村を作ることになりました(2)
という訳で、村づくりを手伝うことになった俺とノエルは、仲間と合流したシルバさん達と共に丘を離れ、近くの森林前に来ていた。
我が家を作った時と同じように、ここの木と手製のレンガを材料に家を作るそうだ。
ただ、うちに比べて伐採量は果てしなく多い。
そりゃ家を何件も立てるんだから、少しじゃ済まないだろう。
正直村なんて作ったことないから正確な量は分かんないけど、とりあえずなんかものすごく必要そうなのだけは分かる。
てか村の設計の仕方とか何もかも分からないので、そこら辺は全てシルバさん任せだ。
う〜む、一本一本がすごい立派だし、これを切ったあと村予定地まで運ぶのだいぶ大変そうだな…………。
「どのくらい必要なんですかね」
「ベースは石材にする予定だが…………最低でもここからここくらいの面積分は必要だろうな」
シルバさんが唸りながら手元の地図を指でなぞり、森林の一角を正方形にマークする。
ふむふむ、この一番手前の辺の中心が今いる所で、そっからだいたい横に…………なるほど。
了解、これくらいなら何とかなりそう。
「早速俺の出番ですね。シルバさん、ここは俺に任せといてください」
「どうした、何かするつもりなのか?」
「ええまぁ。あ、ノエルは皆の前に結界よろしく」
「む、やり過ぎないようにな?」
「おう、任せといて」
サムズアップして一歩前に出た俺は、ノエルが結界を発動させたのを確認して腰に付けていた鞘から漆黒の片手剣を抜く。
テッテレー、剣神さんから貰った剣〜!
これこそ前言っていた何年経ってもサビない、剣神さんから譲り受けた黒剣だ。
スキル〈鑑定〉で詳細を見たけど、名前も能力も"?"だったんだよね。
たしか〈鑑定〉って自分より圧倒的に格上の存在、または階級の高い武器を鑑定する事が出来ないって制約があったような…………。
あ、ちなみに〈スキル〉って言うのは、この世界の魔法と並ぶ二大ファンタジー要素の一つ。
魔力を消費する魔法に対して、一切魔力を使わないず詠唱も要らない。
心の中で唱えるだけで発動する特殊能力がスキルだ。
スキルは様々な系統に分かれていて、剣技スキルや魔法系スキル、隠密スキル、他にも戦闘用ではなく日常生活で使えるスキルなどもある。
魔法と同じで上位のスキルになればなるほど制約だったり、発動条件だったりが付いてくるらしい。
そしてここで俺が使うのは〈魔法剣〉のスキル。
込めた魔力の属性を剣にも付与するというスキルで、特にチート能力とかでもなく、むしろ結構初歩的なやつ。
もちろん火属性の魔力を込めれば火属性の、水属性の魔力を込めれば水属性の属性を得るので、魔法が苦手な剣士や冒険者なんかが、それを補うために使うのが主な使い道だ。
しかし、そんな初歩的なスキルも化け物スペックを持つ者が使用すると一気に化ける。
スキルを発動させると、右手の片手剣の刀身がエメラルドグリーンの輝きを纏う。
「このくらいかな…………」
水平に倒した剣を上下に動かしながら自分の太ももあたりに合わせてピタッと固定。
力強く右足を踏み込んで、思いっきり剣を横薙ぎにする。
キンッ………!と、美しいエメラルドグリーンの軌跡が一閃。
次の瞬間、溢れんばかりの魔力が結界を軋ませ、大きな音を立てて目の前の森林が倒壊していく。
土煙が晴れると、すでにそこには鬱蒼と茂っていた木々は跡形もなく、地図で示していた場所だけがバッサリと斬り倒されていた。
遠くに見えるのは、ちょうど地図で横線を引いた辺りだ。
…………ふぅ。
よしよし、だいたい思った場所まで斬れてるね。
成功してよかった。
もし失敗したら剣神さんにドヤされちゃうからなぁ………。
あの人、何気にこまめに下界を覗いてるらしいし。
剣神さん曰く、免許皆伝したんだからこれくらい頑張れ、とのこと。
このレベルの精密作業を"これくらい"と言えるのがすごい。
これ、見た目以上に繊細な魔力操作が必要だったりして意外と大変なんだよ?
強すぎても弱すぎてもダメだし、範囲を間違えると余分に斬っちゃう。
例えるなら、ちょっと大きめな針の穴に片手で糸を通す感じ。
ものすごく難しくはないものの、それなりに難易度は高い。
剣を鞘に戻して振り返ると、後ろで見ていたシルバさん達が唖然として固まっていた。
面白いくらいに皆同じ表情だ。
なぜかノエルは自慢げなドヤ顔でふんすしてたが。
「ちょっ…………と待ってくれ。今何をしたんだ?」
「何って、〈魔法剣〉のスキルで斬ったんですよ。さっき印を付けた範囲の木を」
「「「「はぁ!?」」」」
そう答えると、シルバさん達が一斉に驚愕の声を上げた。
開いた口が塞がらないとはまさにこの事。
言葉を失った皆さんはしばらくの間、放心状態で斬り倒された森林の方を見つめていた。
「〈魔法剣〉ってこんな威力の出るスキルだったっけ…………」
「んなわけないだろ、あれって初級スキルだぞ?」
「やべぇ、自分の技に自信無くなってきた…………」
ざわざわとそんな話し声が後ろの方から。
ノエルはますます機嫌が良くなって薄っぺらい胸を堂々と張る。
俺も顔には出さなかったが、もちろん内心では口元がむにむにしそうになるのを必死に我慢中だ。
「さて、さっさと運んじゃうのだ!」
ノエルが手前の五本をまとめて軽々と持ち上げて颯爽と村予定地の方へと走って行く。
こういうのを見ると、やっぱりノエルってすごいんだなぁって改めて思うよね。
だって魔力での強化とか無しに、素の肉体のスペックであれだよ?
まぁ俺も出来るけどさ。
続いて俺も二本の木を両脇に担ぎ、もう遥か向こうにいるノエルを追いかける。
「あ、シルバさん達には強化魔法かけときますけど、無理しないでくださいね?」
「………お、おう」
「そ、そうだ!二人にばかり任せてないで、俺達もやるぞ!」
「野郎ども、お待ちかねの力仕事だ!気張ってけよぉ!!」
「「「「「おぉぉーーーっ!!」」」」」
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最後に。
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