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第15話 テレビゲーム

 後輩は野球部の引退試合が終わりいつもより自由に出来る時間が増えたので最近はのびのびとしていた。


 後輩の高校の野球部のレベルは中の中くらいで、運悪く早くから強豪校とあたってしまい1-5で負けてしまったらしい。


 だが後輩はその試合の1回表の1番目に人生初の先頭打者ホームランを決めて唯一の1点をもぎ取った張本人だ。


 後輩が言うには思いっきり転がしてやろうと振ったら思いの外飛んだだけらしいが、最初にデカいのを決められた相手はかなり警戒度を上げ、気合いを入れ直したらしい。


 そんな事があったので後輩は引退試合で格上相手にかました女として野球部内で伝説になっている。


 そんなちょっとした伝説扱いされている後輩はリビングでくつろぎながら野球のゲームをしていて、プロの選手に混じり自分の名前をつけたキャラクターでバンバン打って無双して楽しんでいる。


 うん、コントローラーが汚れないように箸でポテトチップスを食べながらダラっとした体勢でゲームをしている後輩が伝説扱いされているとは全く想像できないな。


「あ、先輩!対戦ゲームを借りてきたので一緒にゲームやりましょう!」


 そうだな、クイーンも遊び疲れて寝ているしたまには後輩とゲームをするのもいいかもしれないな。


 後輩が借りてきたのはたくさんのミニゲームで遊んで勝敗を決めるパーティゲームで勝利数の多い方が勝ちのシンプルなルールだ。


「じゃあ最初なので小手調べとして3ゲームで遊びましょう!」


 ふむ、なるほど。色々なゲームの中からランダムでゲームが選択されるようで、3ゲームで遊ぶということは2回勝てばいいのか。


 後輩も初めてやるゲームらしく、軽く説明書を読んで操作方法の説明をしてくれる。


 最初に選ばれたのは格闘ゲーム。お互いがキャラクターを選んで先に相手を画面外に2回ふっとばした方の勝ちで、何度もダメージをくらうとどんどんふっとばされやすくなっていく仕組みのようだ。


 まずは操作方法を確認しつつ探り探りで戦う。


 そうするとお互い戦っている間に自分のキャラがどんな事が得意か分かってくる。


「先輩のキャラはスピードタイプで、私はパワータイプのようですね」


 後輩はどんどんパワーの高い大技を仕掛けてくるのが厄介だ。


 スピードを生かしてどんどん攻撃していくが、後輩が何度も仕掛けてくる大技の1つにあたってしまい一撃で場外に吹っ飛ばされてしまう。


「おやぁ?ちょっと私が強すぎちゃいました?手加減してあげましょうか?」


 キャラクターを素早く上下に動かして高速で屈伸しながらここぞとばかりに煽ってくる後輩に俺は少しムキになって攻めようとする。


 だが、少し冷静になって考えてみると勝つ事はそんなに難しくないことに気づき、一度距離を取ってからヒットアンドアウェイ戦法で後輩を追い詰める。


「言うほどにもないな。もうそのキャラ見切っちゃった。俺がわざわざ責めなくても大技の隙をつくだけで勝てるじゃん」


「ちょっと!卑怯ですよ!」


 俺は素早い動きを生かしてちまちまと攻撃して逃げるのを繰り返し、ついに後輩のキャラクターを1度場外にふっとばしたので、エモートボタンを押してキャラクターに決めポーズをさせる。


 後輩は俺のキャラクターの決めポーズをみて悔しそうに歯ぎしりしている。


 そこからもずっとちまちまと攻め続けて後輩を追い詰めていくと、不利を悟った後輩はある策を仕掛けてきた。


「先輩!もう少しで倒せますよ!ほらこっちに来て下さい!」


 後輩は自ら危険な画面端ギリギリの場所に行き、そこから動かず俺を待つ。


 おそらく俺を攻めてこさせたところを捕まえて投げ技で倒そうとしているのだろう。


「背水の陣作戦です!先輩は自分から攻撃するのは怖いですか?」


 言われなくてもチャンスなのは間違いないので俺は思い切って攻めに行く。


 後から考えるとここで熱くなってしまったのがいけなかったのだろう。


 俺は正面からではなく後輩の裏をかくためにジャンプして空中から攻める。


「スピードタイプなのに空中に行くとは失敗しましたね!」


 後輩は空中からの攻撃を見事にガードし、その隙に投げ技を決めてきて俺のキャラを場外にふっとばしこのゲームは後輩の勝利となった。


「まずは1勝!あと1勝すれば私の勝ちです!」


 悔しいがすぐに次のミニゲームが始まったので切り替える。


 2戦目に選択されたのはレースゲームだ。カートに乗ってどちらが先にゴールへ着くかのレースで、コースの道中にはアイテムが有りそれを上手く使えば妨害したりスピードを上げたり出来る。


 お互いスタートダッシュを決め序盤はどちらも競り合う。


 一進一退を繰り広げながら最初のコーナーでデットヒートを繰り広げ、インをついた俺が少し前を走る。


 後輩は少し後ろでべったりとくっついてきている。


 俺はアイテムを拾いに行き、妨害アイテムの泥団子が出たので後輩に向かって投げる。


 上手く当てて後輩は一時的に前が見えなくなったので俺はその間に後輩を引き離す。


「お疲れ!先に行くね」


「ぐぬぬ!すぐ追いつきますよ!」


 後輩は泥を払って前が見えてからも急ごうとしてコースアウトしてしまう。これだけ差が開けば追いつけないだろう。


 そうして俺は最短距離でコースを走っているともうすぐゴールかと思った矢先に後輩がすごいスピードで追い上げてきた。


 どうやら下位でしか出ないアイテムの一定時間スピード2倍を引いたようだ。


「ふふふ。このスピードならゴールまでに追いつきます!」


 やばいと思い俺もアイテムを引きに行き、もう一度泥団子が出たので投げる。


「甘いですよ!私に同じ手が通用すると思わないで下さい!」


 後輩は無敵になれるアイテムをここまで持ってきていたようで、泥団子に対抗するように使ってきた。


 妨害が失敗しもう何も出来ることはないので最短距離を走るが、後輩に最後の最後で無敵を利用したショートカットで追い抜かされて逆転ゴールされる。


「よし!私の2勝です!あれれ先輩?もう2勝して勝ちが決まっちゃいましたね!」


 後輩が煽ってきて悔しいので、もう俺の勝利は無いがなんとしてでも一矢報いたい。


 最後に選ばれたのはいわゆる運ゲーといわれるようなものだ。ルールは順番にサイコロを3回振って出た目の合計が多い方の勝ちだ。


 なんとしてでも勝ちたい俺はルール説明の制限時間5秒以内にサイコロを振らないと出目が0扱いとなるというのを読んでピンとくる。


 まず俺が1投目に3を出す。次の後輩の番になり、俺は後輩を後ろから抱きついて耳元で甘い声でお願いする。


「ねえ。一回だけサイコロを振らないで。お願い」


「うええ!だ、だめですよ…」


 俺は後輩を妨害して時間切れ狙う。後輩はもじもじとして言葉では抵抗しつつもボタンは押せず、1投目は時間切れで0になった


 これで勝てると思った俺は安心してサイコロを振るが俺の2投目は1、後輩の2投目は5だった。


「あれれ?先輩!1投しか投げてない私にも勝てないんですか?」


 後輩は俺を下から見上げるように煽ってくるが次に良い出目が出れば全然勝てると思い直す。


 俺は3投目を振ると2が出た。俺の合計は6、まだ1投残している後輩は現時点で5、投げられると絶対に負けてしまう。


 よし。妨害しよう。出目を出した瞬間に俺はそう考え少し後輩から離れて手を広げて俺は後輩を誘う。


「ほらこっちにおいで。ぎゅっとしてあげる」


「…まあ今回だけ負けてもゲームには結局勝てますし乗ってあげます」


 強がりつつもノリノリで後輩がやってきたのでぎゅっとしてあげて結局後輩の3投目も0となった。


 後輩は画面も見ずに俺の胸の感触を感じてニヤニヤしている。


 最後に結果発表で俺に1点後輩に2点と表示され俺の負けで終わると思ったが、突然何かが始まるような音がなり響き、ボーナスタイムというのが始まりだした。


「えっ、ボーナスタイム?なんですかこれ?」


 後輩は俺の腕に中から離れて画面を見る。どうやら最後に今までやってきたゲームの中でランダムな項目から選ばれる条件に近い方に2点点数が入るらしい。


 今回は“総ダメージ量“と表示され、最初の対戦ゲームで与えた総ダメージが多い方に2点のボーナスポイントが入る事となる。


 最初のゲームでちまちまと攻撃していた俺は与えたダメージも多かったので、俺にボーナスポイントが入り点数が3点になり3-2で俺の逆転勝利だ。


「ちょっと!こんなの聞いてないですよ!これなら最後のゲームでちゃんとやればよかったです!次は5ゲームでもう一回やりましょう!」


 まだまだやっていない銃撃戦や早押しクイズ、アクションゲームなどのミニゲームがいっぱい残っているので、今日は心ゆくまで後輩とゲームをした。


 西野鈴音

【今日は先輩とゲーム!先輩はゲームだと結構熱くなってくれるから煽ると良い反応をしてくれる。でもしっかり仕返しをしてくるので煽る際にはやりすぎないように気をつけましょう】

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