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初討伐

 木々が薙ぎ倒され、地面が抉られる轟音が近づいてくる。


 だが、不思議と恐怖は感じない。難なく対応できる気しかしない。


 眼前の木が倒れて視界が開け、黒い大猿が姿を現した。


 何やら大声で吼えているが、別に驚かない。亡者の声を何人分も聞かされてきたので、耳が慣れているのだろうか。


 俺が大猿を見据えると、相手はぎょっとして狼狽えたように見えた。


 ステータスを見ると、霊力:50/499。大したことないな。ビビられて当然か。


 とはいえ筋力では向こうが大きく勝る。油断はできない。


視認不可能な速さで剛腕が飛んでくるが、無意識の動作で避けた。


 紙一重だったが、なぜだか避けられたことが当然のように感じる。昔から当たり前のようにできていた芸当のように思えた。


 これも、レギアさんに俺の中の霊力を活性化してもらったからだろうか?


 俺は近くに落ちていた木の枝を掴み、構える。剣の類いはほとんど握ったことがない。よって実家からも剣は買い与えられていないからだ。


 だが、さっき流れ込んできた知識のおかげか、木の枝が長年使い込んできた馴染みの武器のように感じられた。


 俺はゆっくり息を吸い込み、枝を横に薙ぐ。


 「剣技【グローム】」


 なんの魔力も纏っていない弱い一撃が、相手の脇腹に当たる。避けるまでもないと判断されたのだろう。簡単に命中した。


 だが、大猿の全身を衝撃が駆け巡るのが分かった。手応え十分だ。


 魔物は白目を剥いて昏倒した。


 「これが……霊力による攻撃ですか」


 「そうだ。これこそが肉体を破壊せず、魂に直接作用する力。生き物にも通用すると、分かってもらえたか?」


 レギアさんは得意気だ。


 「はい、そして、もう少しできる気がします!」


 「? なんのことだ?」


 俺は、木の枝を聖剣に見立て、魔力を集束させる。


 やはりか。


 レギアさんから聖剣の扱い方に関する記憶も受け継いだことで、聖剣にしか宿らないはずの能力も使える。


 それこそ魔力集束。


 これなら物理的ダメージも与えられる。


 俺は木の枝を思い切り縦に振り抜こうとしたが、できなかった。


 木の枝は既に、高負荷に耐えきれず霧消していた。


 「さすがだな。ここまで技を盗まれるとは思っていなかった。だが、まだお前には早いようだ」


 レギアさんにそう諭されると、急に強い疲労感に襲われ、俺の意識は遠のいていった。

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