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実家追放

「アルバレス家の次男ともあろう者が、情けない。今日でお前は追放だ」


 俺ことヴェルデ・アルバレスは、父親から無慈悲な宣告を受けていた。


「待ってください、父上。私は雑用でもなんでも……」


「お前に何のスキルも備わっていないことは確認済みだ。存在が家の恥なのだ」


 15歳になると神殿で行われる『鑑定の儀』。そこで、どんなスキルを持っているのか、神官に鑑定してもらうのだ。覚醒しているか否かは別として、誰しもが何らかのスキルを持っている。


 俺には何もないようだが。


「潔く出て行け。これ以上見苦しい姿を見せるようなら、ここで叩き斬る!」


 父上は剣まで抜いた。


 実の息子に対する態度とは思えない。


 結局この世はスキルが全て。俺のような落ちこぼれに居場所などないのだ。


「ですが、これから私はどうやって生きていけば……」


「野垂れ死ぬしか無かろう。それが嫌なら、冒険者登録でもするんだな。もっとも、お前のような無能を雇うギルドがあるかどうか……」


 無論、生まれつき魔力もなく、剣の鍛錬もしてこなかった俺が冒険者としてやっていけるわけがない。


 なにせ、そんな修練を積む暇がないほど『忙しかった』のだから。


「くっ、では……今までお世話になりました」


「その前に、アルバレスの名を捨てると誓え。お前のような恥晒しがいては我が公爵家の名が廃る」


「分かりました。二度と名乗りません」


 俺は唇を噛み締め、絞り出す。


「待て。ヴェルデ」


 振り返ると、長兄のイベールが立っていた。


「せめてもの情けだ。ここで殺してやる。お前の惨めな人生など、俺は見たくない。アルバレスの一員であるうちに、誇り高く死にたいとは思わないか?」


「それも……そうですね」


 もうこの先、生きていても何の希望もない。いっそここで殺してもらった方がいい。


 俺にとって、死は身近だったしな。


「スキル【アルテマカノン】」


 龍脈から膨大な魔力を吸い上げ、砲弾のようにして射出するレアスキルだ。これで殺してもらえるだけ、ありがたいと言ったところか。


 魔力が瞬時に集束し、深紅の閃光が奔った。


 だが次の瞬間、アルテマカノンはあさっての方向に逸れた。


 代わりに、遥か向こうのシグロ山脈が大きく削り取られた。


 おかしい。


 俺は何もしていない。したことと言えば、あまりに眩しいので、手で目を覆ったくらいだ。


 イベールがしくじったのか?


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