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【本編完結済】最強ご主人様はスローライフを送りたい  作者: 卯月しろ
第三章 出会い イナリ編

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侵入前夜





「あんた達の身に何が起きてるんだ?」

「……………何を言っているのか分からんな」



はいうそー。

こいつは何か知ってるらしい。

でも口を割る気もさらさら無いらしい。


やっぱり、この【呪縛】ってのに何か秘密がありそうだな…………。

呪いとかデバフをかける系の闇属性の魔法?

催眠ってのもありえるな。

妙に狂信的なのが多かったし。


だけど、こんなに大人数を催眠にかけるのって可能なのか?

仮にそれができたとしても、こいつだけ【呪縛】にかかってるのに正気だし…………。

それじゃ説明がつかないよなぁ。

う〜む、さっぱりわからん。


こいつはこいつでもう答える気は無いのかそっぽ向いちゃってるし。

まさかこいつにかかってる呪いって、黒幕のことを喋ったら爆散する呪いとかじゃあるまいな。

もしくはただ忠誠心が高いだけかもしれないが…………。



結局、何かしら裏がありそうなのは分かったけど、それ以外に目ぼしい情報は得られなかった。

キュッと靴底を滑らして(きびす)を返す。



「まぁ、明日直接会えば分かるか」

「……………お前は酒呑童子様の元に行くのか?」

「ん?ああ、そのつもりだよ」

「そうか。…………なら、()()()には気をつけろ。くれぐれも俺と同じようにはなるな」

「…………?」



どういう事?

あいつって………酒呑童子の事を指してるのか?

それとも黒幕?

再びいくつもの疑問がひょっこり顔を覗かせたので、振り返って青い鬼人に質問するが、もう一度この鬼人が俺に何か話す事はなかった。










"()()()に気をつけろ"、ねぇ…………。

今回の黒幕が酒呑童子じゃない事は明らかだし、自分に【呪縛】をかけた人物を指して言ったんだろうけど…………わからんっての!

なんでせめて名前を教えてくれないのかなぁ…………。

それじゃ用心のしようがないじゃん。


やっぱりあれか、"術者の事を話したら死ぬ"、的な【呪縛】でもかけられてるだろ。





………………なんかそんな【呪縛】に聞き覚えがある気が。

たしか"紅魔の魔王"グレンが同じような呪縛にかかってたような。

"あの方"について話したら跡形もなく滅びる、みたいな事言ってなかった?

またあれ関連の話なのか…………?

でもその呪縛にかかってたグレンは倒したし…………あ〜、もう余計に頭がこんがらがってきた。



一旦考えるのやめよう、どうせ明日行けば分かるだろうし。



ついに考えすぎで頭がオーバーヒートしてきたので、思考を打ち切って小屋を出る。

もう今日は明日に備えて寝よう…………。


今夜は村の人達が(こころよ)く貸してくれたコテージの一つで寝る予定だ。

ベット二つに浴槽付きの普通に住めるレベルのもの。

こんなの借りてよかったのだろうか…………。

少し気が引けてくるが、善意で貸してくれたのだから断るのもいかがなものかという訳で、素直に感謝して借りる事にした。



一度会議が開かれていた大きめの家の前まで戻り、そこから真横に曲がって村の端の方まで移動すると、明かりのついた例のコテージが見えてきた。



「ただいま〜」


「お、真白!おかえりなのだ!」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

「主、どこ行ってたの?」


「ん〜?ちょっと事情聴取にね」



扉を開けて中に入ると、すぐに皆が迎えてくれた。


ベットの上で仲良くたむろしていたノエル達の手元には、この前、試しに作ったトランプの試作品が。

どうやら暇を持て余したノエルに誘われ、皆でババ抜きやら七並べやらをして遊んでいたらしい。


なんか、修学旅行の夜って感じだね。

遠くまで出かけて、知らない布団の上でパジャマ姿でトランプしてる姿を見てると、いわゆる修学旅行の夜ってイメージが頭をよぎる。



「しゅうがくりょこう…………?ご主人様の生まれた世界での旅行の名称ですか?」

「あれ、こっちの世界では修学旅行ないの?たしか学校はあったはずだけど…………」

「まぁ、こっちの世界は地球ほど学問が重視されておらんからな。王都まで行けばデカい学校はあるが、そこら辺の町や村の学校なんて相当ちっちゃいのだ」



あ〜、なるほど。

たしかにそれは修学旅行って言葉が浸透してなくても納得かもしれない。

第一、こっちの世界は地球ほど簡単に遠くに行けないもんな…………。

移動手段もそうだが、何より道中に平気で魔物が出る。

護衛とかにかかる費用もあるだろうしね。



「う〜ん、なんて言ったら良いかな…………簡単に言うと、学校の友達と一緒に遠くに旅行に行く、みたいな」

「へぇ、そんな行事があるんですか!やっぱり、ご主人様の故郷は楽しそうな事がいっぱいありますね。一度行ってみたいです!」

「ん。クロも主の故郷行ってみたい。"ふじさん"登る。あと"えべれすと"も」



いや〜、どうだろうな。

仮に行けたとしてもう二百年近くたってるから、俺が知ってる世界とは全く違くなってる可能性大なんだよね。

もしかしたらよく映画で見るようなSFの世界になってるかもしれない。

そうしたらそこは俺の故郷と言えるのだろうか…………。



きっと見覚えのある物なんて、ほとんど残ってない気がする。



ていうかクロ、富士山とエベレスト登る気なんだ……………。

どっちも毎日、死者が出るレベルで危険な山なんだけど。

もはや修業じゃんそれ。

でもなんかクロなら、本当に私服のままエベレスト踏破してそうで怖い。

他の登山者が呆然とクロの姿を見てるのが易々と目に浮かぶ。


俺は苦笑いを浮かべながら羽織っていたロングコートを脱いで、木の椅子にそれをかけてから真横のベットにダイブする。


ギシギシと木の(きし)む音が響く。

今日は何気に早起きして水遊び、からの何時間にも渡る航海、鬼人の捕縛、作戦会議と盛り沢山だった。

疲労が溜まって、このまま布団に入ったらあっという間に寝てしまいそうだ。




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