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いつまでも残念キツネじゃない






『グルアアアアアアッ!!』


「ひゃわっ!?ほっ!?ふえっ!?わわっ!?」



ドスドス振り下ろされる爪攻撃に合わせて、リズミカルな短い悲鳴と共にひらひら身を躱すイナリ。

この悲鳴からすると一見ギリギリで避けていそうな感じだが、実際はそんな事なく、普通に余裕を持って避けれている。

動き自体は悪くない。

本気で反撃すれば強化されたドラゴンゾンビとはいえ、そう時間はかからず倒すことが出来るだろう。


ただ問題はあのイナリのビビり症というか、へっぴり腰な所だ。

先程は普通にドラゴンゾンビと戦えていたので大丈夫かと思っていたが、敵が強化された途端逃げ回り始めた。

自分じゃ(かな)わないとでも思っているのだろうか。

攻撃体勢に入るだけで形勢は簡単に逆転するのになぁ……………。

ま、戦闘は無理強いするようなものではないし、戦えないならどうとか言うつもりも全くないが。


それにイナリは圧倒的に実戦経験が足りないのだ。

戦闘に対して引け腰なのも無理はない。

むしろ普通にドラゴンゾンビと戦えていたのがすごい。



「…………さて、そろそろ手伝いに───────」

「主、待って。イナリなら大丈夫」



助太刀に行こうとしていると、ずっとイナリを見つめていたクロに引き止められた。

最初はまた先程のノリの延長戦かと思いきや、どうやら少し違うらしい。


(いわ)く、イナリもいつまでも残念キツネじゃないんだそうで。


それに応えるように、ずっと逃げっぱなしだったイナリがキュッ、と靴底を滑らして振り返り、腹を括ったような表情で右手を思いっきり引き絞る。



「えぇい、女は度胸!こいつを倒して、ご主人様からご褒美のなでなでをしてもらうんですぅ!」



「とりゃあああ!!」という可愛い気合いとは裏腹に、全く可愛くない威力の拳が迫るドラゴンゾンビの拳と激しくぶつかり合い、周囲に衝撃波を()き散らす。



押し勝ったのは当然イナリ。



ボキボキッ!と腕ごと粉砕し、能力が底上げされたはずのドラゴンゾンビを軽々と吹っ飛ばした。



『ギヤアアアアスッ!!?』


「ぬああっ!?」



背を折り曲げ宙を舞ったドラゴンゾンビが、水晶片手に右往左往していたワルーダの上に容赦なく落下した。

太っていて逃げ遅れたワルーダは問答無用でぺちゃんこだろう。


おおぅ、あんな巨体にのしかかられたらひとたまりもないな。

少しワルーダが可哀想に思えた。

が、拳を突き出した状態で動かなかったイナリがへたり込んだのを視界の端で(とら)え、俺はすぐさまイナリの元に向かった。



「…………あ、ご主人様………」

「お疲れさん。最後の一発は良かったぞ、イナリ」



どうやら気が抜けて足腰に力が入らなくなってしまったらしいイナリを、ひょいと抱え上げてお姫様抱っこする。

クロの言った通り、いつまでも残念キツネじゃなかった。

最後の最後で勇気を振り絞り、自らドラゴンゾンビに立ち向かって行った。

その勇気は、今後のイナリを大きく変えるだろう。



「えへへ………!ご主人様。私、頑張りました!」

「だな。よく頑張ったよ本当に」

「と言う訳で、頑張ったイナリさんはご褒美のちゅーを所望しますぅ!」


「………………それは帰ったらね」


「────────ふえっ!?えっと、あのその………………………は、はい………よろしくお願いします………………!」



自分で言ったにも関わらず、俺の返答にぽかんと間を開けてから挙動不審に目をぐるぐるさせるイナリ。

顔がゆでダコのように真っ赤で、シューッと湯気まで出ているではないか。

そんな反応されるとこっちまで恥ずかしくなってくるんだけど……………。

急にしおらしくなったイナリに困っていると、タイミングが良いのか悪いのか、復活したドラゴンゾンビが起き上がって咆哮を上げた。



『グルアアアアアアッ!!』



「あっ、もう復活したんですか!?」

「無粋なやつだな、まったく」



しかも、その横には先程押し潰されたはずのワルーダがよろよろと立ち上がっている。

あれの下敷きになってまだ生きてるとか、いくら何でもしぶとすぎたろ…………。

こいつこそゾンビなんじゃ?



「くそっ、調子に乗りやがって…………!おいドラゴンゾンビ!さっさとあいつらを皆殺しにしろぉ!」



『グルアアアアアアッ!!』



ワルーダが水晶を掲げてそう命令すると、ドラゴンゾンビの目が怪しく輝き、洞窟中を震わせる咆哮と共に突っ込んできた。

低空飛行で素早く接近すると、胴体を反らせて右腕を大きく振りかぶる。


そして、その巨大な爪が振り下ろされる─────────────直前。



ドゴォォォォンッ!!!



という大きな音を立て、俺達が背を向けていた側の洞窟の壁が一部吹き飛んで瓦礫と化した。




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