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第9話 夜の散歩

 今日は事務作業や編集作業が妙に忙しくて頭が疲れていたので、なにかリラックス出来るようなことをしようと思い立ち、ふと頭に浮かんだのが散歩だったので試しにやってみようと後輩を誘って夜の散歩に行ってみることにした。


 2人でゆっくり歩きながらせっかくだからとこのあたりの有名な散歩コースへ歩いていく。


「先輩、今日は月が綺麗に見えますよ!」


 俺は空を見上げると、今日は昼頃まで雨が降っていたおかげか空気が澄んでいて満月がくっきりと綺麗に見える。


 今日散歩に行こうと思ったのは偶然だが絶好の散歩日和で運が良かった。


 少し歩くと散歩コースの川沿いに着き、ダイエット目的で大きく手を振りながら散歩しているおばさんや、大型犬の散歩をしているお姉さんや景色を楽しみながらただのんびり歩いているおばあちゃんなど様々な人が散歩している。


 川沿いを2人で並んで景色を楽しみながら歩く。


「あんまり散歩なんてしたことなかったですけど、意外と楽しいですね!」


「そうだね。良い景色の場所を歩きながら喋るのがこんなにリラックス出来るとは知らなかったよ。後輩を誘って良かった。」


「また誘って下さいね!」


 俺は後輩が楽しんでいるのにつられてどんどん楽しくなってきていた。


「先輩!ちょっと歩いたからか少し小腹が空いてきました!」


「確かに。じゃあコンビニでなにか買って少し先の公園で食べようか」


「賛成です!」


 後輩はお腹を擦りながら少し恥ずかしそうにしているが、俺も少し小腹が空いてきたので好都合だ。


 コンビニで各々好きなものを買って、公園へ歩きながら2人で雑談していると、高校であった出来事について会話が弾んでいく。


「先輩!私達の動画の影響で今高校が面白いことになってるんですよ」


「面白いことって?」


「いろいろありましたよ。例えば先輩関係でいえば先輩の人気が爆上がりしたことで元々先輩が在学中に座ってた席を女子たちが取り合ったり、今まで人気のあった男子から人が離れていってプライドが高い男子たちがイライラしていたりしてます!あとは先輩が私に勉強を教える動画をちょくちょくだしていますけど、それを皆が見たせいで動画になった一部分だけやたらと皆が理解出来てたりするので動画の影響はかなりデカいです!」


「なんか混沌としてて面白そうだね。そんなに影響があるなら後輩も動画出し始めてから周りからの扱い変わったんじゃない?」


「めちゃくちゃ変わりました!今まではわりと雑に扱われてたんですけど、最近は女子生徒から崇められたりすることがあります!自分が偉くなったような気がして嬉しいです!」


「ええ、後輩を崇めてる人がいるの?」


 俺は後輩が神様扱いされている絵を想像して少しニヤける。


「なんか私のことを超ラッキーガールと思ってるのかご利益を求めて手を合わせられたりするんですよね。あとは先輩のことを根掘り葉掘り聞かれたり、なんとか先輩と接点を持とうと私にお願いしてきたり、ひどい時は女子が私の手を握ったり抱きついたりしてきて間接的に先輩を感じようとしてきたりするんですよ!」


「おお、じゃあ男からの反応もなにか変わった?」


「男からの扱いはあまり変わらないですけど、1回だけ学校の男子から『お前はあんまり好みじゃないが優しい俺はお前を恋人の1人にしてやる。あんな男と付き合うよりはマシだろう』みたいな勘違い男に告白のようなものをされたりしました!」


「ふぅん…なんかムカついたから今度“男の痛い告白ランキング”って動画を出してそのセリフそっくりそのまま1位にしてやろう」


「良いですね!さすがにあの告白はされても不快でしたから私も動画でボロクソに言ってやりたいです!」


 その動画を見た男の顔を想像すると笑いがこみ上げてくる。


 そんなことを話していると公園についたので、ベンチに座ってお互いの買ってきたものを少しずつ分け合いながら食べる。


 後輩はホットスナックとおにぎりとサンドイッチ、俺はお茶と肉まんを買っていた。


「夕食も食べたのによくそれだけ食えるね」


「コンビニの食べ物ってあんまりお腹に溜まらないので無限に食えます!」


「後輩の食べてる姿俺は好きだよ。コメントでも後輩がお茶碗いっぱいのご飯を食べるところを見てて気持ちいいってよく言われてる」


「私は普通に食べてるだけなんですけどねぇ…」


 後輩は心底不思議そうだ。


「コメントで思い出したけどこんな動画投稿始めたらもっとアンチが増えると思ったけど、想定してたよりかなり少ない気がする。」


「ああ、それはアンチはやっぱり一定数いるんですけど、動画投稿をやめて欲しくない女子達が結託して攻撃的なコメントを通報しまくって消していってるそうです。ちなみに高校でも私になんとしても動画投稿を続けさせたくて女子たちが結託して自主的に悪意のある人から守ってもらっています!」


 後輩が平和に学校生活を送れるのは良いことだが、コメントが消されているのは予想外だった。


「変なコメント消されてるのか…それは俺にしたらちょっと残念かも。」


「何で変なコメントが消されて嫌なんですか?不快なコメントが消えるのは良いことじゃないですか」


 後輩は不思議そうな声色で俺に聞いてくる。


「俺はコメントを見て優越感に浸りたいんだよ。元々動画投稿者になったのは俺が何でも出来る所を見せて俺より出来ない人より精神的に優位に立ちたいっていう欲望がきっかけの1つだから、悔しがるコメントとか嫉妬のコメントこそ見たいんだよね」


「おおう、先輩なかなかいい性格してますね…でも私は先輩にそういう欲があって良かったと思ってますよ!だって何でも出来る男の人はめちゃくちゃかっこいいって私初めて知りましたから!あ、そうだ、先輩これ見て下さい!」


 後輩はスマホを開きメッセージをやり取りしている画面を見せてくる。


「これ私の家族のグループRINEです。そういうヤバい人が見たいならうちの家族がおすすめです!うちの次女と母が私に彼氏ができてからよく発狂してるので、先輩ならこんなやり取りを面白く感じるはずです!」


 メッセージを見ていくと、後輩の母が後輩を羨ましすぎて土下座をするような勢いで下手に出てなんとか俺と接点を持とうとお願いしまくっていたり、次女が後輩を妬ましがって動画が上がるたびに発狂したりしているやり取りを見る。


「うちの家族仲は良好だったんで先輩との2ショット写真とか気軽に自慢してたら母と次女が発狂しちゃいました!うちの母はいい年して少女漫画とかの激甘物語が大好きで、次女は私を下に見ていた節があったので私がいい男と付き合ったのが効いたみたいです!」


 俺はそんな話を聞きつつ愉快な後輩の家族のやり取りを見て笑ってしまう。


 確かに暴力的な言葉やあまりにも情けなくなるような交渉などをしているが、このやり取りを見るだけで容易に賑やかそうで明るい家庭を想像できてしまうので、俺は後輩の家族に好印象をもった。


 コンビニで買ってきた軽食を食べ終わり、散歩のおかげですっかりリラックスできて俺は気分もいい感じに上がってきた。


「せっかくだからちょっとだけ公園の遊具で遊んでいこう」


 突然の提案に驚く後輩の手を引っ張って少し強引に遊具に連れて行く。


 夜なので全く人がおらず遊具が遊び放題だ。


 まずは鉄棒に後輩を連れて来て、小学校のときによくやっていた逆上がりが今でも出来るかを2人で試してみる。


 結果は俺はなんとか一回で出来たが、後輩は少し苦戦して数回やってから成功させる。


「体が大きくなってから逆上がりするの妙に難しいな」


「そうですね!小学生の時は余裕で逆上がり出来たのに今やってみるとすぐには出来ないものですね」


 次はシーソーに後輩を連れていき、息を合わせて交互に上下させて遊ぶ。


「シーソー意外と楽しいな」


「そうですね!シーソーは高校生がやっても普通に楽しい神ゲーです!」


 次にジャングルジムだけで鬼ごっこをして遊ぶ。


「後輩妙にジャングルジムでの移動が速いな」


「もしかして私にはジャングルジムの才能があったのかもしれません!」


 そんなことをして遊んでいるといい感じに疲れたので、隣り合って置いてある2つのブランコに座り休憩する。


 最初は驚いていた後輩だが、遊んでるうちにどんどん気分が乗ってきたようで楽しげな表情で息を整えている。


「童心に帰ったようで楽しかったです!」


「今度もっと大きい公園で2人で遊ぶ動画撮りたいな」


「良いですね!いままでそういうデート動画は凄い再生されてますから私達も楽しめて一石二鳥ですよ!」


 後輩は息を整え終え、今度はブランコを漕いで楽しそうにしている。


「私は先輩と一緒ならどんな動画でも撮っていて楽しいです!私と恋人になってくれて本当にありがとうございます!」


 ブランコを漕ぎながら後輩は大きい声で叫ぶように言う。


「ふふ、どういたしまして。でも急にどうしたの?」


「なんか言いたくなったんです!」


 単純なことに俺は嬉しくなって自然と微笑んでいた。


「先輩!帰る前にブランコから靴をどっちがより遠く飛ばせるか勝負しましょう!」


 後輩がそう言うので、俺は勢いよくブランコを漕いで思い切り足を振り上げ、そこそこの距離に靴を飛ばした。


 次に後輩は負けじと靴を飛ばそうとしたが、斜めに大きく飛ばしてしまって全然距離を稼げなかった。


「先輩!まだ負けていませんよ!だってもう片方の足にまだ飛ばせる靴がありますからね!」


 後輩は俺が止めるまもなくもう片方の靴も飛ばす。


 結果は俺が飛ばした靴よりギリギリ手前に落ちたので俺の勝ちだ。


 後輩は悔しがりながらも両足の靴を飛ばしてしまったのでブランコから降りられずに困っている。


 俺に助けを求めてきたので、少し意地悪して反応を充分に楽しんでから後輩に靴を渡してブランコから降りて帰宅した。



 西野鈴音

【月明かりに照らされた先輩がかっこよすぎて攫いそうになったけど同棲してることを思い出してなんとか耐えた!】

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