる。


 そうやって俺から後輩、後輩からクイーン、クイーンから俺と回っていくように投げて遊ぶ。


 何回かそれを続けていると、突然後輩はフリスビーを持った状態でニヤリと笑い投げた振りをする。


「ふふ。クイーン取ってこい!」


 クイーンは取ってこようとするもフリスビーを見つけられず、困惑して後輩の方を見ると騙された事に気づき、前足で穴をほって抗議する。


「ごめんごめん!じゃあ投げるよ!クイーン取ってこい!」


 そう言って普通に投げるも、怒ったクイーンは後輩が投げても走らなくなった。


 後輩は謝りながらクイーンのご機嫌を直そうとしだしたので、いいタイミングだと思いちょっと休憩をとる。


 公園の水を持ってきていたお皿に入れてクイーンにあげると、クイーンはいっぱい走ったからかガブガブと勢いよく飲む。


 俺と後輩がベンチでまったりしていると、クイーンが俺の前に座り上目遣いで見てきた。


 このポーズをする時はブラッシングをして欲しい時だ。


 クイーンがよくするおねだりは3種類ある。撫でて欲しい時は俺の横にべったり座り、遊んで欲しい時は前足で俺の足をカリカリとして、ブラッシングをして欲しい時は今のように俺の前に座って上目遣いで見てくる。


 他にも寂しくなっていたずらをしてしまった時はお腹を出して反省のポーズをするが、まだうちに来てから1回しかそれは見たことがない。


 クイーンは強めのブラッシングが好みなので、俺は持ってきたブラシで強めにブラッシングをすると、クイーンはリラックスした状態で気持ちよさそうにのんびり座っている。


 出てきた大量の抜け毛をゴミ袋にいれどんどんブラッシングをしていくと、クイーンは満足したのか今度は俺の足をカリカリとしてアピールしだした。これは遊びたい時のおねだりだ。


「先輩!私も先輩が投げたフリスビーを取りたいです!」


 後輩がそう言うので、俺が投げたフリスビーを競争して取り合うことになった。


 俺はなるべくいい勝負になるようにふわりと浮かせていい感じに投げる。


 1度目は後輩が高いところでキャッチして後輩は俺の方に持ってくる。


 持ってきた後輩を撫でながら褒めると後輩は嬉しそうにする。それをみて普段あまり吠えないクイーンが珍しく吠えて悔しそうにしている。


 もう一度投げると、今度はクイーンが今までより高くジャンプして空中キャッチした。


 クイーンが俺に持ってくると俺はクイーンを撫でながら褒める。それをみた後輩も悔しそうに地団駄を踏んでいる。


 いや、後輩までそんなに熱くならなくても…とも思ったが悔しそうな顔が見ていて楽しいので口には出さない。


 両者まだまだ投げて欲しそうなのでどんどん投げていく。


 一進一退を繰り返していたが、何投か投げると後輩が先に体力がつきた。


 後輩は息を整えながらその場に座っているが、クイーンはまだまだ投げてほしそうだ。


「やば!もうこんな時間だ!先輩帰りましょう!」


 後輩は休憩しながら時計を確認し慌てている。


 時間を忘れて熱中しすぎたせいで後輩が学校に行くまでの時間があまりないので、俺と後輩はクイーンを連れてダッシュで家に帰る。


 うん。クイーンも少しだけ遊び足りなそうにしていたしまた今度たっぷり時間を取って心ゆくまで投げてあげよう。


 家に帰ると後輩は慌ただしく学校へ行く用意をし、クイーンはいっぱい走って疲れたのか自分のケージの中で丸まって座っている。


 バタバタと用意をしている後輩をクイーンは慌ただしいなあというような表情で横目に見ながら優雅にくつろいでいた。



 西野鈴音

【今日は犬の気持ちがわかった!フリスビーをキャッチして先輩に持っていくと撫でながら褒めてくれるから凄い楽しい!そりゃクイーンも楽しそうにするわけだ。】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ