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【本編完結済】最強ご主人様はスローライフを送りたい  作者: 卯月しろ
第三章 出会い イナリ編

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潜入




早朝。



まだ朝日が出たばかりのこの時間帯は森全体にうっすらと霧がかかっており、姿を隠した虫や小動物達が小さな鳴き声を上げている。

普段ならこんな時間に外に出る者は居ないのだが、そんな中、内陸に向けて静かに走る影が三つ。

言わずもがな俺とクロ、そしてイナリである。


気配を極限まで消し、すり抜けるように森を駆けるその様子はまさに疾風。

その気配の小ささは人に敏感に反応する小動物ですら、目の前に近づくまで気が付かないほどだ。



う〜む、イナリがここまでできる子だったなんて…………。

隠密が得意なクロはもちろん、長年ここで暮らしてきた経験故に森での行動はイナリにとってお手の物らしい。

気配の消し方が上手いし、なんなら動きは俺達よりスムーズなんじゃないか?


鬱蒼(うっそう)と茂る木々をまるで無いものかのように無視してどんどん突き進んで行ってる。

これは見る人によっては、木々をすり抜けてるようにさえ感じるのかもしれない。

気を抜いたらこっちが置いてかれそうだ。



「…………それにしても、びっくりしましたよぉ。部屋に入ったらまさか上半身裸で寝てるなんて………」

「いや、それに関しては本当にごめん…………昨日、色々あってさ……………」



イナリが小声で言ってるのは今日の朝の事だ。


(さかのぼ)ること数時間前、わざわざ起こしに来てくれたイナリがドアを開けると、なんとベットの上で上半身裸で寝る俺を目撃してしまった。

おまけに、両サイドに幸せそうな寝顔のノエルとアイリスを侍らせて、お腹の上にはクロが丸まってるときた。



イナリが思わず奇声を上げてしまったのは言うまでもない。



それによって起こされた俺は、朝っぱらから何やってんだ………と思いつつ体を起こし。

「はわわ………!」と顔を真っ赤にしながらチラチラ俺を見ているイナリを視界に(とら)え、全てを察した。


同じような展開をこの前やったばっかなんだから、いい加減に学習しろよ俺…………。

いや、言い訳をさせて欲しい。

昨日は満足したアイリスから解放された後、服を着る気力すらなくてそのままバタンキュー、って寝ちゃったんだよね…………。

かろうじでパンツは履いたけど。

気力も体力も全部アイリスに持っていかれてしまった。


が、それをイナリに素直に言うのは恥ずかしいので、なんかそれっぽい言い訳をして乗り切った。

イナリは憮然(ぶぜん)として納得してなさそうだったけど。



「ふへへ………別に謝らなくたって良いんですよぉ。と言うかむしろ、もっと見せて欲しいくらいですっ!先程は驚いてたせいであまりちゃんと見れてませんでしたからね。今度こそきっちり私の脳裏に焼き付けちゃいたいです!」

「…………笑い方キモイ」

「んまっ、なんてこと言うんですかクロさん!ご主人様、責任を取って今度下半身も見せてください!」

「いや、なんで?」



飛び火すぎる。

それただイナリが俺の下半身見たいだけだろ……………。



「てかなんでイナリはそんなに俺の裸見たがるのさ」

「え〜、好きな人の裸を見たいって思うの、普通じゃありませんか?……………そ、それに、(つがい)になったら必然的に"愛し合う"訳ですし…………今のうちに予習しときたいんです!」

「あれ、もしかして番になる事確定してる?」



いつの間に確定事項になったんだそれは…………。

前から言ってるけど、イナリを嫁に迎えるつもりは俺にはないからね?


さらっと当たり前の事のように言っていたが、完全なる捏造(ねつぞう)だ。

きっぱり断られるという絶望的なリアクションに、イナリが走りながら「そんなぁ!」、と涙目になる。

しかし、そんなイナリに意外な所から援護の声が上がった。



「仮に愛し合うとしても、クロより後にすべき」

「……………」

「…………あ、あの、クロさん?その言い方だと、私とご主人様が愛し合っても、番になっても良いと言ってるように聞こえるんですが…………」

「………………………………………………………ん」



無表情ながら明らかに嫌そうな顔で長い間を開け、しかし心底不本意そうに頷いた。

これには俺だけでなく、この話題の元凶(イナリ)ですら思わず唖然としてしまった。

あれだけ嫉妬してたクロがどういう訳かイナリの味方(?)をしている。


……………はっ!もしかしてお肉という名の賄賂(わいろ)を…………!?



「いやそんな物渡してませんからね!?どれだけ私って信用ないんですか!?」

「ごめんごめん、さすがに冗談だって。でもクロ、どうして急にイナリの味方を?」

「昨日の夜、主が寝たあと皆で話した。イナリを主の番にするかどうか」




全く知らんかった。





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