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露天風呂(3)



ルビが………無い、だと…………!?





「んむっ!?」



目尻に涙を浮かべながら顔を上げたイナリの口をキスして塞いだ。

文面だけ見ればずいぶんとご大層な言い様だが、実際はムードもへったくれもない突然のキス。

傍から見れば完全にキス魔なだけで、通報されても文句は言えないであろう行動である。



しかし、俺がそんな事をやってのけたのには、もちろんちゃんとした理由がある─────────────と良かったね、うん。

………………そう、なんとあろう事かここまでの行動、言い方は悪いが深い理由なんてほとんど無い。


ただイナリがとても悲しそうな顔で俯くのを横目に見て、居てもたってもいられなくなった。

何か、イナリを元気付けられる事はないか。


あまりにも突然の出来事でテンパっていた俺は、そこでなぜか「あ、そう言えばキスの件まだだったな…………イナリ喜んでくれそう」と瞬時に考え、即座に実行。

だから本来言うべき気の利いた言葉なんて何も用意してないし、もう既にこの後どうしようか迷いに迷っている。

完全にやらかした。

冷や汗ダラッダラである。


………………まぁ、そんなのどうでも良いか。

超至近距離で目を閉じ、幸せそうな表情で唇を合わせるイナリを見ているとそう思えた。

先程までびっくりして目を見開いていたイナリだったが、もう今はふにゃりと顔を緩ませて、キスに応じている。


結果オーライ、かな?

あとは俺が勇気を出すだけだ。

イナリにあんな顔をさせた原因は間違いなく俺にある。

…………………さて、そろそろ名残惜しいけど離れないとな。



心の中で決心し、ゆっくりイナリの唇から離れて──────────(ガシッ!!)




「ん!?ちょ、イナrんむぅっ!?」




とろんとした瞳が俺を捉えた途端、何を思ったのか突如として俺の顔をがっしり両手で掴み、そのまま再度キスをした。

しかも相当ディープな。

あまりの素早さに俺は抵抗する間もない。



「んっ、んちゅ………あむっ……れろ」



イナリはここぞとばかりにその人外の馬鹿力に物言わせ、両手で頭を抱え込み、両足を腰に回してホールドすると。

完全に固定された俺に対してなんの遠慮も容赦もなしで口内に舌を侵入させ、思いのままに蹂躙する。

温泉の際なので背後に逃げ場は無い。

仮に立ち上がったとしても余裕でしがみついて離れないだろう。


結果、俺はただ水面をバシバシ叩いて虚しく助けを求めることしか出来なかった。



「ぷはぁっ!…………もう、ちゅーしたいなら初めからそう言ってくださいよぉ!私はいつでもウェルカムですから………!」



もはやあの時の悲しそうな気配は身を潜め、いつも通りの残念さが戻って来たのは大変喜ばしい事なのだが。


目にハートを浮かべ、完全に理性メーターが振り切ったイナリは決して逃がすものかと俺の体をしっかりホールドし、無我夢中で俺の唇と口内を貪りまくる。

非常に幸せそうで何よりだ。


しかし、対する俺は何度も何度も繰り返されるディープなキッスと、理性のぶっ飛んだイナリがぎゅうぎゅう押し付けてくる双丘や裸体のおかげで色んな意味で瀕死状態。

そろそろ本気で意識が薄れてきた。


まずい、今気絶したらイナリに何されるか分かったもんじゃないぞ……………!

霞む視界の中、助けを求めるように月に向かって震える片手を上げる。



「ダメじゃないですかご主人様、私から目を離したら。……………んふふ、こっちは素直ですねぇ」


「…………ハッ!?」



やっとこさ離れたイナリが、ぺろりと艶めかしく唇を舐めて欲情した笑みで俺を見下ろす。

その視線はチラチラと俺の下腹部に向けられていた。


そこには俺の心情を著しく表したモノが。

加えてこの体勢、おそらくイナリが少し動いただけでも容易に行為に発展するだろう。

その事実を目の当たりにし、不覚にも俺の愚息が反応。


イナリが「あはっ………!」と悦びの声を上げる。



「………………だ、だれかぁ!!たすけ───────んむっ!?」

「んちゅ………ダメですよぉ、ご主人様。今日こそ私を食べてもらうんですから…………」



どちらかと言うと俺が食べられる側では?なんてツッコミを入れる余裕は無い。

完全に飢えた獣と化したイナリは、俺の返事を聞くのさえ待ち遠しいと腰を少しだけ持ち上げる。



「待ってイナリ、こういうのはもっと雰囲気とか────────!」

「嫌ですぅ♡それに、雰囲気ならもう十分なくらいありますよぉ」


「それって、どんな?」


「ふふっ、よくぞ聞いてくれました───────ってあれ?」

「ん?」



突然聞こえてきた第三者の声に、俺と同じくイナリも目をぱちくりさせて見つめ合う。

今ので若干理性が戻ったらしいイナリが、反射的に顔を上げたその瞬間。



「成敗」

「あぶふっ!?」



端的なセリフと共に飛んできたのはまさかのドロップキック。

両足がイナリの顔面にめり込み、奇怪な悲鳴を上げながら切り揉みしてドボンッ!と湯船の中に落下した。




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